スローグッドバイ (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087478167

作品紹介・あらすじ

「涙を流さなくちゃ、始まらないことだってあるんだよ」。恋人にひどく傷つけられ、泣けなくなった女の子。彼女に青年の心は届くのか(「泣かない」)。上手に別れるため最後にいちばんの思い出の場所へいく。そんな「さよならデート」に出かけたふたりが見つけた答え-(「スローグッドバイ」)など普通の人たちの少しだけ特別な恋を綴った10篇。出会いから別れまでの一瞬一瞬をやさしく描く傑作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 恋愛の短編集。タイトルのスローグッドバイは別れた元恋人とのさよならデート。復縁してハッピーエンドかなと勝手に思っていたが大はずれでした。

  • 石田衣良さんの作品はおしゃれだ。
    それが失恋の話であっても、現代にはびこる社会問題であっても時にはギャング間の抗争さえおしゃれに描かれる。
    読者はその軽快でおしゃれな文章とストーリー展開に引き込まれながら著者が投げかける命題について思考する。
    本作品で描かれる10の恋の物語、現代に生きる人々の悲喜交々がやはりおしゃれな文章と展開で描かれている。

    この作品は私にしては珍しく再読した作品。
    以前は何歳の頃に読んだものか覚えていないが、IWGPシリーズのまことの活躍に胸を躍らせていた頃かもしれない。
    とにかく若い頃には間違いないだろう。
    石田節の文章とストーリーに酔って堪能していたはず。

    ところが今60も半ばを過ぎて読む本作は70年代、80年代頃に流行っていたカラフルでポップなポスターを眺めるのに似ている気がした。
    どこか自分とは随分離れたところの話を聞いているだけのような感覚、実感があまり伴わない。
    表題作の「スローグッドバイ」に描かれているおしゃれな別れ方、当時のトレンディドラマを真似た若者の間ではもしかしたらあったかもしれないけれど、それは極一部のお金に余裕のあるお坊ちゃま、お嬢ちゃま達の間での事。

    齢を経て知るのは、人間の生活、恋でも仕事でも友情でも、そんなにおしゃれなことは起きない。
    実生活ではすべての事が泥臭く、格好悪く、必死にもがくようにして進んでいく、という事。

    好きな作家であってもその作品を読む読者の年齢と経験は作品の評価への大きなファクターかもしれない。

    本作品中で一番しっくり読めたのは「ローマンホリデイ」
    老人ホームで暮らす72歳の女性が21歳の孫娘の名を借りて掲示板で知り合った主人公の若い男性とメールのやり取りをする。
    彼女の頭の中には映画「ローマの休日」のグレゴリーペックとオードリーヘップバーンの恋物語と若いころに親しんだ古い銀座の街並みが今でも息づいている。
    メールのやり取りをする中で、自分は孫娘の年齢の女子になり「ローマの休日」の感想を語り合い、ローマの町を、銀座の街を自由に散策する。
    事実を知った主人公はそれでも彼女を受け入れメールのやり取りを続ける約束を取り付ける。
    そんなしゃれたストーリー。

    歳を取り「老人」と呼ばれる範疇に入っても、人は自分の中に若さを持っている。
    老人ホームのベッドに横たわっている今の自分を切り取って「老人」とみられるのは本意ではない。
    世の中の動きに関与することのなくなり世の中から忘れられた老人ではなく、生まれてこの方恋もして夢も持っていた途切れることのない歴史を持ち、それをいつでも振り返ることができる、いつでもその時の自分に戻れる「老人」という呼び名でくくら
    れるのではない「自分という人間」なのだ。
    過去のあの時の自分は今の自分そのものなのだから。思い出つまりは自分の歴史の中で活躍した自分は過去の誰かではなく今の自分なのだ。
    それを受け止めたり共感してくれる人や社会があったら体力は弱っていても「若き日から今までの歴史を持った自分」を自覚して生きることができるように思うのだが。

    ただ多くの歳老いた人々は自分の中にある歴史を振り返って今ではない自分に戻っても、それを表現することなく、だから当然受け止め共感してくれる人を持てず自分の中での振り返りだけになってしまい、「今だけ」を切り取られた老人になってしまうのではないだろうか。。


    そうやって「老人」となって埋もれてしまう事ににこの72歳の女性は現代の武器で抵抗した。
    こはれからの時代に先進的な役割を果たすべきITの一端が、歳を経た女性に力を与える素晴らしき副作用。
    主人公と彼女は時代を超越した恋人であることができた。
    情報社会の中でとかく途切れがちになるアナログな人間関係は少しだけデジタルに形を変えて息を吹き返すのかもしれない。

  • 男の人のやさしさが、じんわりと心に沁みる短編集でした。
    どれも都会的で、さわやかな印象で、表題作の「スローグッドバイ」は特に好きです。
    こんな素敵な別れ方もあるんだと思いました。
    お互い嫌いになったわけじゃなく、才能を信じて応援してくれる、こんな前進のしかたもあるのですね。


  • 先日の飲み会(合コン)でとても話のうまいうてうての男に会いました。

    朝までカラオケ行って、帰りの始発電車で二人になったので、
    「なんでそんなに話がうまいのか?」聞いたところ、
    手帳と思っていた革張りのなにかが分厚い本だということが分かった。
    年間で約100冊は読んでいるらしい。

    そういわれてみると、何事にも詳しかったり、話が面白かったり、
    物事の理解がはやかったりするやつは、みんな読書をしている。

    ということで、ミーハーなので、僕も読書を始めようと思う。
    それも今年の抱負とする。今年っていうか今年からの。

    「スローグッドバイ 石田衣良」
    2006年の9月頃に読んだ。
    どこかかけ離れているが、どこか現実的で、恋愛がしたくなった。

  • 普通の人たちの恋愛がテーマになっている10篇のお話です。どこにでもいそうな2人の、出会いや別れが描かれています。山あり谷ありではないですが、さらっと読めるお話ばかりです。
    『ローマンホリデイ』というお話がワタシは好きです。

  • どの短編も割とセックスばかりで、んー。まぁ恋人同士はみんなするからわざわざ避けるのも変なんだけど、んー。

    スローグッドバイはIndigoの忘れて花束のPVを思い出した。お互い思いあいながらの別れは、別れが完全に不幸なものとして捉えられることがないから好き。

    ローマンホリデイとスローグッドバイは星4!
    この人の作品は服とか家具とかの描写が細かくて、とても情景が思い浮かべやすい反面、名前を知らないものが出てきた時に一気に話に入り込めなくなる感じがした。

    • moboyokohamaさん
      ローマンホリデー、私もこの10編の中で1番良かったと感じました。
      ローマンホリデー、私もこの10編の中で1番良かったと感じました。
      2020/08/29
  • かなり好き。みんなそれぞれにそれぞれの恋愛をしてるんだなぁと思う。自分の恋が特別で、他の人のとは違う、と思っていたけれど、みんなそれぞれにちょっとずつ、他人から見たら不思議に思えるような恋愛をしてるんだよね、きっと。

  • 確かあたしの石田衣良さんデビュー本!結構切ない短編集だけどすき。あたしの出身大学が舞台なんだろーなぁというお話もあり。

  • 色んな人の恋の話。
    最後のさよならデートは悲しいけどなんかいいなと思った。

  • 心にグッサリ突き刺さってくる話もあれば、正直どうでもよい話もあり。分量は後者の方が少し多いか。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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