泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087477856

感想・レビュー・書評

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  • 十作の短編が入っており、その全てが不思議な潔さを感じさせる。大人の女性達の何か諦念の先にある達観の境地と言うか、表現が難しいが、とにかく美しいものを見たという感覚だ。泳ぐのに安全でも適切でもないってことは、遊泳禁止ってこと?違う?でも、それって誰の判断で?そもそも安全だから泳いで良いですって言われないと泳がない。いや、泳げない。自分の人生なのに?他人の人生に責任を持たない外野は、この小説の主人公達に批判的な見方をするだろう。彼女達は決して刹那的な恋愛や性を愉しみ生きた訳ではない。自分の人生の水場に飛び込み、純粋な愛に生きただけである。

  • 色んな女性たちの色んな恋愛が描かれた短編集。
    まだ私にははやかったかな。もう少し、恋愛の深みを経験したことのある人のほうが刺さる作品だと思う。
    既婚男性と関係を持つ女性が多かった。その関係を否定も肯定も特にしない。ただただ現状として受け止め、欲のままに動く彼女たちはカッコよく見えもする。作品だから全体的にオシャレな雰囲気で素敵なんだけど、現実的に見たらただの不倫相手でしかない。

    5年後にもう一度読みたい作品。

  • 高校生の時に、読んだ一冊をまた読み返してみました。色々な女性の色々な恋愛模様。
    大人になって読むと、また違う一味。
    色々な生き方、恋愛があっていいと思いました。

  • 情熱的な恋の物語が人々に好まれるのは、それが珍しいものだから。ありふれていたら誰もわざわざ見ない。という言葉を最近目にしたことを思い出した。江國さんの物語はどこまでも非日常。好きです。

  • 短編の主人公の女性たちが、私にはとても動物的に感じた。本能のままに…というか。

    こんな生き方を素直な生き方というのか?私にはとても真似できそうにないし、したくない人たちだった。
    主人公誰一人にも共感出来なかったという真逆の感動短編集だった笑

  • 江國さんの描く小説の雰囲気が大好き。
    ひさびさに味わいたいなと思って短編集を手に取りました。
    やっぱりおしゃれ。
    江國さんが美しいものにたくさん触れられてきたんだなというのがよくわかります。
    江國さんの本と、江國さんの小説が好きだという人に囲まれて生きていたい。この本がすきな人と結婚したい。
    短編集なので江國さんの小説を読まれて肌に会ったと思ったら是非読んでほしいです。
    私は「うんとお腹をすかせてきてね」が特にすきでした。

  • 発売されてすぐ、ハードカバーを買ったのにもう一度読みたいと思い出し、本棚をいくらさがしてもなかったので、文庫で買いなおして、再読しました。(ハードカバーは、その後本棚のてっぺんで発見して悔しかった)
    短編が10作入っていますが、好きなシーンや文章に付箋を貼りながら読んでいたら、付箋が一番多かったのが、「うんとお腹をすかせてきてね」と「十日間の死」。何かこの二つに共通点はと考えてみたら主人公が若いこと。
    私は大人の恋愛話の不倫系がどうもあんまり得意ではないです。
    あまたいらっしゃる作家さんの中では江國さんのものは読みやすい部類に入いりますが。
    言ってることは、以前読んだ時よりわかりました。
    (18年も前だし)

    江國さんがあとがきで、「人生は勿論泳ぐのに安全でも、適切でもないわけですが、彼女たちが蜜のような一瞬をたしかに生きたということを、それは誰の人生にも起こらなかったということだということを、そのことの強烈さと、それからも続いていく生活の果てしなさと共に、小説のうしろにひそませることができていたら嬉しいです。(中略)瞬間の集積が時間であり、時間の集積が人生であるならば、私はやっぱり瞬間を信じたい。SAFFでもSUITABLEでもない人生で、長期展望にどんな意味があるでしょうか。私もまた、彼女たちの一人なのでした」とおっしゃっておられますが、こんな私でもできるものであれば、そうありたいものだと、強く願わずにはいられませんでした。

  • 生きてゆくということは、日常をうまく泳いでいくようなものですね。それが正しい方法かどうかは、誰にもわからないけれど…
    この本の題名の意味が、ずーっと気になっていて、やっと理解できたような気がします。

  • 江國香織さんの30代中頃の短編集。
    「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」と言う不思議なタイトルは、アメリカの田舎町の川べりで見た、遊泳禁止の看板『it’s not safe or suitable to swim.』から取ったものだと言う。
    表題作を含めた全編が、安全でも適切では無いけれど、それでも泳ぎたい川(人生)を泳いできた女性達の話し。思い通りに泳げているわけではないけれど、その泳ぎは伸びやかで、無理やり泳がされているような悲壮感はない。諦念が含まれていたとしても、自力で泳いできた道だ。人生を肯定できます。

  • 短編集。愛の形も生き方も様々。
    共感できる生き方でもそうでなくても、それぞれの感情はどこにでもありそうで、自分にも覚えがあるような気がしないでもない。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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