天使の卵 エンジェルス・エッグ (集英社文庫)

著者 :
制作 : 村上 龍 
  • 集英社
3.38
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本棚登録 : 7787
レビュー : 1056
  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087484922

作品紹介・あらすじ

そのひとの横顔はあまりにも清洌で、凛としたたたずまいに満ちていた。19歳の予備校生の"僕"は、8歳年上の精神科医にひと目惚れ。高校時代のガールフレンド夏姫に後ろめたい気持はあったが、"僕"の心はもう誰にも止められない-。第6回「小説すばる」新人賞受賞作品。みずみずしい感性で描かれた純愛小説として選考委員も絶賛した大型新人のデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  •  初めて読んだ村山さんの作品でした。その後”おいしいコーヒー”シリーズを少し読みましたが、春妃とかれんのイメージが重なってしまいます。初めて歩太と春妃が出会った満員電車のシーンで描かれた、春妃のイメージが強く残ります。

     精神科医師の春妃、始めは強い意志を持った女性のように思いましたが、すぐに心の中に抱えた弱さが見えてきました。年齢のギャップを越えた歩太の想いと、素直に答えられない春妃の葛藤。最後の結末はあまりにも急展開でした。

     この作品の後、”おいコー”を読んでいくと、性格は逆の頼りなげなかれんが強くなっていく世界がまた面白く読めます。

  • 何故これを借りようとしたのか(しかも予約までして)自分でもよくわからない。ただ読み終わったあと、自分の目に狂いがなかったことを快く思った。
    わたしが小説で書きたかったことなんてとっくにここで描かれている。狂おしいほどの恋心、突然の死と別れ。解説の村上龍や審査員も指摘の通りあまりにもベタだが、ここまで振り切れてベタな作品ってなかなかなくて、下手な細工を散りばめた小賢しい作品よりもぜんぜん素敵だと感じた。
    「ひとりの人間が死ぬたびごとに、ひとつの世界が滅んでゆく」ショペンハウアー
    この言葉が目に入った瞬間、わたしはどうしようもなく泣きそうになった。死は死んだ本人にだけ降り積もる不幸ではない。人は一人で生きているわけではないのだ。周りの人間、それも愛し合っていた者同士なら哀しむに決まっている。自殺がいけないのは誰かを世界に取り残してしまうからだ。滅びゆくのは死者本人の世界だけでなく、周囲の人々の世界もなのである。
    わたしが死んだら君の世界も滅びるのだろうか。
    解説の「小説はテキストのない翻訳」という持論が興味深かった。言葉にできない言葉を表すことが小説の試みだ。孤独を表現できる人が真に文章の上手い人なのだとわたしは思っているのだが、それは孤独というものが表現し難い、言葉を失うものだからなのだろう。
    むっちゃどうでもいいけど、『O嬢の物語』って会話の中に出てきて意外だった。

    人間は圧力釜。

  • とても純粋な恋愛小説。
    あまり恋愛小説に良い印象は持ってなかったが、本作は少し違った。
    解説にもある通り、あまり物語に大きな仕掛けなどせず、凡庸さに徹したことが理由なのかなと思った。

    物語としてはバッドエンドで、切ない読後感だったが解説を読んで、著者が伝えたかったであろう希望を感じ取ることができ、良かった。

    シリーズの他の作品も読んでみようと思う。

  • 【2014.1.23】再読
    瑞々しいというか初々しい。物語全体が綺麗で透明感のあるイメージ。久しぶりに読んでみると、後半はずいぶん展開が早いのだなぁと思わされた。そこはちょっとマイナスかも。
    初めて読んだ中学生のときは感じなかったけど、歩太の春妃への想いは本当に真っ直ぐで今読むと若干むずがゆい。でもそれだけ歩太にとって春妃は救いだったんだろうな。

  • 村上龍さんの「解説」にも似たようなニュアンスで触れられていたと思うが、非常にオーソドックスな恋愛の物語といった印象。ただ、それぞれのエピソードやセリフが非常にリアルというか、ドキッとするシーンが多く、一気に読んでしまった。

    --p.26
    「あんたまさか、これで美大をあきらめるつもりじゃないだろうね」
    --

    受験に落っこちたばかりの親のかっこいいセリフ。千住さんの親もたしか東京芸大に子供を入れるときに似たようなセリフで発破をかけたみたいなエピソードをどこかで読んだ記憶があるが、非常に男前というか、堂々としていていいと思う。

    --p.67
    正直言って、僕の中には夏姫への嫉妬がはっきりとあった。夏姫自信への嫉妬というより、それは、いまだに受験生である僕から見れば遊んでいるとしか思えない大学生活への嫉妬であり、金銭的なことで悩まなくてもいい夏姫の境遇への嫉妬であり、そして、会うたびにびっくりするほど大人っぽく、女らしくなっていく夏姫を、いつも取り巻いているであろう男どもに対する嫉妬であった。
    --

    もし自分が同じ立場だったら、全く同じ感情を持つと思う。なんというか、恋愛における嫉妬というのは、同性(にどのように思われるか)を意識したものであるので、そのあたりがうまく表現されていてドキッとした。

    --p.70
    「ねえねえ、どっちがきれいだと思った?」
    夏姫はふざけたような調子で訊いた。その中に潜んでいるかすかな真剣さに気づかないふりをして、僕はとぼけた。
    --

  • 先が何となく想像できる展開ではあったが、切ない気分が味わえた。
    死とは、誰もが経験することだけど、きっと意外と真剣に考えていないものなんだろうな。確率的にいっても。

  • ラストが衝撃的である。
    19歳の少年のもどかしい心情が
    ありありと伝わってきた。

  • 読後感が悪かった。生きる力が萎んでしまうような救いのなさ。読んだことを後悔した。
    本書を読んで呆然としている私とって解説(村上龍)は、この生命力を吸い取る魔術の極意、あるいは先ほどまで上演されていた舞台の裏方を覗かせてくれたような印象で気を紛らわせてくれた。

  • 偶然、19歳の予備校生、歩太は電車で乗り合わせた年上の女性に一目惚れする。
    名前も住んでいる場所もわからない彼女。

    その女性が偶然、精神的病を抱える父親の担当医でしかも偶然、ぼくの恋人の姉だということがわかる。

    非常に読みやすい、情景描写も浮かんでくる文体にのめりこみました。

    著者の本を知った1冊で、この後、著者の作品はすべて読んで切る。

  • 「作家は相違点から出発して、共通点を獲得しようとする。なまなましい現実的なディテールを、翻訳して、抽象性を手に入れようとするのである。翻訳の際にはさまざまな形の物語の構造を利用する。だめな小説は翻訳の自覚と技術が足りずに物語の構造のどれになり、良い小説は正確なディテールの組み合わせにより物語の構造からほんの僅かの自由を得て、それが読者に快感をもたらす。」
    と解説されるブンガクのことは脇においてやりきった恋愛小説
    ここまでされればわかりましたお好きにどうぞの境地
    ただ書かれた1993年を持ってしても
    本当にこの作品が「みずみずしい感性」なのか疑問
    いつでも古くありきたりで凡庸に感じられる作品だと思う

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著者プロフィール

村山由佳(むらやま ゆか)
1964年7月10日生まれ、立教大学文学部日本文学科卒業。不動産会社、塾講師などの勤務を経て作家となる。
1991年 『いのちのうた』でデビュー。1991年『もう一度デジャ・ヴ』で第1回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞佳作、1993年『春妃〜デッサン』(『天使の卵-エンジェルス・エッグ』に改題)で第6回小説すばる新人賞、2003年『星々の舟』で第129回直木三十五賞、2009年『ダブル・ファンタジー』で第4回中央公論文芸賞、第16回島清恋愛文学賞、第22回柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞している。ほか、代表作として『おいしいコーヒーのいれ方』シリーズがある。

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