叫ぶ私 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087493504

感想・レビュー・書評

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  • カウンセリングを学んでいるので、参考になればと思って手にとった本です。
    作家・森瑤子さんのセラピー記録です。
    森瑤子さんといえば「才能にあふれ、ヒット作を次々と生み出し、外国人の夫と可愛い娘3人に囲まれているだれもがうらやむゴージャスな女流作家」というイメージでした。
    何をそんなに生き急いでいるのだろうと思うほど作品を量産し、そして風のように早世してしまいました。。。

    しかしこの本を読むと、彼女が夫のことや娘のことなどでもがき苦しんでいた様子がよくわかります。
    これだけの苦しみを抱えていたからこそ、おそるべきエネルギーで作品を書き続けることができたのでしょう。

    その苦しみの原因は、はっきりはしないのですが。。。
    彼女は非常に真面目で責任感の強い人です。
    あんなことも、こんなことも、全部自分のせいとして背負い込んでしまうような人。

    文脈から察するに、子どものころ、母親から精神的に虐待を受けていたようなのです。
    それが原因で、何かにつけて自分を責めるようになってしまったのかもしれません。

    この本を読む限り、彼女の奥底には「死にたい」という願望があったように思います。
    それでも、まだまだ書きたいテーマがたくさんあったことでしょう。
    彼女こそが「ハンサム・ウーマン」なのでした。

  • 090913(s 091006)

  • 1988

  • 森瑶子という作家の深奥なる魂の声。
    それを受け止めるセラピストとの対話。
    読みながら自分が癒されて行きました。

    森さんの「自分の状態を見事に言葉にして行く力」と「観察する能力」を讃えたセラピストのあとがきに様々な想いをくみとります。
    作家がこのように自己の内面を表出すること。
    それは作家の役割を越えた行為。
    ある意味で己を投げ出しての「読者の救済」にすら思われます。


    • Michiruさん
      もしかして一日で完読されましたか?
      凄い。

      読みながら、自分の心を深く見つめてゆくことになりますね。

      作家の役割を越えた行為。...
      もしかして一日で完読されましたか?
      凄い。

      読みながら、自分の心を深く見つめてゆくことになりますね。

      作家の役割を越えた行為。
      仰る通りです。

      同時にこのようにさらけ出せる場がある人は幸福だとも
      思います。
      不幸と幸福の相容れないけれども不可分の関係に、
      思い至ります。
      2009/06/01
    • lovefigaroさん
      MakiYさん
      一気読了でした。
      それはきっとセラピーの経験があったから。
      繋がれて行くことば。
      その重さ。
      そして求める救済と提...
      MakiYさん
      一気読了でした。
      それはきっとセラピーの経験があったから。
      繋がれて行くことば。
      その重さ。
      そして求める救済と提示される現実のギャップ。
      だれしも心に秘める想い、忘れてはいけないものですね。


      2009/06/01
  • 著者はプロローグでこう書いている。

    「私は自分の傷口や恥をさらすことを恥ずかしく思ったり
    躊躇することはもうない。
    それは小説を書こうと最初に思った時に、既に選択がなさ
    れているのである。」
    (本文・プロローグより)

    凄い言葉だ。

    そして、この作品は、著者が半年間通ったセラピーの記録だ。
    森さんご本人と、セラピストのやりとりを録音しそれを、
    書き起こしたものだという。

    虚飾も虚栄もそれに類する要素はすべて排除されている。
    裸の著者の心が、そのまま目の前に迫ってくる。

    読了まで、結構時間を擁した。
    まず私自身の幾種もの黒々とした心にも毎回対する事になるし、
    腹を決めて、こちらも心をフラットにして臨まないと、入って
    いくことが出来ないからだ。それは長く潜水する前に、深く
    息を吸いこむ事にも似た種類の事だ。

    今、森瑶子をすべて読もうと試みているが、まだ初期の現段階で
    これを読んで良かったと、心から思う。
    全然、以後著作への対し方が変わってくると思うから。

    著者の事、そして自分の事をより知る上で、良かった。





    • lovefigaroさん
      読みます。
      読みます。
      2009/05/26
    • Michiruさん
      是非!

      私の折り目だらけの本でよければお持ちします。
      但し、かなり折りました。
      それでも、もし気にならなければ、
      携帯の方に一報...
      是非!

      私の折り目だらけの本でよければお持ちします。
      但し、かなり折りました。
      それでも、もし気にならなければ、
      携帯の方に一報くださいませ。

      読書スタイルって皆違いますものね。
      2009/05/27
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著者プロフィール

森瑤子(もり ようこ)
1940年11月4日 - 1993年7月6日
静岡県伊東市生まれの小説家。本名、伊藤雅代。
幼い頃からヴァイオリンを習い始め、東京藝術大学器楽科入学。この時フランス文学にのめりこんだうえ、様々な人々と積極的に交流し、卒業後に就職。結婚と育児に追われる。1977年に池田満寿夫が『エーゲ海に捧ぐ』で芥川賞を受賞したことを機に、初の作品『情事』を書き、すばる文学賞を受賞しデビュー。
37歳でデビューしてから52歳で没するまで、小説、エッセイ、翻訳など100冊を超える著作を生んだ。作品の多くがテレビドラマ化されている。代表作に、『スカーレット』『夜ごとの揺り籠、舟、あるいは戦場』など。

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