鳥が教えてくれた空 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.76
  • (8)
  • (13)
  • (9)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 117
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087477320

作品紹介・あらすじ

4歳で視力を失った著者は、「この日を境に私は生まれ変わることを余儀なくされた」という。見えなくなったことを理解できず、方向感覚のないまま走り回って生傷がたえなかった少女時代のトラウマ。成長にともなう人生への不安のなか、心のカギを開けたのは野鳥だった-。夜明け、空の高さ、大自然の景色を聞くことまで…。さえずりによって広がった感性の世界を綴るヒーリングエッセイ。第2回NHK学園「自分史文学賞」大賞受賞。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 4歳で一夜にして失明した著者。鳥のさえずりで朝何時ごろかの見当がつくようになり、音と触感を手掛かりに世界を把握していく。そして、英語を習い、ピアノを習い、留学もしたという行動力に驚かされます。また、優しい文章から親御さんや周囲の方々の支えも透けて見えます。

    元々通信社勤務の報道翻訳をされていたので、文章はプロのもの。すらすら読むことができます。

  • 晴眼者という言葉さえ知りませんでした。私は本当は何が見えているのでしょうか。ステレオの音響から二次元の空間が立体になり、温度、湿度、高度、地面の起伏、山までの距離、高さ、流れる水の速さ、滝の水量、そして風の渡りまでの風景が立ち上がる。その描写に息さえも止まる思いがしました。前向きな絶え間ない工夫、生きて行くことへの工夫、命を必死で紡ぐこと、そして地上に空に共に生きる命たちへの共感。彼女こそが晴眼者なのだと思えます。

  • 4歳とき手術により視力を失った作者。

    この人は本当に目が見えないのか…と疑いたくなる文章。
    まるで目が見えてるかのようなリアルな表現力。
    そして素晴らしい感性の持ち主。
    ここに辿り着くまでにかなり苦労したし努力もしたと思う。
    目が見えないというハンデを背負っているわけだし、決して楽な人生ではなかったはず。
    それなのに、作者が感じる世界はこんなにも美しい‼︎
    鳥の声を聞き、朝がきたことを知る。
    早起きをしたくなった。

  • 4歳で視力を失った著者、三宮麻由子さんのエッセイ。
    それまで見えていたのに、ある手術の後見えなくなってしまった少女が、見えなくなったことを理解できないであちこちぶつかったり、転んだりする様子や、草花の様子や目が見えていない人の文章とは思えないほど、描写がこまやかで鋭い。
    特に鳥に対する想いはことのほか強いのだろう。
    愛にあふれているのも読んでいてうれしい。

    P14もう少し大きくなると、私はたくさんのスズメが来ている日は天気がよく、近くであまり声がしない日は、曇りか雨だということも知った。
    P17もう一つスズメが教えてくれるのは、景色である。
    P17スズメはまた、光センサーとしても、さまざまなことを教えてくれる。

    P23スズメたちとともに、空がだんだん近づいてくる。この瞬間が、私はたまらなく好きである。
    P23鳥は「神様の箸休め」だと思う。
    P23最大の「覚醒」の一つに、空を感じたことがある。

    P29サンコチョウは、じつは天女たちが夜明けの一瞬だけ、小鳥に姿を変えて地上に遊びにきたものなのではないか、と私は思った。

    P36そのリーダーさんの剣幕は、まさに鳥となった人間の言葉だと思った。このときリーダーさんは、単に相手の立場に立つとか、鳥を哀れむといったなまやさしい気持ちでは語っていなかった。森を管理する必要上、伐採も時にはやむを得ないという現実をしっていても、あえて鳥の立場で話していた。~~~その剣幕は、みずから鳥となって、人間の近視眼的な乱開発や、刹那的な満足ばかりを迫って自然を破壊する傲慢さを厳しく戒める、毅然とした態度にあふれていたのである。そして私にとって、これが「鳥の視点」との最初の出会いとなった。

    P39野鳥の声が完成を開いたとすれば、季語との出会いは、それを裏づける哲学のような世界を聞いたと言えるだろう。~~自然の目、鳥の目になった句造りを夢見ている。

    P42だが、自然と相対するときには、そうした境遇の制限から解放される。鳥たちは杖を持った私を見ても「見えない」というカテゴリーに分けたりはしない。むしろ、「人間だ」と言って、逃げたり身に来たりする。見えないものたちの上にも日光は強く照るし、雨や雪も降り注ぐ、暑い日も寒い日も、盲人のためになくなることはないし、盲人が通るからといって、その日だけ山道に誘導用の点字ブロックが生えたりはしない。
    けれど渓流の音は誰にも心地よく響き、万緑の匂いは誰の肺をも満たす。自然はすべての人に平等に振舞う。だから自然に飛びこむとき、私はある意味で神の前に立ったような安ど感を得るのだ。
    すると不思議なことに、日常生活のなかでたえず感じなければならない、惨めな気持ちや悲しさ、見えればなんでもなくできるのに、といった苛立ちなどを超越し、見えないという呪縛から解放された精神を取り戻すことができるのである。
    その意味で、自然は私の存在を許してくれる大切な世界であり、人間を理性の罠から解き放つ貴重な力だと思う。昔の人たちが自然を神を崇めた理由も、こんなところにあるのかもしれない。

    P57こうして、景色としてではなく、命の集大成としての自然と正対すると、今度は植物のたてる小さな音の数々が耳に飛び込んできた。

    P103それにつけても、人語を介さない、別の次元のコミュニケーションの存在を強く意識せずにはいられない。

    P113こんなふうに声をかけてくれる人はいつも頼まれなくても体を動かし、自分の手で私に触れて助けてくれる心構えがあった。もちろん、それはよく言われるように外国人だからというところもあるかもしれない。これがフランス人になると「なんでも言ってください。たとえば・・・」と、助けの例題をたくさん並べてヒントをくれたりする。日本人は時として「言っていただければできる範囲のことをします」といった、一歩ひいた言葉になる。

    P132
    ところが自然体験の場合は、実際に足を動かして山野を放浪しなくても、一度感動を覚えておくと、それを思い出すだけで、ふたたび山野の伊吹を疑似体験することができる。

    P184つまり森の木々の命は、切り花や庭木とは、命のレベルが違うのである。


    阿川佐和子さんの人生を変えた一冊とのことで、読んでみた。
    http://nestle.jp/entertain/bookcafe/salon/salon30.php

    三宮麻由子の箸休め
    http://www006.upp.so-net.ne.jp/hashiyasume/index.htm

    ラヴェル/鏡 2.悲しい鳥たち
    https://www.youtube.com/watch?v=3-3QQhljoiQ

  • BSフジ「原宿ブックカフェ」のコーナー「ブックサロン」で登場。
    阿川佐和子さんの「人生を変えた一冊」。

    ―「人生は変わりません!(笑)でも、あるとき救わられた本を紹介します。」

    ―”私は何の役に立って生きているんだろう”というのがわからなかった時に、
    この本にで会った時に、『ああ、私も箸休めみたいに、ちっちゃくていい。立派な人間はいっぱいいるから、橋渡しのような役目でもいいし、”箸休め”みたいな人になろう』と思ったんですよね。(阿川佐和子さん)




    原宿ブックカフェ公式サイト
    http://www.bsfuji.tv/hjbookcafe/index.html
    http://nestle.jp/entertain/bookcafe/

  • 題名から軽やかで鮮やかなタッチのエッセイを想像していたが、文章がかなり重く仰々しい。好みの問題かもしれないが、かなり構えた感じ。

    でも逆に、自然を「感じ取る」ことができるようになる瞬間の描写はダイナミックで感動的。

    特に好きなのは「夜明け」を感じる所。

    午前四時前からサンコウチョウの歌が聞こえ始め、この微かな声をかき消すようにヒヨドリがけたたましく歌い始め、メジロの高鳴きが飛び出し、シジュウカラ、スズメ、コゲラ、ハクセキレイなど十数種、鳥の声がいっぺんに重なるように出現した。
    ・・・この日生まれて初めて「夜明け」を自分の感覚を味わった。人間が時計という媒体を通じて法則化した時の流れではない。誤差というものがない。分も秒もなく、円環的な時間がゆっくりと大地の自転によって引き出される。。。

  • 文章が美しい。
    作者の繊細な感性の一端に触れることができ、誰もが少女時代には持っていたような感性を呼び起こしてくれる。
    自然との関わりを描いた描写は感動的。

  • 盲目の人が書いた本。 逆に晴眼者のことを気遣うような表現があるのがオモシロい♪

  • 金曜にこれも古本屋で買った本。100円棚を端から見ていて、あ、この人は『Big Issue』の「耳すます」の特集に出てた人やと思い、図書館にあるやろうなと思ったけど、100円という値段もあって、一緒に買う。

    鳥と出会ったことで、著者の世界観には大きな変化があった。

    ▼…これまでにも私は、音楽の世界を見いだしたり、語学や文学を長期間学ぶなどしてさまざまな世界をかいま見てきた。しかし、そんなことで満足している場合ではなくなったのだ。音楽も本も言葉もすべて私のペースで動かせるもの、言い換えれば、それ自体は静止した対象物にすぎなかったのだ。だから、これらを学ぶことで精神は深まったが、自然のなかに組み込まれた生物としての私の生の実感という基本的な世界観が欠如していた。

    野鳥を知ったとき、私はそうした静止物でなく、この瞬間にも動き、移り変わっている自然界に飛び込んだのだった。自分の手につかめる「入ってくる」世界から、宇宙の大きなペースで流れる世界に「入っていく」。それは世界観を完全に覆す大事件となった。(p.38)

    著者は、鳥のさえずりに耳すますことで、空の高さを知り、日の明るさを知り、自然の景色もわかるようになった。4歳で視力を失い、それ以来、「どんなに頑張って進学や就職の夢を実現しても、心の奥深いところに「目が見えないという現実」が厳然としてあり、パンドラの箱を隠した「開かずの間」がずっと残っていた」(p.10)という著者。

    「その開かずの間を開くカギをくれたのが、野鳥たちだったのである」(p.10)という。

    この人はすでに何冊か本があるそうで、他の本もまた読みたいなーと思った。
    ・『目を閉じて心開いて』
    ・『そっと耳を澄ませば』
    ・『音をたずねて』
    ・『空が香る』
    ・『福耳落語』
    …他にもまだある。

  • 盲目の少女が、鳥との出会いの中で世界を感じ取っていく話。感覚を表現するのが上手く、それを読むのが楽しい。例えば、温泉に入った時に湯に触れる感覚。自分も目を閉じて試してみたくなる。

全17件中 1 - 10件を表示

鳥が教えてくれた空 (集英社文庫)のその他の作品

三宮麻由子の作品

鳥が教えてくれた空 (集英社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする