- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087491203
作品紹介・あらすじ
原爆投下の前日8月8日、長崎の街にはいま現在そこに住む人々と、おなじ人間の暮らしがあった。結婚式を挙げた新郎新婦、刑務所に収監された夫に接見する妻、難産の末に子供を産む妊婦…など。愛し傷つき勇気を奮い起こし、悲喜こもごも生きる人々を突然に襲う運命の《明日》。人間の存在を問い、核時代の《今日》を鮮烈に描く長篇。第29回青少年読書感想文全国コンクール・高校の部『課題図書』。
感想・レビュー・書評
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長崎に原爆がおとされる前の日を描いた作品。
アメリカの9.11しかり3.11しかり、悲惨な出来事の「前の日」というのは確かにあったわけで。
読んでいても「この人たちがみんな、明日には……」と思うととても切なかったです。
そしていま私たちだって、明日何が起きるかなんてわからずに生活していて、もしかしたらまさに「今日」が、この作品に出てくる1日になるかもしれない。
そう思うと、1日1日を大事に生きるって大切だなあと思うのですが、なかなか難しいんですよね……。
登場人物がみんな長崎弁(でいいのかな)で会話をするので、ちょっと読みにくかったりもしました。どういう意味かわからないところもあったりして。 -
1945年8月8日の長崎の生活を描いた作品。タイトルの明日と言うのは、翌日原爆が落ちる日。決して明るい日ではなく黒い日なんだろうけど、それを知っている今読むから意味があるのだろう。しかし、登場人物たちは明日のことは何も知らない。私たちの日常も明日はどうなるか分からない。大量破壊兵器でなくても交通事故にしたって、あっという間に幸せを奪っていくのだから。しかし、作品そのものとしては、どうだろう。期待していたものとは違っていました。
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1945年8月8日
その次の日、明日・・・
長崎に原爆が投下された日。
戦時下でその土地、長崎で生きる人々の光景
明けない夜はない、明日は来ると誰もが希望を持ち明日を迎える
ひたむきに生きる人々、戦争が破壊する光景
重い話であることは言いようがないくらい伝わってくる・・
でも忘れてはいけない戦争の記憶
戦争を知らない私は、当たり前の明日を目の当たりにしている・・・
生死隣り合わせの明日とは・・・ -
★3.5
綴られるのは1945年8月8日の長崎、原爆が投下される前日の風景。道端で遊ぶ子どもたち、祝言を挙げる夫婦、出産を控えた妊婦等、戦時中とはいえ様々な思いや悩みがそこにある。勿論、彼・彼女たちが明日に起こる出来事を知るはずもなく、今日の延長で明日が来ることを疑うことすらしない。作中で長崎に原爆が投下される描写はないものの、その全てが明日に奪われたことに心が痛むばかり。また、終盤で挟まれる当時の人たちが残した言葉も、ただただ哀しく辛い。本作を映画化した、黒木和雄監督「TOMORROW 明日」もお勧め。 -
読んだのは単行本のほう。原爆投下の前日を描く。結婚や出産のハレの日や市井の人たちの日常と数時間後に訪れる悲劇を対比すると哀しい。
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戦時下ではあるものの、ごくありふれた夏の日の日常。
多くの人命を一瞬で奪った惨禍の前日、人々は極々普通の日々を営んでいた。 -
(2007.08.12読了)(2006.09.30購入)
副題「一九四五年八月八日・長崎」
「父と暮せば」(井上ひさし著、新潮文庫)の解説で、原爆をテーマとした文学として「黒い雨」(井伏鱒二著、新潮文庫)と「明日」(井上光晴著、集英社文庫)を挙げてありました。
「黒い雨」は、昔読んだので、「明日」を読もうと購入したのですが、8月9日は過ぎてしまいました。でも、今読まないとまた来年になってしまうので、読んでしまうことにしました。
副題が「1945年8日8日・長崎」となっていますので、原爆投下の一日前ということが分かります。小説の内容も、8月8日の長崎で生活する人々の様子が描かれています。
小説の中の人物たちは、明日何が起こるか知らないわけですが、読んでいる僕は、何があったか知っているので、できることなら小説の中の人物に教えてやりたい、もどかしい気持ちを持ちながら読むことに成りました。
物語は、結婚式に集まった人々を中心に進められます。
新郎、中川庄治(三菱製鋼所の工員)、新婦、三浦ヤエ(長崎医大の大学病院の看護婦)、長崎医大附属医院看護婦、福永亜矢、江上春子、新婦の両親、三浦泰一郎、ツイ、新婦の叔母、堂崎ハル、新婦の叔父夫妻、水本広、満江、新郎の義父母?銅打弥助、妻、仲人役、小付稜子(助産婦)、新郎の友人、石原継夫、・・・。
明日、爆心地を離れる予定が変更になってしまった人、用事で爆心地へやってくる予定の人。さまざまです。
登場人物たちの会話から、戦時下の生活がどのようなものだったかが分かるようにもなっています。物資が不足して、米の代わりに烏賊の塩辛が配給されたという話も出ています。
物語は、三浦ツイの娘、ツル子が無事出産した8月9日4時17分で終わる。
原爆投下は、11時2分。あと7時間もない。登場人物たちがどうなったのかは、想像するしかない。
著者 井上 光晴
1926年5月15日 福岡県久留米市生まれ(中国旅順生まれ)
(4歳のとき、日本に帰国)
(電波兵器技術養成所卒業)
1950年 処女作『書かれざる一章』を発表
1956年 上京、本格的に作家生活に入る
1963年 「地の群れ」を発表
1977年 文学伝習所を創設
1992年5月30日 大腸癌のため死去、享年66歳
(2007年8月19日・記)
☆関連図書(既読)
「長崎の鐘」永井隆著、中央出版社、1976.06.20
(「BOOK」データベースより)amazon
原爆投下の前日8月8日、長崎の街にはいま現在そこに住む人々と、おなじ人間の暮らしがあった。結婚式を挙げた新郎新婦、刑務所に収監された夫に接見する妻、難産の末に子供を産む妊婦…など。愛し傷つき勇気を奮い起こし、悲喜こもごも生きる人々を突然に襲う運命の《明日》。人間の存在を問い、核時代の《今日》を鮮烈に描く長篇。第29回青少年読書感想文全国コンクール・高校の部『課題図書』。