アド・バード (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087485929

感想・レビュー・書評

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  • 1990年の作品。「地球の長い午後」のオマージュとのことだが、あまり似てなかった。確かに、人類がほぼ絶滅した未来世界にとても不気味な生き物たちが繁栄している、というところは共通するんだけど…。

    本作は、マサルと菊丸の兄弟が、行方不明になった父親を探しにマザーK市へと旅をする冒険物語。

    マザーK市では、かつて「ターターさんとオットマンのふたつの大きな勢力にわかれて激しい広告や宣伝の商売の戦争をしていた」という。お互いの宣伝活動をエスカレートさせ、「電子機器は勿論のこと、生化学技術もどんどん開発研究され」「人間たちとなじみのある動物なども改造したり動物サイボーグ化したりして、どんどん戦力にしていった」。その挙げ句、人間の脳を動物に移植することまで行った。「アド・バード」は、鳥に人間の脳の一部を取り入れて自由に喋れるようにした、生きた空飛ぶ広告宣伝媒体のこと。妨害用のロボット昆虫も次々と作られ、それらを退治するために作られた化学合成虫がロボット昆虫を喰い殺しながら自己増殖を繰り返すうちに、人間がコントロールできなくなってしまい、世界を崩壊させる一因を作った。

    という訳で、マザーK市は、ド派手で過剰な宣伝に溢れているが、そのメッセージを受けとる人間はもはや一人もいない、という異常空間。

    旅の途中で仲間になったキンジョーは、オットマンの破壊工作アンドロイド。小さなボックスに脳を移植して生き長らえている脳髄男は、実は天才科学者ターターさんの成れの果て。二人とも、裏切ったり真実を言わなかったりで、どうも信用できない存在。

    本作の世界観、何だか訳がわからなくてついていけなかった。グロテスクな変な生物もたくさん出てくるし…。なので読むのもしんどかった。

  • 小説すばる1987年7月号〜1989年12月号連載のものを1990年3月集英社から刊行し、1997年集英社文庫化。第11回(1990年)日本SF大賞受賞。世界の謎と、理由を行き当たりばったりの冒険にちりばめて語るストーリーは絶品でわくわくする。登場する人、モノ、イキモノ達に魅力がある。インパクトがあって、記憶に残る話でした。

  • 椎名誠さんのSFは、私的に至極の一品
    気持ち悪さの描写がリアルで生々しく、爽やかな場面ではより爽快感を感じられる

    定番な表現だけど、自分がそのSFの世界に入り込んだ様な錯覚を覚えて毎回本当に楽しめる

    お金の無かった10代の時に図書館で借りて読み、すぐに買った本であり、大切な本です

  • 最初に読んだ時に途中で挫折して、数年後に再チャレンジで挫折したところを頑張って読み進めて最後まで読んだら、あれっなんか分からないけれど凄く良いかもって思って、3回目じっくり読んで何故か透明フィルムで傷まないように表紙コーティングして大切な一冊になりました!
    でもやっぱり途中の樹木のところはしんどい(--;)
    ソコを乗り越えて頑張って最後まで読んでほしいです!
    余談ですが、この本をみると私の頭の中には何故かムーンライダーズの『Y.B.J.(YOUNG BLOOD JACK)』という曲が流れます!

  • 私が一番面白い小説だと思う「水域」と並べて(三部作として)紹介される本。

    地下に閉じ込められたり、大海原に落ちたり、大勢の鳥に襲われたり、およそ「嫌な死に方」に隣り合わせの環境を、逞しく、たまに途方に暮れて進む。「こんな状況だから」と、お互いの憎しみを棚に上げて頼る・連れ立つ関係性に、妙な説得力があり、微笑ましい。
    非実在虫を描かせたら日本一。

  • 何回読んだかわからない、名作。
    違う世界に行ける、純粋なエンターテインメント
    表紙のイラストがすごくぴったりです

  • 四半世紀ぶりに再読。やはりこの独特の世界観には強く引き込まれる。この世界の話をもっと読みたいと思うが、未だ他の作品は出ていない。いくらかの重要な謎を残し、いかにも続編がありそうな終わり方なのだが。

     とても映像化向きの作品なのに、そうならないのは作者の意向なのだろうか(アニメ化の話はあったそうだが立ち消えたとの噂でもあるし)。
     椎名さんのSFを読むと、想像上の事物に対するネーミングに強いこだわりを感じる。「名は体を表す」というが、可能な限り「名で体を表そう」とされているようである。中には、名前だけ出されて説明がなされないことすらある(いきなり出てくる「指巻きや腸出しといった重刑」って何だ...)。
     名前を聞いてそのモノの姿かたちを想像するというプロセスは、この本の楽しみのひとつだろう。しかし、一度でも映像化してしまえば、そういった楽しみ方はできなくなってしまう。そういうことなのだろう。

  • オズの魔法使いかな

     世界観に驚く。古い本だがアイデアと作り込まれた世界が素敵だ。筋書きよりも、その世界観を楽しむ物語だな。少し長いので一気読みは辛いな。

  • 舞台は未来都市、主人公のマサルが父親を探す話
    制御できないアンドロイドが話に関わってくる

  • 〝夢見る心を忘れない読者なら、絶対にこの小説の虜になる〟
     このような殺し文句が地ばしった腰帯にぐるりと取り巻かれていた本。このフレーズ以上に作品の素晴らしさを表す言葉を、私は見つけることができません★ そう、夢見る心を忘れなければ虜になる作品なのです。

    〝もしかしたらそのアド・バードたちが、ぼくを強引に小説家にさせていったのかもしれない〟
     作者を長らく放さず、強く呼び続けてきたイメージの実体化!

    (ここで終わってみたい誘惑にかられる……☆)

     その夢の冒険は、重たくて力強く、時折物憂げで、かつ爽快でもあるという珍味です。
     マサルと菊丸の二人組が、行方知れずの父を探して旅に出る物語☆ もう一つ言い添えると、目指す目的地はマザーK市というらしい。男の子たちが親を求めて巻き起こすドリーム★
     件のマザーK市は荒廃が進み、人間がいなくなったのちも「広告」が成長し続け、突然変異を起こしている近未来都市です。その様子を綴る独特のシーナ調も暴れてます。

     この物語、SF『地球の長い午後』(オールディスの代表作)を読んだことのある人なら、影響の強さをただちに察することでしょう。ところが同時に、これほど完全な椎名ワールドの傑作はない☆ SFは、それをたらふく食べて育った者の体をつくり、骨を組み、血肉と化すのです。
     冒険談を埋め尽くすは、まさにこの著者ならではの奇妙な描写。うねうねネバネバジイジイ、ねとねとぶるぶるぐりぐりした、昆虫的に気ぜわしい表現が群れを成します。おお、赤舌、ヒゾムシ、地ばしりたちよ!
     このお戯れなフレーズは、他の作品、エッセイなどでも見かけるけど、『アド・バード』に表れた時だけ、ぴったり吸い付くようなハーモニーの完成に驚きました。

     椎名誠は相当変なオヤジだと聞き及ぶところ。それも『アド・バード』のせいでおかしくなったのだろうと思ったら、急にすっきり★

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著者プロフィール

1944年生まれ。作家。1988年「犬の系譜」で吉川英治文学新人賞、1990年「アド・バード」で日本SF大賞を受賞。著書に「ごんごんと風にころがる雲をみた。」「新宿遊牧民」「屋上の黄色いテント」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズ、「そらをみてますないてます」「国境越え」など多数。また写真集に「ONCE UPON A TIME」、映画監督作品に「白い馬」などがある。

「2012年 『水の上で火が踊る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

椎名誠の作品

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