耶律楚材 上 草原の夢 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.51
  • (13)
  • (28)
  • (45)
  • (7)
  • (0)
本棚登録 : 292
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087486100

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 少数の民族が広大な中華の地を統治するためには、そこにあったかつての仇敵をも包容する技量が必要であったに違いない。清の乾隆帝がそうであったように、それは、みずからの民として、漢民族をふくめた民族をみずからの民として慈しむことを必要とした。

  • 「弓を使おうとすれば弓匠が必要でありましょう。天下を治めようとすれば、天下を治める匠というのが必要でありましょう。儒がそれであります。いま国家は武を用いておりますが、これは天下を治めるためです。陛下は天下を治めようとされております」

    2020/11/3読了
    圧倒的軍事力で版図を拡大するモンゴル帝国の中で、庶民の為に文明的統治を根付かせようとした耶律楚材の生涯を描く。時代背景は、グローバリズムの波が押し寄せる現在にも通じるところがあるような気がするが、それならば、今の為政者は何を為すべきなのだろうか?

  • 中国の歴史に詳しい作者が導入部から詳細な描写を延々と続ける。国名(時代)と人名が複雑に錯綜し、最初からこの物語に入っていくのに相当の我慢が必要である。しかし、流石は陳舜臣であり、打ち寄せるさざ波のように静かに立ち上がり、いつの間にか引き込まれている。
    女真族の金帝国に仕えていた契丹族の耶律楚材がモンゴル族チンギス・ハーンの世界征服の野望達成にあたって、信頼され相談をされるようになるまでの顛末である。金征服(跋金)の前に西のカスピ海・黒海に至るイスラム圏諸国の征服(西征)である。屠城「彼らは来た、破壊した、焼いた、殺した、奪った、そして去った。」・虐殺と収奪の恐怖の侵略政策のチンギスに対して仏教徒である楚材は仲間とともにその政策を矯正すべく懐に飛び込む。時を同じくして道教の教主長春真人にも同じ意図を告げられる。
    チンギスは死に臨んで、次の世代には楚材を重用することを遺言する。 下に続く。 

  • まだ話が始まらない感じ

  • 歴史小説。チンギス・ハンはやはりかなり残虐だったのね。その虐殺をなんとかとめたいとそばに使えながら苦心していた契丹人。金がチンギス・ハンに落とされてしまったのち、金に使えていた耶律楚材はチンギス・ハンに呼ばれて側近となる。

  • 耶律楚材
    陳舜臣
    集英社文庫

    耶律楚材というのは人の名前です。
    この人の細かいことはWikiでも見てください。

    2点引用します。

    >一利を興すは一言を除くに如かず。
    >一事を生ずるは一事を減ずるに若かず。

    この人が、本当にこんなことを言ったのかよく分かりませんが
    この言葉はとても印象的でした。


    >『新元史』の楚材評
    >中原の百姓をして戎狄に践刈さるるに至らざらしめしは、皆な夫の人の力なり。
    >伝に謂う所の自ら貶損して以て権を行う者は、楚材、其れ庶幾か。
    >
    >伝とは『春秋公羊伝』のことで、その桓公11年に
    >「権を行うに道有り。自らを貶損して以て権を行う」
    >(政権を担当する者は、自分をおとしめ損なうようにして権力を行使しなければならない)

    wikiより。
    春秋公羊伝(しゅんじゅうくようでん)は『春秋』の注釈書であり、
    『春秋左氏伝』・『春秋穀梁伝』と並んで、春秋三伝の一つとされる。
    公羊学とは、孔子が作ったとする『春秋』を公羊伝に基づいて解釈する学問であり、さらにそこで発見された孔子の理想を現実の政治に実現しようとする政治思想である。前漢の董仲舒によって形作られ、後漢の何休によって大成された。何休以後は、『春秋』を左氏伝によって解釈する左伝学が主流となり、公羊学は衰退した。

    このレビューを書いているときの首相は野田さんです。
    ほとんどの人がついてこれない道を突進しているように感じています。

  • 耶律楚材にしてもその周辺人物も、どうも「架空戦記の主役」のような雰囲気を帯びている。「後世の価値観を持つ、後世の知識による先見性を備えた人物」という印象。自分に耶律楚材に対する偏見があるからだろうか?

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    西征東伐に明け暮れるモンゴル帝国の政の頂点にあって、楚材は孤軍奮闘、政・軍・監の三権分立や文教政策に力を尽くす。モンゴルの破壊力を、民衆を守る警察力に転化する大目標があった。しかし、大ハンにつづき、彼に絶大な信頼を置いた太宗オゴディが没し、激烈な後継者争いが…。チンギス・ハンに仕えて23年、楚材52歳の冬のはじめだった。ユーラシアを舞台に描ききる、天才宰相の波瀾の生涯。

  • 知っているようで全然知らない人なので、陳舜臣だし安心して読めるだろうと、旅行に持って行って、帰りの飛行機で読んだ。
    予想以上に面白かった。
    前近代の民族意識ってどうなっていたのかと思う。私が自分を日本人だと思い、友人の劉さんを中国人だとみなしているのは近代の産物であるというのはあるていど分かっているのだけど、前近代にも民族意識はあっただろうし、それはどういうものなのか。
    それを知るには、ヨーロッパの事例よりも、元よりも前の中国史がよいと思っていた。
    それからすると、耶律楚材の民族意識が近代的過ぎ、かつ作者の陳舜臣の投影すぎるように思う。まあ、そういうことが知りたければ、小説ではなくて歴史書を読むべきだろうけど。

  • 4087486109 330p 1997・7・30 3刷

全23件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1924年-2015年。神戸市生まれ。大阪外国語大学印度語部を卒業し、終戦まで同校西南亜細亜語研究所助手を務める。61年、『枯草の根』によって江戸川乱歩賞を受賞し、作家活動に入る。その後、93年、朝日賞、95年には日本芸術院賞を受賞する。主な著書に『青玉獅子香炉』(直木賞)、『玉嶺よふたたび』『孔雀の道』(日本推理作家協会賞)、『実録アヘン戦争』(毎日出版文化賞)、『敦煌の旅』(大佛次郎賞)、『茶事遍路』(読売文学賞)、『諸葛孔明』(吉川英治文学賞)、『中国の歴史』(全15巻)などがある。

「2018年 『方壺園 ミステリ短篇傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

陳舜臣の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×