泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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レビュー : 475
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087477856

感想・レビュー・書評

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  • 江國さんのお話は殺伐としていておしゃれでドライだ。近いはずなのに遠く感じたり、二人でいるのに孤独だったり、世界中から二人だけ疎外されていたり。ほんのり温かいけどいびつだったり。ドラマのようにカッコいい。(決して真似は出来ないが…)縛られていない分、自由。自由は濃い責任と孤独を生み出す。

    泳ぐのに、安全でも適切でもありません
    りんご追分
    うしなう
    動物園
    犬小屋

    が好き。

  • 愛し過ぎると壊れてしまうのかもしれない。
    なんだか痛々しかった。

  • 生きてゆくということは、日常をうまく泳いでいくようなものですね。それが正しい方法かどうかは、誰にもわからないけれど…
    この本の題名の意味が、ずーっと気になっていて、やっと理解できたような気がします。

  • 色々な生活、人生、女性達で愛するということを通して描かれていました。
    愛にだけは躊躇(ためら)わない、躊躇わなかった10人の女性達。
    どの女性の気持ちも分かります。
    同じ女性からか、微妙な細かい描写なども物凄く心に伝わってきます。

    印象的な作品は、
    「うんとお腹を空かせてきてね」の中で
    あたしたちは身体全部を使って食事をする。
    同じ物を食べて同じ肉体を作り、それをたしかめるみたいに・・・
    これは自分では無意識だけれど、夫婦だったら本能的にもしかしたら
    しているんじゃないかと思ってしまいました。
    だからよく夫婦が段々似てくるというのが分かる気がします。
    お腹を空かせて沢山食事をしている男性の姿も私としては嫌いではないのもこの作品の中で共感したところかもしれないです。

    「うしなう」ではまさに私世代にどんぴしゃの作品でした。
    それぞれの主婦にそれぞれの過去があり、そして現在の家庭がある。
    過去に何があっても、現在に何かあってもそんなに踏みこめられない。
    でもその時に出会うた友達同士でなんとなく困っている人に元気づけたりしているところが羨ましい感じがしました。

    「動物園」はなんだか切なかったです。
    夫婦同士は何でもなかったのに、子供がいた為に・・・
    こうゆう男性も世の中にはいるのかなと思いました。
    そうなると女性も少し寂しいですが、子供はとても可哀想だなと。
    夫婦の形は色々あるけれど、やっぱり傍に居るのと居ないのでは違うと思うので。

    この本のタイトルでもあるように人生を泳ぐのには、安全でもなく適切ないけれど、それがこの本では多方面から書かれていて、それぞれの愛の行方についてそれを読者に想像させているような余韻で終わっているのが何とも心地良かったです。
    これが愛だ!という決め付けではなくて、こうゆう問い方の部分も必要だと思いました。
    私の愛は果たしてどれに当てはまるのだろうかとも考えてしまいました。

  • 江國香織さんの文章はとても読みやすく、短編集ということもありサクサク進めます。分かりやすい文体、あっさりとした物語なのに読後の気持ちがすっきりする感覚が癖になります。透明な水のように、見る角度を変えると見え方も変わるような、そんな作品です。著者の『号泣する準備はできていた』など、他短編集もぜひ読んでみてください。

  • 泳ぐのに、安全でも適切でもない水=人生の中で、愛にだけは瞬間をきらめかせる女たち。
    長編もいいけれど、十からなる短編集もとても良か った。「うんとお腹をすかせてきてね」の食べ物の描写が美味しそうでうっとり。 「動物園」の樹くんがカワイイ。マフラーの「ざくりと編まれた」感じ、ふっくらした頬や長いまつ毛の感じが愛おしく、無邪気なのに、世界観からか、イメージは少しほの暗く、挿絵画家の酒井駒子さんの描く子どものようだった。

  • とっても短い話なのにとても具体的な設定。
    それでもすっと入っていい余韻。

  • なんだろう、この気怠さは。
    「安全でも適切でもない人生の中で、愛にだけは躊躇わないーーあるいは躊躇わなかった女たち」の声が紡ぎ出す、少し哀しいモノローグ。結婚や家庭というものが「安全」で「適切」な関係だというのなら、ここに登場する男女はみな、そこから外れてどこかへ流されていくのか、はたまた溺れてしまうのか、わからない人ばかり。

    ぼんやりと、ちょっと山田詠美と同じ空気を感じるな、と思っていたら、「解説」が山田だった。
    「えっ⁉︎ 字、なのに……⁉︎」
    と山田が言うように、たしかに驚くほど五感を刺激されるのだ。
    「無機質な活字から五感のすべてを刺激して、くっきりとひとつの情景が浮かび上がるのである。まるで触れそうなくらいにくっきりと。匂いも嗅げそうにはっきりと。ぶれなどないかのように正確に。色だって、音だって、ちゃんとあるのだ。……字、なのに。」(解説より)

    いちばん印象的だったのは、「うんとお腹をすかせてきてね」。飲んで、食べて、セックスをする男と女。ただただ悦びを共にあじわう、甘く、美味しい、明日なき日々。鹿肉のグリル、オニオングラタンスープ、ワイン、エスプレッソ、ココナツクリームのケーキ、ビールに串揚げ…。食の描写がこんなにも官能的なのはいったいなぜだろう。ふと伊丹十三の「たんぽぽ」の役所広司と黒田福美を思い出してみたり。プルーストのマドレーヌ描写も、幼少期の思い出と結びついているシーンのはずなのに、やけにふっくらと芳しくて、ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」を思わずにはいられないほどプンプンと官能の香りがするものなぁ。食と色とはきってもきり離せないものなのかなぁ。
    「こんなふうにしてどこまでいかれるかしら」「死ぬまでこんなふうにして暮らせるかしら」「こんなふうに、食べることと寝ることだけをくり返して」そんな女の言葉を、男は「つまらないことを考えてないで、食べて」とふさぐ。(キスではなくて、クレソンで。)
    「あたしたちは身体全部を使って食事をする。おなじもので肉体をつくり、それをたしかめるみたいにときどきお互いの身体に触れる。あたしたちはますます動物になる。あたしたちのテーブルだけ深い森になる。森の中で、寝室でたてるみたいな声をこぼす。泣きそうになり、仕方なくみつめあって笑う。」

    他にも、「サマーブランケット」「うしなう」など、あまり性を感じさせないサラッとしたドライなお話の空気感も印象的。

  • こういう類の短編集は
    共感できるかどうか、がすべてな気がする。

    山田詠美のあとがきがうまいと思いました。まる。

  • 初の江國香織作品。

    女性が語り手の、男とのかかわりの物語10編。

    どの短編にもかならずセックスがでてくる。
    そして男女の間から徹底して子供が排されている。


    男女の愛のかかわりはセックス抜きには語れないという彼女の主張のように思える。
    そして男女の愛のかかわりは子供が介在すると輪郭がぼやけてしまうという彼女の主張のように思える。

    食べる、触る、肌で感じる、など、5感の描写がとてもうまい作家だと思った。
    5感の描写で成り立つセックスに関する箇所も、エネルギーに満ちているのに透明感があり、エロティックというより切なさが際立つ。

    10人の女性それぞれの男性との関係を濃縮して切り取って見せてくれたとおもったらいきなり途中で放り出されてしまったあとの、短編小説特有の余韻。主人公たちが妙齢の日本女性たちであり感情移入しやすいせいか、この余韻を持て余して疲れを感じてしまうほどだった。
    それだけ上手な作家さんなのだろう。

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著者プロフィール

江國 香織(えくに かおり)
1964年、東京生まれの小説家。1986年、児童文学雑誌『飛ぶ教室』に投稿した「桃子」が入選。2004年、『号泣する準備はできていた』 で、第130回直木賞を受賞。他、山本周五郎賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。代表作として、映画化もされた『きらきらひかる』や『冷静と情熱のあいだ』など。女性のみずみずしい感覚を描く作家として、多くの読者を魅了している。また、小説から絵本から童話、エッセイまで幅広く活躍中。翻訳も手がけている。2019年5月2日、2年ぶりの長編小説『彼女たちの場合は』を刊行。

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