ねじの回転 下 FEBRUARY MOMENT (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.55
  • (164)
  • (219)
  • (460)
  • (45)
  • (5)
本棚登録 : 2351
感想 : 178
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087478907

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 10年ぶりくらいの再読。読んでいくうちに、そうだった!これこれ!と思い起こされ、あぁやっぱりなんて面白い作品なんだ!と最後までノンストップでドキドキワクワクさせられた。最高の一冊。

    何のための遡行プロジェクトなのか判明する時の鳥肌といったらないし、これまで割といい子だった石原がまさかの行動により不一致を起こした瞬間もジトりとした恐怖が沸く。
    そして懐中連絡機を持ったマツモトの口調や喋り方、こんなにゾクゾクするものはない。置かれた環境が人格を作るのだとまざまざと感じられる。

    何といっても目を離せないのは栗原中尉。彼の冴え渡る勘と研ぎ澄まされたカリスマ性には心を奪われてしまう。必死にもがいて巧みに誘導してきた彼の、最後の不一致での叫びに胸を締め付けられないものはいまい。


    こんなに面白い物語をこれから初読できる人たちが羨ましくてたまらない。

  • 下巻は始めからフルスロットル。fragment5はジョンが望んだ未来か…「よその国で戦争するということをアメリカはもっと思い知っておく必要がある」為に、、
    「二・二六事件」で岡田総理や鈴木侍従長が亡くなり、陸軍と海軍が戦闘したり、陸軍同士で戦闘したり、石原莞爾が東条英機を射殺したり……IFが凄すぎる。。
    上巻からわりとボサっとしているマツモトがかなりの重要人物でした。特別な4台目を持って外にいるときのマツモトのキャラが変わって口調がそれまでと違うところ、命のやり取りという極限状態での人の変なテンションという感じで腑に落ちます。実際にその場にいないと感じられないことはあるのでその後のマツモトの行動も納得。幼少期のマツモトのとこに行ったのはマツモトなんだろうけど、あれは再生プロジェクトが1回目ではないことの伏線だったのか。
    “正しい「二・二六事件」”は確定しましたが苦い読後感です。ラストの出会いが良い方向へ繋がりますように。読み応えある作品でした。


    襲撃された教育総監渡辺錠太郎って、渡辺和子さんのお父さんですよね…「置かれた場所で咲きなさい」のさ。。

  • 最後は
    微笑ましい反面
    ゾッと寒気がした。

  • 面白かった。
    鉄棒の練習を助けた人、車の暴走などなど最後で何故起きたのか分かる。過去を変える大変さもコミカルに描かれて重い空気も軽くみえる。
    この作者と相性はすごくいいのでもっと作品を読んでいきたい。

  • ひねったアイデアと、その世界観を見事に描き切っている。
    細かい説明を上手く回避するテクニック。
    当時の日本のリアリティ。なかなか書けるものではない。
    ウイルスの蔓延など、今の状況とシンクロしすぎて怖かった。
    IF 今の世界も確定の最中だとすると…。

  • リオデジャネイロ五輪、その閉会式のスクリーンを席巻した日本発のキャラクター達。日本人が胸を張った瞬間。その中央にいたのがドラえもん。ある調査では日本人の認知度97%とされる日本人の共通認識。
    もし、仕事で大失敗をした時、あの時、あの瞬間にこうしていたら、あれを見過ごさなかったら、人は誰でもそんな経験はあると思います。そんな時にもう一度あの時間に戻れたら、これもよく思うことです。でも思えばそんな発想がすぐできるのは、ドラえもんを知っているから、タイムマシンを知っているからなのかもしれません。でも同じ日本人でもドラえもん以前の時代の人だったらどうでしょうか。しかもあの時間に戻っても同じことを忠実にやり直さなければならないという条件がつけられてしまったとしたら…。

    『俺は一度死んだはずだった。もしかして、これは罰なのだろうか。永遠に同じ時間の中、維新をやり遂げることができずに悶々と朝もやの中を歩き回るという罰。』と、ふと思う安藤大尉。そして、その時間を管理する側にいるアルベルト。『天国へ行くのか、地獄へ行くのかは分からないが、好奇心という最強の武器の前にタブーなんかない。地獄すらも、我々にとっては新しい地平なのかもしれないよ。 』、過ぎた時間をやり直す俳優とその演技がシナリオ通りかを厳格に管理する監督。でもやり直し、やり直しを繰り返す中で本当の歴史とはなんなのだろうかという疑問が浮かび上がってくるのは必然とも言えます。

    思えば歴史とは、後世の時代の人がその時、その瞬間に起こったこと、起こっていたことを結果論で捉えて、誰が正しいかったのか、誰が間違っていたのかを評論家のように判断します。この二・二六事件なども、その後の第二次世界大戦、そしてその後に続くこの国の歴史を総合的に判断して語られます。でもあの時代に生き、悩み、踠き苦しんだ人たちも、その時の自分たちの前にあるものと真剣に対峙し、そして次に来る歴史を思い最善と思える判断をし、行動していったのだと思います。そういう意味では後世の人間の過去の振り返りは実に冷めていて冷たいものだとも言えます。ただし、その我々も後世から判断される身。一生懸命考えていても、行動していても果たして後世どう判断されるかなんて分かりはしません。
    何が正しいのか、何が正義なのか、確かに歴史に我々が学ぶ点は数多だと思いました。

    下巻は上巻よりページ数が少ないこともあって、最初から物語は怒涛の展開を見せます。上巻のどこか緩んだ雰囲気は全く消え去り、とてもシリアスな展開。そこに恩田さんが埋め込む伏線の数々。

    時間遡行を題材にした作品に期待されるあの展開、この展開もきちんと織り込まれ、作品は一段上の次元で結末を迎えます。恩田さんらしくない丁寧な結末、伏線がぞくぞくするほどに回収されていく展開。そして、これで終わりと思われたそのさらに後まで、最後のページまで魅せてくれる えええっ、そうだったの?というSFの結末。

    恩田さんが描くSFの世界。過去の話なのに未来の話のようでもある。我々に続くこの国のことなのにどこか他の国のことのようでもある。

    少し歴史に知識が増えるとともに、とても面白い世界観を見ることのできた作品でした。

  • ニ・ニ六事件なんて、ほとんど実情も知らないので、この作品を手にするまで時間がかかってしまった。恩田陸ワールドによって良質なるSF作品になっていた。素晴らしかった、そして哀しかった。今更ながらニ・ニ六を勉強しようかな。

  • 個人的に時間を巡る物語が大好き。
    本作はアプローチも良い

  • 第二次世界大戦の頃の話なので、軍隊とか軍人が沢山出てきて難しいと言うのが読み始めの印象。
    やけどすぐにストーリーに入り込めて、普通の小説として面白かった!
    3回読み直しました!

  • 恩田作品はその作品世界に入り込むと一気に引き込まれてしまう。今回もぐいぐいと引き込まれ、先が気になって一気に読んでしまいました。終盤にかけての伏線回収はとても気持ちよかったです。二・二六事件という実際に起こった事件を題材にしていますが、歴史ものやSFが苦手という方も楽しめるのではないでしょうか。あらすじを見て著者の「ロミオとロミオは永遠に」と似た空気を感じて手に取ったのですが大正解。大満足の作品でした。(図書館)

著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

恩田陸の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×