スペイン断章 上 (集英社文庫 ほ 1-12)

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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087484205

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  • スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤを愛し、スペインに暮らすことをえらんだ著者が、スペインの各地をめぐりつつ、その歴史についての所感をつづったエッセイです。

    「歴史というものは読むものなのではなくて見るものなのであることをこの国で私は教えられ、経験させられた」と述べる著者は、歴史を知るためにスペインの各地に足を運び、その地から歴史の諸断面についての考察を展開していきます。

    ただし歴史を「見る」といっても、歴史的な事件の痕跡を示す文物が、当地において目にすることができるということを意味しません。たとえば、ラス・カサスが「新大陸」の先住民に対しておこなわれた残虐行為を告発する文章を引きながら、著者は「スペイン帝国主義、植民地主義の発祥の地」である広場の人びとをながめながら、歴史上の事件とのかかわりを示す痕跡の不在に直面して、両者にどのようなかかわりがあるか、「それは私自身にも説明がつかない」と率直に語ります。そして、こうした現場が、文学的想像力をたずさえた作家にとって歴史を「見る」ことのスタート地点になりうることを鮮明に示しています。

  • 堀田善衛、透徹という言葉がよく似合う。
    彼の意識のスタート地点には太平洋戦争にいたった<日本>への戸惑いが見え隠れする。個人をすりつぶす社会への猜疑の持ち主なのに、あまりネガティブなことは言わないし書かない。卓越したリアリストなのだろう。

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著者プロフィール

1918年富山県生まれ。小説家。1944年国際文化振興会から派遣されて上海に渡るが、敗戦後は中国国民党宣伝部に徴用されて上海に留まる。中国での経験をもとに、小説を書き始め、47年に帰国。52年「広場の孤独」「漢奸」で芥川賞を受賞。海外との交流にも力を入れ、アジア・アフリカ作家会議などに出席。他の主な作品に、「歴史」「時間」「インドで考えたこと」「方丈記私記」「ゴヤ」など。1998年没。

「2018年 『中野重治・堀田善衞 往復書簡1953-1979』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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