石の中の蜘蛛 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.03
  • (4)
  • (3)
  • (18)
  • (2)
  • (4)
本棚登録 : 78
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087477986

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • もし、時間に余裕があれば。

  • いやー、気持ち悪かった!(賞賛。
    ハサミ男(殊能 将之著)とか最後の娘(ペネロピー・エヴァンズ著)とかその辺系、と私は思いました。
    一応ハードボイルド+ファンタジーらしいのだけど、これはホラーですわ…。
    ホラーサスペンスでも可。
    とにかく音の視覚化表現と主人公の行動が気持ち悪かったです。ぞわぞわっとしました。

  • 交通事故をきっかけに聴覚に異常を来たした主人公、立花。引っ越したばかりの部屋に残された前住人の痕跡を手掛かりに、その女の行方を捜し始める。と書くとありきたりな巻き込まれ型素人探偵ものだが、この聴覚の描写がとにかく凄い。鋭敏な聴覚はいつしか音を視覚や触覚として認識し、彼が集める痕跡は女が残した生活音だ。しかもドアノブを回す強さやフローリングに残された歩幅や歩く強さの癖など、常人には理解出来ない(理屈は分かるが)世界になっていく。だが凄いのは、全く想像も出来ない世界である筈なのに、分からないけど分かると思えてしまう事だ。世界の全てのものには音があり、その全てが聞こえるとしたら、まして『視えて』しまうとしたら、それはもう地獄のようだろう。なのに立花は中央線に乗る。今自分も耳が詰まったりして不調なだけに、引っ張り込まれて具合悪くなりそうだった。立花は常にクールで、世界の音を理解し受け入れている。感情があまり描写されない為、美恵を連れて逃げるのだと思い込んでしまう辺りは少々唐突な気さえしたくらいだ。だが個人の極めてプライベートな音を異常な状況で聞き続けていれば、思い込みも激しくなるだろう。しかし当然ながら振られて怪我を負った上美恵は死に、立花には鋭敏すぎる聴覚と美恵の音だけが残される。耳は治らず得るものもなく、絶望的とも思えるラストだが、本人は閉じた世界で満足げだ。女が残した音と、『バークリー・スクエアのナイチンゲール』。突き放されたような読後感だが、美しい。

  • 現代の人は日頃、
    「音」を毎日のように、
    聞いている。
    しかし、その大半は、
    聴こえてはいないのだ。
    しかし、もしもそれを、
    全ての音を、
    聴こえてしまう体質に、
    なってしまったら、
    どうしますか。
    主人公は、
    その能力で、
    ある事件に、
    迫っていきます。

  • ハードボイルドとファンタジーの融合、らしい。そんな感じ……かなあ?
    ストーリー自体はそれほど複雑じゃないのだけれど、そこに絡められた「音」の世界が想像を絶する。特に自分の部屋の前の住人の痕跡を音で探るって……凄すぎ。ちょっと笑えないでもない。けど視覚化された「音」の世界は美しくて、聴覚版「オルファクトグラム」といった風情。

  • 「音」表現の極地。

  • 交通事故によって音に異常に敏感になってしまった立花。ストーリーは、立花が姿を見たことも声を聞いたことも無い、ある女性を探し出すというもの。しかしこの本で一番印象的なのは別の部分にある。音は溢れ、渦を巻く。そんな立花から見た世界の描写が大半を占める。

  • 浅暮三文の最高傑作と言って支障ないでしょう。「音」が浮かび上がらせる女の幻影。「彼女」をかたくなに追い求める主人公の姿には失われた何かを埋めようとする者の哀切が漂っています。幻想的なモチーフとハードボイルドの哀愁が見事に融合した傑作です。

  • 2006/8/19読了。 その男にはあたかも「音」がそこに存在するかのように見えるらしい。生活の場の音がその空間に残っているとしたら。。 考えてみれば、ありとあらゆる音や光がわかったら情報量が多すぎてとても生活していけないだろうな。。

  • 2005/04/03

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1959年兵庫県生まれ。関西大学卒業後、コピーライターを経て、98年『ダブ(エ)ストン街道』で第8回メフィスト賞を受賞しデビュー。2003年『石の中の蜘蛛』で第56回日本推理作家協会賞長編部門を受賞。

「2022年 『我が尻よ、高らかに謳え、愛の唄を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

浅暮三文の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×