無伴奏 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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レビュー : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087482126

作品紹介・あらすじ

学園紛争、デモ、フォーク反戦集会。1960年代、杜の都・仙台。荘厳なバロック音楽の流れる喫茶店で出会い、恋に落ちた野間響子・17歳と堂本渉・21歳。多感で不良っぽい女子高生と男からも女からも愛されるような不思議な雰囲気の大学生の危険で美しい恋。激しい恋をひっそりと見守る渉の特別な友人、関裕之介。三人の微妙な関係が引き起こす忌まわしい事件はやがて20年後の愛も引き裂いていく。

感想・レビュー・書評

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  • 小説自体は25年くらい前のもので、舞台は1960年代後半の仙台。学園紛争やデモなどが激しかった時代の、ひとつの恋とミステリー。
    高校生の響子と大学生の渉。そして渉の親友の祐之介と恋人のエマ。四人の想いが交錯して、ある事件が起きる。

    小池真理子さんの小説を読むのは思えば初めてで、どうして今まで手に取らなかったのか自分でも不思議。
    全編通して美しい。人間の醜さが表れる場面もあるのに、なぜか穢れを感じない。始めに事件を予感させる描写があり進んでいくせいもあるのか、常に死の匂いが漂っていて、どこか物悲しい。

    勝ち気な高校生・響子と暗い過去を背負った大学生・渉の恋と一時の出来事を、二十数年後の響子が振り返る形で描かれていて、結果を知ったあとに過去について語る形式だから悲運を予感させる言葉がそこかしこに散りばめられてあるのに、それが何であるのか全く予想がつかなかった。そしてその事件は、個人的には想像もしなかったものだった。
    背徳的、というのか。
    最後の三分の一はとくに、先が気になって一気に読んだ。

    映像化、向いてるかもしれない。
    映画を観るつもりはあまりなかったけど、ちょっと気になり始めている。

    ミステリの感想は難しいからそこそこに。笑
    また読みたい作家さんが増えちゃったなぁ…と、嬉しい悲鳴。
    無伴奏というタイトルなのに、しっとりしてて哀しい曲がバックでずっと流れているような物語。「悲愴」を流しながら読みたい。

  • 小池真理子さんの作品を読むのは、「愛するということ」「望みは何と訊かれたら」「恋」に続いて4作目。
    ああ、これも面白い。
    またもアノ時代なのです(というかこれは「恋」の前に書かれた作品で、「恋」につながっていく作品ということなのですね)。
    60年代後半。デモ、学生運動、ストーンズ、バッハ、ビージーズ、煙草、コーヒー、喫茶店。音楽は他にも色々。ラフマニノフとかも。
    チャイコフスキーも出てきます。チャイコフスキーは男色で「悲愴」はその悲しみを込めて作られたのだとか。
    「無伴奏」という喫茶店は本当に仙台にあったクラシック喫茶だそう。
    阿佐ヶ谷の「ヴィオロン」を思い出してしまった。筆談するところとか。
    小川洋子さんは「メロディアスライブラリー」で、「カノン」と書いた文字が滲んだところが、この先の展開を暗示させるとおっしゃっていました。

    舞台は仙台。主人公の野間響子は、小池さん自身あとがきで書いているように、小池さん自身がモデルです。

    渉と響子、裕之介とエマ。
    渉を愛し始めた響子。しかし渉には大きな秘密があった……
    「恋」で兄と妹という禁断の関係が描かれていましたが、この作品では男同士の愛が描かれています(といってもそれほど詳細に愛し合う様子が描かれるわけではない)。

    この先に何かが起こるぞ、何かあるぞ、と思わせる部分が、もっとも読み応えのある小説。滲んだ文字といい、不吉な予兆?が随所にちりばめられているのですね。

    いざ、隠されていた事実が明らかになってからは、ああやっぱり…と思わされます。読めました。この関係は。

    こんなに壮絶な経験を経ながら、普通に結婚して日常を営んでいる主人公……というのは「望みは何と…」もそうだし、「恋」もそうだなあ。

    小池文学はホント読み始めると止まらない。

  • 響子の心から渉やエマや無伴奏で過ごした若かった日々は決して一生消えないだろう。しかし、20年経った後、無伴奏もなくなり町も変わり、祐之助も勢津子も新しい人生を歩み始めている・・・。そんな中、響子は一人十字架を心に背負いつつ生きていくのだろう。衝撃的なお話。「恋」とはまた違う、心を揺さぶられるものがある作品。(08年4月20−21日)

  • とても好きで、何度も読んでいるのに、いつも読み始めると呼吸が浅くなってしまう。あのシーンにたどり着くと、胸が締め付けられる。そして渉の手紙で泣いてしまう。
    この時代には生まれていないし、知らないのに、とても鮮やかに情景が見えるのは、やっぱり真理子さんの書く文書のが繊細だからだと思う。
    ここ数年の作品は好きになれないけれど、「恋」三部作は大好きです。

  • こんなにも胸が苦しくなる小説は久しぶりに読んだ。
    映画化され、そのCMでキャストと内容に興味を持ち、まずは原作と思って手に取った初めての小池真理子。
    一つひとつの文章が美しく、心理描写が丁寧で読んでいるとするっと響子に入り込める感覚が気持ちよかった。
    だからこそ、あの衝撃を響子と同じように感じることが出来たのだと思う。
    何となく予感はしていたが、あのようにまざまざと見せつけられるとは。響子の悪魔がここまで影響を与えるとは。
    これはただただ単純に愛の物語だと思う。混沌に溢れた世間で、2組の20歳そこそこのカップルが真剣に愛し合い、憎しみ合い、考えた物語だ。だから、この結末はあまりにも苦しく、美しい。
    自分はここまで、ひとりの人のことを将来愛せるのだろうか。

  • 私は、「心に重石をのせるような作品は必ず作者の経験がたっぷり含まれている」、と考えています。今回もそうでした。60年代なんて、わたしの親世代すら生まれていないような時代です。でも、それが目の前で息をしているかのように広がってきました。作者がその街で本当に息をしていたから、灰色の空を見ていたから、わたしもその街で息をしているかのように感じることができるのです。なんだか頬の横を仙台の風が通り過ぎていったみたいでした。

  • 【状態】
    展示中

    【内容紹介】
    学園紛争、デモ、フォーク反戦集会。1960年代、杜の都・仙台。荘厳なバロック音楽の流れる喫茶店で出会い、恋に落ちた野間響子・17歳と堂本渉・21歳。多感で不良っぽい女子高生と男からも女からも愛されるような不思議な雰囲気の大学生の危険で美しい恋。激しい恋をひっそりと見守る渉の特別な友人、関裕之介。三人の微妙な関係が引き起こす忌まわしい事件はやがて20年後の愛も引き裂いていく。

    【キーワード】
    文庫・恋愛・映画化

    【映像化情報】
    2016年3月26日映画化
    出演:成海璃子・池松壮亮・斎藤工 他


    ++1

  • 映画化されると知り手に取った一冊。
    久しぶりの小池真理子さん。

    体験していない時代だけども、その焦燥的な時代背景や、登場人物たちそれぞれの想い、ファッション、煙草の煙や、レコードの音までも匂いたつような雰囲気にどっぷりと浸れました。

    いつの時代でも変わらないであろう恋愛での苦しみや妬み嫉妬、恋焦がれ翳りある愛もただただ切なく美しく感じました。
    映像化されるのが楽しみ。

  • 短編集がすごくよかったから、期待し過ぎてたのかも知れないけど、結果がこうなるのが途中で見えてしまう。そうだろうと思ったよ〜、やっぱりそうだったかーと(´・_・`)こういう時代に青春だったひとたちには懐かしいかも。

  • 渉たちの関係性については読み進めていくうちに、なんとなく想像がついていた。
    それでも諦めきれない気持ち、独り占めしたいと切実な想いは共感できた。

  • 切ない恋愛模様が描かれた作品。登場人物が皆魅力的で、頭の中で実写版の映像を作りたくなる。主人公は若いけれど、大人が読んだらより深く読めると思う。

  • 主人公の響子は青春時代のことが忘れられず、思い出の地・仙台を訪れ回想します。
    高校三年生だった響子は、喫茶店で大学三年生の渉と出会い恋人同士になります。しかし、渉は自分のことを心底愛してはくれない様子。その原因はいったい何なのか…。
    真相は多少びっくりしましたが、結局金持ちの道楽息子が好き勝手やって取り返しのつかないことになったお話なので、あまり共感出来ませんでした。

  • 何年か前の「CREA」で小出恵介が名作3冊の中のひとつとしてこの作品を取り上げててびっくりしました。女性受けしかしないだろうなーって思ってたので。
    その感想の中で、この作品からは煙とかの匂いが立ちこめてるって書いてあって、へーって思いました。正直あたしは最初から最後まで響子視点でしか読んだことなかったから、響子が感じることが全てで、周りの人や物や空気について考えたことも感じたこともなかったんです。
    煙草や闘争の煙。確かに彼らと過ごした時間が20年経っても響子の中で燻っている。
    渉が響子のことを好きだったのは嘘じゃないと思うんです。響子に対して好きだという感情をもったことと、本能が欲したものが別だっただけ。
    渉は祐之介の子供が欲しいと思ったエマと一緒だと思う。
    でもエマと響子が被害者であるとは思いません。特に響子は全てを知った上で渉を受け入れていたのだし。
    エマは、ただ可哀想な人だと思いました。最期の一瞬でもいいから愛した人の闇が見えたら良い。エマもまた響子のようにその闇を受け入れてくれると思うのです。
    その時どういう会話をしたのかは描かれてませんが、もし何も知らないままだとしたら、やはり可哀想過ぎると思うので。
    セシルカットが似合うなんて相当美人だよなぁ。一番素直で可愛くて可哀想だったエマ。響子よりむしろ彼女の方が作者の愛情を感じる気がする。

  • 恋3部作の1作目。「恋」「欲望」と既読で、第一作が最後になってしまった。3部作の最初にふさわしい、作品。仙台の無伴奏に行ってみたくなる。今はないらしいが・・

  • なんとなく雰囲気が「恋」に似ているような気がするなぁ。

    渉と祐之介の関係がすき。

  • 一生、という二文字が浮かぶ作品。
    一生誰にも打ち明けられない過去、一生悔やみ続ける自分の選択、一生忘れられない記憶、一生残る心の傷、一生、一生……
    清らかで醜悪な悲劇。誰もが悪党で、誰も悪くない。

  • 少しアンニュイながらも不器用な女性を主人公にする「恋」と同様の世界。

  • 小池真理子
    集英社 (1994/9)
    (集英社文庫)
     新潮社 (2005/03)

    小川洋子さんの「みんなの図書室」で紹介されていました
    「予感小説」と書かれています

    ちょっと私より若い世代
    あの時代、学園紛争の真っただ中の様子がリアルによみがえります
    世間の空気とか流行とか

    若い時のこういう恋愛は う~ん つらすぎます

    音楽とかなしく重なっていました

    ≪ レコードの 調べと重ね むごい恋 ≫

  • 小池真理子作品、初体験。

    ノスタルジックなのに感傷的でなく、悲劇なのに重すぎない読後感。

    その時代の色に染まり、タバコの香りすら漂ってきそうな小池真理子の骨太な文章力に圧倒されました。

  • 読後、セシルカットにしました。

  • 1960年代などの学生運動が盛んだった時代を背景とした小説を初めて読んだけど、読みやすかった。
    結末には意表を突かれました。

  • 小池真理子さんの小説で一番好きな本です。
    70年代、切なくてノスタルジーに溢れた作品。
    事件から20年後、主人公が訪れた仙台の街から無伴奏という
    喫茶店は無くなっていて、街の景色は一変していた。
    ただ、あの頃の景色、空気、匂いというものが、セピア色の記憶の中に悲しく、甘美でかけがえのないものとしていつまでも残るんだろうな。
    そんな世界観が好きです。

  • 図書館で書庫にあったのでもってきて貰った。…これとは別の、とても借りにくい感じの表紙に焦りました(笑)
    この小説は1960年代が主軸。最早私はテレビや教科書から見た、想像でしか知らない時代です。
    デモとか反戦とか学生運動とか……当時は不良も何かを変える為に行動する熱さがあったのかなぁと思いつつ。

    響子という女性の一人称で、彼女の現在から始まり、過去の高校時代に遡る。あとがきでもいわれていますが、これは「仙台の話」です。そこに居た「響子」という17歳の女の子の話なんだという印象でした。但しちょっとしたミステリーになっているので、それは面白いのでは。

    あと、ラストに向かうにつれて、私は少し女である主人公側にどうしても立てなくて(主人公の考えとか書かれ方とか)、個人的にあまり好きになれませんでした。個人的な好みの話。
    悲しい話でした。

  • 女性側から見た男同士の恋愛ものというのが、私は好きなんだと思います。
    男性視点からの作品も好きですが、どうにも自分は女である枠から逃れられないので、女の視点から見た男同士の恋愛への嫌悪・戸惑い・甘美という感情を受ける女性の主人公に、共感と共にリアルさを感じるのだと思います。
    時代背景など含め、惹きこまれました!

  • この本を初めて読んだのは確か小学校高学年と時だったと思う。
    当時は結末が衝撃で、それしか覚えていなかったけど、あれから10年以上たった今読むと、その衝撃に向かうまでに、細かな記述があったことに気づく
    初めて読んだ時、学生運動の記述が多くていやだとも思ったけど、あくまでそれは時代描写のこと
    ただ単純に、悲しい恋愛小説だと今は思う

  • 私の定番、テッパン、小池真理子作品。

    まだ『恋』を超える作品とは出逢えていない。

    この作品は『恋』を含めた三部作、のひとつだそうだけど
    途中で渉と祐之介の関係に気づいてしまった・・・
    ので、まぁまぁかな。

    でも、とにかくこの人の描く濃密な作品世界が好き。
    憧れの、接点のない、ずっと年上の大先輩、みたいな存在。

  • 途中まで真剣に
    一文字一文字を追って
    読んでいましたが
    途中から流し読みになりました。

    小池真理子さんの作品は
    これで3作品目でしょうか、
    少し私には読みづらいです。

    同性愛が作品の鍵になっていますが
    そこにたどりつくまでが長くて
    結局ページをパラパラとめくってしまいました。

    作品の題材は個人的にとても
    興味のあるもので物語の内容も
    嫌いではなかったのですが
    一文字一句味わって
    読めなかったことが残念です。

  • 真実が明らかになった瞬間、どこかで気付いていたのに予想以上にショックを受けた自分に驚いた。
    繊細で美しい描写によって、物語に酔わされていたからだと思います。
    過去の自分の記憶を永遠に封じ込めるラストシーンは読んでいて痛いくらい。
    安っぽい恋愛小説にはない気品があり、上質の「切なさ」を味わえる作品です。

  • 主人公が渉さんと呼んでいるのが素敵でした☆

  • 高校生の響子の話。高校生でこんなに大人びていて感受性のゆたかな子がいるのかと思うとちょっと自己嫌悪というか、ガクっときてブルーになる。
    うらやましい体験とは言えないが、経験としてはうらやましい。
    みんながすごく自分の感情にまっすぐで痛々しいけどうらやましかった。
    これに比べると、私は自分の感情をごまかしてばかり。と思ってしまう。

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著者プロフィール

小池真理子(こいけ まりこ)
1952年東京都生まれの作家。成蹊大学文学部卒業。89年「妻の女友達」で日本推理作家協会賞(短編部門)、96年『恋』で直木賞、98年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、12年『無花果の森』で芸術選奨文部科学大臣賞、13年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞を受賞。その他の著書に、『二重生活』『無伴奏』『千日のマリア』『モンローが死んだ日』などがある。
2019年1月6日から、『モンローが死んだ日』がNHK BSプレミアムでドラマ化。主演は鈴木京香、草刈正雄。

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