曼陀羅の人(上) 空海求法伝 (曼陀羅の人/空海求法伝) (集英社文庫)
- 集英社 (1997年12月12日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087487183
作品紹介・あらすじ
密教招来の大いなる希望を胸に、まだ無名の空海は延暦23年(804)、遣唐留学生として唐に渡った。福建省に漂着後、その詩文、書蹟の才は各地で注目され、空海は長安に入る。当時、盛んであった景教など新知識の吸収に努める空海は、やがて密教継承の大阿闍梨恵果の知遇を得る。曼陀羅の人、空海の中国での足跡を描く長編歴史小説。
感想・レビュー・書評
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空海さんってば超ダンディ。
筆者の空海に対するリスペクトをとても感じます。しかし、この作品で書かれている空海は誇張されているのではなく、きっと本当にすごい人だったんだろうと思います。
宗教は理想を追求するものであるとも考えられる。
ゆえに少し間違えば、万民を幸せにするもののはずなのに、決して万民にそぐわないものになってしまう可能性を大いに秘めている。
そして一部の宗教家は救うべき人間のことを置き去りにして、宗教を先走りさせてしまうことがある。
空海はその点、宗教はあくまで万民を救うものだという、芯がとても強かった。とてもリアリストな宗教家だったんだと思う。
ということがこの本を読んで感じられた。
司馬遼太郎の空海の風景と並行して読んでいるので、イメージがわいてきてしょうがない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
鬼滅はグロくてだダメだったけど、ああいう話は好きなので、鬼→怪→密→空海と連想ゲームでつなげてたどり着いたので、まあなんとなく読んだ。はまった!
下巻に長安の地図があるので、地名が出るたびにそこを参照しながら読んだ。
架空の人物は杜知遠、陸巧造、友琴だけであとは史実に基づいているという。無味乾燥な教科書上の人物が生き生きとしてとても面白い。密教や空海に対する先入観が一掃されたし、要所要所で挟み込まれる歴史の話も楽しい。中国と日本の違いが楽しい。
別の著者の空海も読み比べようと思った。 -
知っているようで何も知らない仏教。
なにか知りたいと思って手に取った一冊です。
当時の世界の中心の一つだった、唐という国を
舞台に、物語が進みます。
心に響く言葉も数多くちりばめられたすてきな物語です。
何度も、読み返していきたい本になりました。 -
本棚整理中に手に取って再読。上下巻。
留学僧として唐に渡った空海が2年足らずで密教界の頂点たる伝法阿闍梨の灌頂を受け、そして日本へ戻るまでを描く。
陳舜臣作品らしく起伏に乏しいストーリーではあるけど、当時の唐の政治状況や宗教界の様子を盛り込むあたりはさすがうまいと思う。
密教とは「仏教の最後の形」であると言う。
世界宗教へ発展する過程において民間信仰を離れ、土着性を失って“洗練”されてしまった仏教が、再び土着性を得て人々の傍らに寄り添う形が密教であるとか。
密教においては世界は「そのまま受け入れられるもの」。
男女の愛も政界の策謀も、雑然としたすべてがマンダラを織り成している。
密教入門としてもなかなか手頃な作品だと思うが、空海が完璧超人すぎるので主人公への感情移入はしにくい。
弘法大師伝説に引っ張られてしまうのか、なまの「人間」としての空海は描けてないと思う。
まぁそれがテーマではなかったかもしれないけど…
大学生の頃に読んだときは退屈さを感じたものだけど、今読むと全編に流れる爽やかさが心地いい。
この変化は喜ぶべきや否や… -
これも好きな1冊。
仏教に興味がある人には面白いと思います。