- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087485318
感想・レビュー・書評
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イラストレーターの谷口葉子に、小説の表紙の仕事が舞い込んだ。
書き手はバイオレンス小説で人気を博した美鈴慶一郎だが、読者からは少々飽きの傾向が見えていた。
出版社から与えられたテーマは、明治の女流画家だった河野珠枝が自死する直前に描いた大作『朱鷺飛来図』を取りあげたものだった。
絵には凛とした朱鷺と夥しい牡丹が咲き乱れている迫力あるものだが、美しくもあり何故か幻想的な雰囲気の中に恐怖感をも醸し出していた。
この絵が描かれた明治時代は、人間が全国の朱鷺を殺戮し続け、少数の生き残りの朱鷺を佐渡に追い込んだ頃と重なる。
そろそろ創作者として自分自身を納得させる作品を残したい葉子と美鈴の二人は、この絵画に秘められた摩訶不思議な雰囲気に興味を抱き、作者の創作意図を解明しようと珠枝の足跡を辿ることとなる。
葉子と美鈴の二人の取材は、図書館や文芸に詳しい人達の聞き取りから始め、朱鷺の最後の生息地となった佐渡へ渡り、その後に奥多摩の鷹の巣山へと導かれる。
『朱鷺飛来図』の絵が醸し出す不思議な魅力と恐ろしさの真相を、葉子と美鈴は果たして解明できるのだろうか⋯。 篠田節子女史が作家として初期に綴ったホラー・サスペンス『 神鳥 イビス 』は、読者の背筋を見事に凍らせるような世界へ誘ってくれる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この作品と、赤江瀑の「禽獣の門」を続けて読むとちょっとした大型鳥類恐怖症ができあがるのではないかと(笑)
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篠田さんの初期?の作品。そういえば篠田さん、初期はこの作品のようなミステリーホラーが多かった。あらすじ、明治に生きた美人画家。その画家は狂死、彼女の足取りを調べた映画監督も謎の飛び降り死。美人画家が残した絵には恐ろしいモノが書かれていてその謎を主人公2人が調べに行くストリー。途中までは面白かった。ただ化鳥がこの世のものではないのに攻撃されると負傷することで私の中で一気にフィクション感が。。。フィクションだけどもしかしたらありうるかも?という篠田さんの作品が好きなのでちょっと残念。
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読み終わったもの備忘録。
確かに朱鷺って、天然記念物で絶滅したばかりに悲劇の鳥になっているけれど、赤い脚はちょっと迫力あるよね。
というところから、繰り広げられるミステリー。
篠田節っちゃんお得意の怖さ。
今ならCG使って、かなり怖い映画化ができそう(期待)
男性に素直になれない主人公と、ガサツだけど優しい男の展開が少し古臭く感じるけど、そこがまたいい。 -
イラストレーターとバイオレンス作家が夭逝した画家の描いた「朱鷺飛来図」の謎を追います。2枚の違った絵に見えるというこの絵の描写が物凄くリアルで本当に怖いのです。彼らは画家の足跡を追い、迷い込み、朱鷺の因縁と怨念に追われるのですが、モノトーンの世界の中にポンと入ってくる朱鷺のピンク色がおどろおどろしく一気に読まされてしまいました。鳥の嘴や爪がトラウマになりそうです。二人のキャラも良かったし、これで何もかも終わったわけではないというラストも悪くないです。ただもう少しこの先も読ませてもらいたかった気はします。