アド・バード (集英社文庫)

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  • 集英社
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本棚登録 : 770
レビュー : 85
  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087485929

感想・レビュー・書評

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  • 1990年の作品。「地球の長い午後」のオマージュとのことだが、あまり似てなかった。確かに、人類がほぼ絶滅した未来世界にとても不気味な生き物たちが繁栄している、というところは共通するんだけど…。

    本作は、マサルと菊丸の兄弟が、行方不明になった父親を探しにマザーK市へと旅をする冒険物語。

    マザーK市では、かつて「ターターさんとオットマンのふたつの大きな勢力にわかれて激しい広告や宣伝の商売の戦争をしていた」という。お互いの宣伝活動をエスカレートさせ、「電子機器は勿論のこと、生化学技術もどんどん開発研究され」「人間たちとなじみのある動物なども改造したり動物サイボーグ化したりして、どんどん戦力にしていった」。その挙げ句、人間の脳を動物に移植することまで行った。「アド・バード」は、鳥に人間の脳の一部を取り入れて自由に喋れるようにした、生きた空飛ぶ広告宣伝媒体のこと。妨害用のロボット昆虫も次々と作られ、それらを退治するために作られた化学合成虫がロボット昆虫を喰い殺しながら自己増殖を繰り返すうちに、人間がコントロールできなくなってしまい、世界を崩壊させる一因を作った。

    という訳で、マザーK市は、ド派手で過剰な宣伝に溢れているが、そのメッセージを受けとる人間はもはや一人もいない、という異常空間。

    旅の途中で仲間になったキンジョーは、オットマンの破壊工作アンドロイド。小さなボックスに脳を移植して生き長らえている脳髄男は、実は天才科学者ターターさんの成れの果て。二人とも、裏切ったり真実を言わなかったりで、どうも信用できない存在。

    本作の世界観、何だか訳がわからなくてついていけなかった。グロテスクな変な生物もたくさん出てくるし…。なので読むのもしんどかった。

  • 私が一番面白い小説だと思う「水域」と並べて(三部作として)紹介される本。

    地下に閉じ込められたり、大海原に落ちたり、大勢の鳥に襲われたり、およそ「嫌な死に方」に隣り合わせの環境を、逞しく、たまに途方に暮れて進む。「こんな状況だから」と、お互いの憎しみを棚に上げて頼る・連れ立つ関係性に、妙な説得力があり、微笑ましい。
    非実在虫を描かせたら日本一。

  • 何回読んだかわからない、名作。
    違う世界に行ける、純粋なエンターテインメント
    表紙のイラストがすごくぴったりです

  • 〝夢見る心を忘れない読者なら、絶対にこの小説の虜になる〟
     このような殺し文句が地ばしった腰帯にぐるりと取り巻かれていた本。このフレーズ以上に作品の素晴らしさを表す言葉を、私は見つけることができません★ そう、夢見る心を忘れなければ虜になる作品なのです。

    〝もしかしたらそのアド・バードたちが、ぼくを強引に小説家にさせていったのかもしれない〟
     作者を長らく放さず、強く呼び続けてきたイメージの実体化!

    (ここで終わってみたい誘惑にかられる……☆)

     その夢の冒険は、重たくて力強く、時折物憂げで、かつ爽快でもあるという珍味です。
     マサルと菊丸の二人組が、行方知れずの父を探して旅に出る物語☆ もう一つ言い添えると、目指す目的地はマザーK市というらしい。男の子たちが親を求めて巻き起こすドリーム★
     件のマザーK市は荒廃が進み、人間がいなくなったのちも「広告」が成長し続け、突然変異を起こしている近未来都市です。その様子を綴る独特のシーナ調も暴れてます。

     この物語、SF『地球の長い午後』(オールディスの代表作)を読んだことのある人なら、影響の強さをただちに察することでしょう。ところが同時に、これほど完全な椎名ワールドの傑作はない☆ SFは、それをたらふく食べて育った者の体をつくり、骨を組み、血肉と化すのです。
     冒険談を埋め尽くすは、まさにこの著者ならではの奇妙な描写。うねうねネバネバジイジイ、ねとねとぶるぶるぐりぐりした、昆虫的に気ぜわしい表現が群れを成します。おお、赤舌、ヒゾムシ、地ばしりたちよ!
     このお戯れなフレーズは、他の作品、エッセイなどでも見かけるけど、『アド・バード』に表れた時だけ、ぴったり吸い付くようなハーモニーの完成に驚きました。

     椎名誠は相当変なオヤジだと聞き及ぶところ。それも『アド・バード』のせいでおかしくなったのだろうと思ったら、急にすっきり★

  • 舞台は未来都市。広告に汚染されている、らしい。不可解な生き物たちが、椎名誠の特異な言語感覚のもと、奔放に動き回ります。魅惑の冒険世界。

  • いつの時代とも判らぬ、荒廃した地球。K二十一市に住むマサルと菊丸の兄弟は、マザーK市からやってきたという男から生き別れの父の名を聞き、父の足跡を追ってマザーK市へと旅立つ。街の外に広がる荒野には、人体を浸食するヒゾムシや全長数十メートルに達する地ばしり、声高に宣伝文句をわめき散らすアド・アードなど、独自の進化を遂げた生物たちが跋扈し、マサルと菊丸は幾度も危険な目に遭いつつもマザーK市をめざす。途中出会った謎の男・キンジョーの助けも借りつつ、ようやくマザーK市へと辿り着いた兄弟は、この世界が荒廃した原因を知ることになる・・・

    いやいやいやいや、鴨的に椎名誠と言えば「とぼけた味わいのエッセイスト」というイメージだったので、この作品が日本SF大賞受賞作ということは存じておりましたが果たしてどんなもんだろー、と低いハードルで読み進めて、深く反省。正に直球どストライク、堂々たるSFです。

    マサルと菊丸の兄弟が父を捜して冒険の旅をする、という、極めてシンプルなストーリーです。余計な伏線は一切ありません(物語の途中で兄弟が一切出てこない章が挟まり、よくわからない情景が描写されますが、これらの章の意味は読み進めるうちにわかってきます)。マサルと菊丸の心理描写も実にあっさりした淡白なもので、平易で淡々とした筆運びで物語が展開されていきます。
    その淡白さを埋めて余りあるのが、圧倒的な情景描写、そして椎名誠節炸裂の言語感覚。特に、何の説明もなくいきなり登場する異形の生物たちの躍動的な描写といったら、なんだかよくわからないんだけど存在感だけはやたらとあるという(笑)強烈なインパクトを脳裏に残します。こうした生き物にも土地や建物や食べ物といったものにもいちいち極めてユニークな名前が付けられており、独特の諧謔味すら感じさせます。必要以上に登場する変な擬音も素晴らしい!どの場面でも、常に何かの音が響いています。

    要は変な生き物と変なネーミングがわんさと登場する、ファンタジー寄りのライトな作品よね・・・との第一印象を持ちつつ読み進めると、次第に明らかになるSFの骨格。
    世界が荒廃したのは二大広告企業同士の「広告戦争」がきっかけであり、跋扈する危険生物たちは「広告戦争」により生み出された生体兵器が制御不能な進化を遂げた成れの果て。わずかに生き残った人間は広告企業により搾取され、脳髄を兵器として使用されている・・・
    もはや商品を買う人間が激減した世界で、日夜流れ続けるケバケバしい広告。その広告の意味を何ら理解しない異形の生物が、広告の灯りに照らされながら蠢く。なんという想像力の極北。

    さらに鴨がこの作品にSF魂を感じたのは、語弊を恐れずに言えば、主役の兄弟二人の深みの無さです。
    ステロタイプな感情表現しか描写されないので感情移入できず、そもそも突然父親を捜す旅に出る動機付けがよくわかりません。この二人よりも、アンドロイドのキンジョーや脳髄だけで生きるターターさん(ビジュアルがジェイムスン教授そのもの(笑))の方が、よっぽど個性があって魅力的です。
    おそらく、主役の兄弟二人はこのストーリーを先に進めるためのドライバーに過ぎず、真の主役はこのユニーク極まる世界観そのものなのでしょう。人間ドラマがなくても十分物語として成立するのが、SFというジャンルの面白さ。そうした意味からこの作品は、実は相当ハードコアなSFと言えると思います。

  • ?3部作?なんて言われているもののひとつ、広告戦争とアンドロイドという近未来、正直文体が眠たい、匍匐前進を連想するようなだるさ、これを読んで一番驚いたのは新井素子との因縁だった

  • 第11回日本SF大賞受賞。

  • こりゃすごいと興奮して読んだ記憶があります。部分部分しか覚えていないのですが、一番印象に残っているのは男性型の性的な奉仕をするロボットに追い掛け回される下りです。結局下ネタが印象強いのか。

  • 面白いかな?どこかで盛り上がりが来るかな?と思っている内に読了。

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著者プロフィール

椎名誠(しいな まこと)
1944年、東京生まれの作家。「本の雑誌」初代編集長で、写真家、映画監督としても活躍。『犬の系譜』で吉川英治文学新人賞を、『アド・バード』で日本SF大賞を受賞。近著に『あやしい探検隊 台湾ニワトリ島乱入』『あやしい探検隊 済州島乱入』『そらをみてますないてます』『国境越え』『にっぽん全国 百年食堂』『三匹のかいじゅう』『ぼくがいま、死について思うこと』『おれたちを笑え! わしらは怪しい雑魚釣り隊』『雨の匂いのする夜に』『おなかがすいたハラペコだ』など多数。
映画監督としては、映画『あひるのうたがきこえてくるよ』で第10回山路ふみ子映画文化賞受賞。映画『白い馬』で日本映画批評家大賞最優秀監督賞、95年度JRA賞馬事文化賞、フランス・ボーヴェ映画祭グランプリ受賞、ポーランド子ども映画祭特別賞をそれぞれ受賞している。

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