ルール (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
4.00
  • (33)
  • (17)
  • (25)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 168
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087478372

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  太平洋戦争末期、フィリピン・ルソン島を舞台にマラリア、滋養不足、そして飢餓に直面した一舞台の過酷すぎる行進を描いた戦争小説。

     戦争小説となると今一番に話題に挙がるのは『永遠の0』だと思います。永遠の0もとても完成度が高くいい小説でしたが、それを読んで感動した人にこんな戦争小説もあるんだよ、ということを教えてあげたくなる小説です。

     というのも、この小説で出てくる兵士たちというのは、マラリアを患いつつも満足な薬が与えられないどころか、カナブンや自分の身体にまとわりつくヒルですら食べてなんとか飢えをしのいでいるのです。

     そして彼らの絶望はそれだけにとどまりません。彼らがフィリピンで飢えに苦しんでいるころには、既に日本は沖縄戦もほとんど終わった後。すでに勝ち目がないと分かりきった戦争のために彼らは地獄で飢え続けなければならないのです。そしてなによりやり切れないのが兵士たち自身がそのことをすでに知っていることです。

     日本を守るため、という大義も失われ、せめて敵と戦って死にたい、と思いつつも実際には飢えと病死、そして日本兵同士で殺し合う事態にもおかれます。その理由もあまりにも悲惨で、兵士たちは肉体的にも精神的にも一つの臨界点を迎えます。

     その臨界点の先で生まれたルールとは何なのか。人が人でなくなってしまう戦争で、それでも人であり続けようとした兵士たちの姿というものがこの小説には描かれていると思います。それこそが永遠の0を読んだ人にこういう戦争小説もあるんだよ、と教えたくなった理由です。

     良くも悪くもドラマチックに描かれがちな戦争の中での兵士と死の姿ですが、その姿には栄光も名誉もないのだ、ということを再認識させられた本でした。

  • たった70年前の話とは思えない。
    想像を絶する悲しい物語。
    薄めの文庫本だが読み応えあり。
    その悲惨さや哀しみは深い。

  • まさに一息で読ませる迫力。ドライな描写と、重いテーマがマッチ。新しいお気に入り作家を見つけた。

    希望が丘時代に通勤電車の中で覗き見して「何の小説だろう」と何年も心の片隅にあったものを見つけた。因縁の邂逅。

  • P314
    太平洋戦争末期、フィリピンにて小隊になった陸軍が餓えに耐え意味もなく行軍する物語。

  • 言葉にできない

  • 戦時中の人肉食については大岡昇平の「野火」(創元社)が衝撃的でしたが、本書も第二次世界大戦中、フィリピンにおける日本兵による狂人的なカニバリズムの世界が描かれています。

    戦争中の南方戦線における飢餓の極限状況においては、人としての理性や道徳心は隠れてしまい、自ら生きるために人を食うことへの抵抗がなくなるという状態は、ぼくの想像を超えています。

    しかし注目すべき点は、本書の作者は完全なる戦後生まれでぼくと9歳しか違わないということです。

    戦争中の飢餓が徐々に極限的に追い込まれていく人の心理状態を描く想像力は凄いのですが、体験したこともないし想像もつかない世界をリアルだと感じさせる筆力には圧倒されました。

  • 太平洋戦争末期にルソン島の飢えた日本兵達が縛られたルールとは…

    人が踏み外してはいけないルール。生か死かという選択に迫られた時、ルールを守ることが出来るのだろうか。余りにも悲惨な描写と次第に自分達が課したルールを破らざるを得なくなっていく過程に身震いした。

    現代作家の描いた『ひかりごけ』ともいうべき人間の禁忌に迫った傑作。

  • 博多弁の飄々とした姫山が鳴神と八木沢を助けるためにした決断に心が痛くなった。
    異国の地で人知れず亡くなっていった人達の多さに悲しくなった。

  • 極限状態で与えられたルールとは?
    それに対して、彼らはどう対処したのか?

    むしろルールそのものよりも、ルールを破らざるを得なかったその理由をあえて黙した兵士と、それを察して命がけで「言わない」名誉を守った戦友。

    正義が軽々しく口に上る昨今、自分で決断し、黙してその責任を引き受ける覚悟はどこにいったのか?

  • よく戦場の兵士を非難する反戦歌がありますが、
    彼らがどんな思いで国を守り、どんな地獄の中で戦い続けてきたのか
    いまいち世間に理解されていないように思います。

    「とりあえずこれを読め!」
    と本書をつきつけたい気持ちになりますね。

全30件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

古処誠二(こどころ せいじ)
1970年、福岡県生まれ。2000年4月『UNKNOWN』でメフィスト賞でデビュー。資料精査の果てに、従来の戦記文学を超越した領域を切り開き続ける。『線』をはじめとする一連の執筆活動に対し、第3回池田晶子記念わたくし、つまりNobody賞を受賞。『いくさの底』で第71回毎日出版文化賞受賞。著書に『ルール』『接近』『七月七日』『遮断』『敵影』『メフェナーボウンのつどう道』『ふたつの枷』『ニンジアンエ』など。

古処誠二の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

ルール (集英社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×