泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 5785
レビュー : 480
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087477856

感想・レビュー・書評

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  • 女性を主人公にした短編10作を収録しています。

    「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」は、93歳の祖母の病院に駆け付けた主人公と妹、母の物語。「うんとお腹をすかせてきてね」は、食べることと愛することに夢中になっているカップルを描きます。「サマーブランケット」は、一人の男性との不倫関係に結末が訪れた女性のもとに、若いカップルがやってくる話。「りんご追分」は、バーで働いている女性が、女に呼び出されて店にやってきた冴えない男に目を向ける話。「うしなう」は、ボーリング場にやってきた3人の女性たちの会話を書き留めたもの。「ジェーン」は、ニューヨークでジェーンという女性とひと夏を過ごした女性の回想記。「動物園」は、しまうまを見たいという息子とともに動物園を訪れた母親の物語。「犬小屋」は、しばしば兄嫁のもとを訪れる夫とその妻の物語。「十日間の死」は、フランスに留学している17歳の女の子と、偶然知り合ったマークという男性の短い交流を描きます。そして「愛しいひとが、もうすぐここにやってくる」は、帽子を作る仕事をしている女性の物語です。

    といったようにストーリーをまとめようとしても、ほとんどストーリーらしいストーリーはないのでほとんど意味はありません。いずれの作品も、著者らしい、どこか倦怠感を漂わせているようであり、人生の愉しみ方はそのような気だるい生活の中にしか存在しないと割り切っているような女性たちの姿が、透明感のある文章で綴られています。

    著者のとくに初期の作品が醸し出している空気は稀有なものだと理解しているのですが、個人的には感性のレヴェルで共感することができるような幸福な読書体験はあまり多くありません。とくに本書のような短編集の場合は、私自身の感性のアンテナに引っかかってくるようなエピソードがないまま終わりを迎えてしまうことも多く、つかもうとしてもつかめない、といった感想を抱いてしまうことがしばしばあります。

  • 短編集。中年の不倫ばかり。登場人物が全員同じに見える。

  • ○人生を過ごす意味、仲間といる意味、お酒を飲む意味。
    表題作「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」をはじめとする10個の短編集。

    ・「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」
    葉月が一緒に住んでいる男と一緒にいるとき、妹の薫子から、祖母が入院したとの連絡がある。母もそこにいて、実家に帰らなかった親子は笑い合う。

    そのあとふと思い出す、"It's not safe or suitable to swim."(p26)。
    タイトルの「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」という言葉の原文である。
    少し読んでもよく意味がつかめないが、筆者は"私たちみんなの人生に、立てておいてほしい看板ではないか。"(p27)と葉月に言わせている。
    母も、姉妹も、比較的自由奔放に生きてきたけれど、実質的には遊泳禁止の場所もあったのではないか、やってはいけないこともあったのではないか。主人公はそう回想しただろう。
    ただし後悔とかそういう次元ではない、前向きな回想。
    自分たちは自分たちで、悪かったわけではないけれど、そういう看板があってもよかったかもしれないし、なくてもよかったかもしれない。

    この短編集には、お酒が良く出てくる。筆者がお酒好きだということもあるだろう。
    表題作でも背徳感で飲む白ワインが出てくる。そういう感情があるからこそおいしそうに見える。みんな人生を楽しんでいる。

    表題作に加えて、男と女の関係を描いたり、その男が外人だったり。
    いろいろな短編が詰まった1冊。

  • 泳ぐのに、安全でも適切でもありません */うんとお腹をすかせてきてね **/サマーブランケット **/りんご追分 */うしなう/ジェーン/動物園 */犬小屋 **/十日間の死 **/愛しいひとが、もうすぐここにやってくる **

  • 再読
    わりと江國先生っぽい甘ったるさは控えめの、懐かしい感じの初期短編集っぽい空気だったんだな

  • 泳ぐのに、安全でも適切でもありません。
    私たちみんなの人生に、立てておいてほしい看板ではないか。

    結局のところ、私たちはみんな喪失の過程を生きているのだ。貪欲に得ては、次々にうしなう。

    大切なのは快適に暮らすことと、習慣を守ることだ。

  • いろいろな人生の一片だけを切り取った、短い物語。そしてその始まりも終わりも無い、途中から途中までの短すぎる物語なのにどっぷり浸かってしまう。書き手の巧妙な文章力によって、その光景がありのままに目に浮かび、その中に浸ることがこの小説の味だ。

    どこか刹那的で、さっぱりした女性主人公達は、打算的でも計画的でもなく、自分の人生をありのままに送っていて、素直な心を持っている。全員に共通してることは、違う形であれ彼女ら最大のテーマは男との関係とその位置。幸せの象徴の子供や家族についてはどちらかというと否定的(無)で、男性に対する期待感や存在感が大きく、特に父性的な愛情を求めているようにも見える。

    好きだった短編は「うんとお腹をすかせてきてね」「ジェーン」「犬小屋」と「愛しいひとが、もうすぐここにやってくる」。

  • それぞれ、恋愛の記憶を抱えた女性たちが主人公の短編集。
    物語として、感動的なラストがあるわけでもなく、基本的には「過去の出来事」を振り返るイメージなので、疾走感もない。
    個人的にはあんまりヒットしなかった。

  • 「うんとお腹をすかせてきてね」がとても気になった。食事のシーンでこんなに揺さぶられるとは。食べるという欲求と愛の取り合わせがグッときた。全部の話で感じたのが語られないことの存在、あと海外の短編を読んだ後に似た感覚。

  • 2006/06

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著者プロフィール

江國 香織(えくに かおり)
1964年、東京生まれの小説家。1986年、児童文学雑誌『飛ぶ教室』に投稿した「桃子」が入選。2004年、『号泣する準備はできていた』 で、第130回直木賞を受賞。他、山本周五郎賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。代表作として、映画化もされた『きらきらひかる』や『冷静と情熱のあいだ』など。女性のみずみずしい感覚を描く作家として、多くの読者を魅了している。また、小説から絵本から童話、エッセイまで幅広く活躍中。翻訳も手がけている。2019年5月2日、2年ぶりの長編小説『彼女たちの場合は』を刊行。

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