ナルキッソスの鏡 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087484724

感想・レビュー・書評

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  • 官能的で美しい文体が良く映えている。

    とても恐ろしく、そして悲しいお話だった。

  • この話は大きく分けて3つのパートに分かれている。
    映画「悪魔のいけにえ」の狂った一族を彷彿とさせる親子。
    その親子の犠牲者とその周辺の人々。
    そして、ナルシストな美青年。
    その3つのパートが逢魔ケ森という不気味な名前の森で少しずつ接点をもちひとつに重なる。
    そして起きる悲劇と露呈する悪事を描いた物語。

    母親と双子の兄妹の3人暮らしの家族。
    母親は子供の誕生日にいつも犯行を犯す。
    双子の兄妹に歳格好の似たカップルを探し出し、彼らを殺した後、金品や装飾品を奪うのだ。
    その戦利品は双子への誕生日プレゼントとなる。
    もうそんな事を何年もこの逢魔ケ森で繰り返してきた親子。

    今回そのターゲットに、たまたま逢魔ケ森を訪れた訳ありのカップルが選ばれた。
    男は自分の恋人を、そして女は自分の親友を裏切り、この森に逃避行してきた。
    そして、運悪く獲物を物色していた女に見つかり、二人とも殺されてしまう。
    カップルの女性の親友であり、彼女に裏切られた女性はショックから二人を探しに森を訪れ自殺を図る。
    それを助けたのは絶世の美女。

    絶世の美女の正体は実は男。
    たぐいまれなる美貌をもちながら、トランスヴェスティズム(服装倒錯-女装)に苦しむ青年だった。
    彼は叔母の持ち物である別荘の留守番を頼まれ、その期間、思う存分女装を楽しんでいた。
    そこで、犬の散歩中に自殺未遂の彼女を発見したのだった。
    やがて、自殺を図った女性の姉夫婦が捜索に乗り出し、大きく物語は動き始める。

    もう、とにかく上手に書いてる!のひと言に尽きます。
    文章がしっくりきて、読みやすく、情景がはっきりと浮かぶ。
    例えば、狂った母子の容貌の描写など、これ以上ないと思うもので、どういう風貌の人間に人は不安感を感じるのか、そしどういう状況でどういう態度を取られると人は危機感を感じるのかを明確に突いている。

    ただ、残念だったのは、ナルシストの青年と狂った親子の対面シーンがあまりにあっさりしてラストもあっけないということ。
    これだけ途中まできっちりと書いていて・・・。
    もっと「ミザリー」のように、被害者と加害者のやりとりを描いて欲しかった。

    自分の中に逃げ込むということ。
    その危うさとそこからさらに逸脱した狂気を描いたミステリー作です。

  • 美しくナルシスティックで性的に倒錯している真琴や狂った益代と息子との異質な関係
    暗く冷酷で不気味さ漂う雰囲気の中に少し甘ったるくて官能的な文章がすごく好き。夢中で読み耽りました
    サスペンスとしても面白いけど、この小説の良さは歪んでる人間の内面の描写が魅力的なところだと思う。とくに真琴の内面を掘り下げていくところはぞくぞくした

  • これまで,小池真理子の理想が見えていなかった。
    三つ以上の方向があるような気はしていた。

    真琴の自己陶酔は,一つだと感じた。自分を美しいと思う。

    千鶴の浩二への想いも,一つかもしれない。
    「浩二はしばらくの間,じっと千鶴を見つめていた。雨まじりの風が強く吹き,闇の中でベランダに下げた丸い物干しがくるくる回っている。わかった,と彼は真顔で行った。「でも,車は貸さないよ」「何故?」「僕も一緒に行くからさ」また涙があふれそうになった。」

    もう一つはみつからない。乃里子の真琴への思いだろうか。美しいものが好き。

    推理小説としても,いくつも途中での予想を裏切られたという点ですごいと思った。

    今,小池真理子で何を読んだらいいかと聞かれたら,「ナルキッソスの鏡」と答えると思う。標題にある鏡が,鏡子の由来であるという分かり易さもある。

  • 美しい青年と大女を軸に話が進むが最後がちょっと急展開で荒い印象を受けた。
    青年のナルシシズムは興味深く読んだ。
    二人の主人公が交差するところをもっと丁寧にクローズアップすればもっと盛り上がったのかも?

    文章は読みやすいし、サイコホラーの名にふさわしい作品だった。

  • 再読。

    面白かった―!ミステリ作家だったころの小池真理子の作品の中ではこれが一番好きかな。

  • これは巧い。綺麗な場面と恐ろしげな場面が一本の糸で繋がっている。

  •  女装癖を持つ主人公が巻き込まれるミステリー。小池真理子特有の不気味さがなかなかよかった。
     女装をする男の人というのはオカマバー以外では偶然に1度見かけたことがあるんだけど、そういう人の心理がどんなものか知りたいというのがこの本を手にしたきっかけだった。主人公の真琴は自分を好きで好きでたまらなく、女装した自分に恋をしてしまう。うーん、ここらの心理描写もリアルには思えなかったのは作者が女でこういう性癖を持っていないからだからだろうねえ。
     物語の進行としては別荘地に遊びに来たカップルを殺害する一家、そのカップルの友達を保護した真琴の別荘地での生活が絡み合って進行していく。中盤までの流れは、え、この後どうなっちゃうのってハラハラするが、終盤の手抜き感はいただけない。手抜きというか、納得のいかない終わり方に思えるから評価は星二つ。雑誌の連載で書いた小説だからプロットの構成が甘かったのだろうか。オーバーオールのおばさんはリアルだったよ。こんな風にすぐカッとなる人いるね。怖い。

  • ミステリーとしては、最高にホラーチックなこと含めすごく面白かったんだけど、ストーリーがあまりに残酷だし、展開する前から、雰囲気にすら救いがたい絶望感の色が濃かったので、私好みではないです。こういう怖いの苦手。

  • 読んだのはかなり昔ですが、めちゃくちゃ怖くてめちゃくちゃ面白かったのを覚えてます・・・またミステリとかサスペンスも書いて欲しいものです・・・

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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