岬一郎の抵抗 1 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 62
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087495638

作品紹介・あらすじ

岬一郎は東京・下町に住むごく普通のサラリーマンだが、彼の体内では不思議な力が成長していた。一方、町内では犬や猫が連続死する異常事態が発生。公害とみた町内有志は都庁に陳情、岬も同道する。ところが、のらりくらりと応対する環境整備課長が、有志たちの前で突然死した。そして第二の突然死が…。

感想・レビュー・書評

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  • 10年以上前に一度読んで、強烈に印象に残っていた作品を、もう一度読んでみた。初版は1988年出版され、日本SF大賞を受賞している作品だそうだ。昭和の匂いがプンプン漂う下町の人情話と、無敵な超能力者という奇妙な取り合わせだが、全然無理は感じない。

    何の変哲もない下町にアパート暮らしする平凡なサラリーマン岬一郎が、ひょんなことから超能力を発現し、次第に力を強大化させていくストーリーだ。岬一郎は、超能力が社会に及ぼす影響を恐れ、自らを律し能力の行使を封印する。だが、社会は過剰に反応し、次第に岬一郎を排除する方向へ動いていく。

    といったあらすじだが、主人公はこの超能力者岬一郎ではない。同じ町内で小さな印刷屋を営む、ジャーナリスト上がりの野口という男の視点で、物語は綴られていく。近所のおっちゃん、おばちゃんたちは、岬の能力に驚き、感謝し、隣人であることを誇りに思い、支持しサポートし始める。権力は、岬の能力を警戒し、恐れ、いらだち、やがて排除しようとし始める。ジャーナリズムは、まずネタに飛びつき、もてはやし、大騒ぎして、やがて権力に迎合して、岬を糾弾し始める。

    著者は、野口という男に、元ジャーナリストというバックグラウンドを与えた。当の岬一郎には、ほとんど何も語らせず、野口の目を通して三者三様の反応の推移を、ある意味第三者的視点で語らせていく。うまいやり方だ。と同時に、そういった演出意図を読者に感じさせない著者の筆力に感心させられる。

    この物語の主題は、本文中にも書かれているが、キリストの受難を現代に(といっても20年以上前だが)再現したことだろう。読み進めるうちに、もしかしたらイエス・キリストも超能力者で、岬一郎が物語の中で直面するような葛藤や不安を経て、悟りを開いたんじゃないかなんて気になってくる。いろいろ考えさせられる物語だ。

    最後になったが、残念ながらこの本はもう絶版になっているらしい。紙の本は古本屋でしか手に入らないようだ。私は、昔買った文庫本はどこかに行ってしまったが、電子書籍版を購入して読んだ。XMDF形式でダウンロード可能だ。

  •  第9回(1988年)日本SF大賞受賞、こちらブックオフで探して1、2巻入手するも、3巻目はアマゾンのお世話になる。レビューは次巻にて

  • ずいぶん昔に読んだ本ですが、とても切なくなったのを覚えています。超能力を持った人が主人公です。

    熊本大学:white-めい

  • もうづいぶんと前に、いつも利用するTSK館内で遣っていた、チャリティ本販売でこの『岬一郎の抵抗』(1)と(3)を買った。その場には(2)が無かったのだけど、まあどこかにあるさ、と思って買った。一冊10円だった。あとは、半村良のSFだから、というのも理由かな。さてさてそこからが大モンダイだったのです。とうぜん(2)が揃わないと(1)を読み始めるわけにはいかないので、なにかのついでには、必ずこの(2)をブクオフなどの古書店で探すようになった。ハッキリ言って地方や東京も含めてかなりの古本屋へ立ち寄った。ところがところが、これが無いんですよね。(1)や(3)は時々見かけるけど(2)は無い。ようやく、ひょんなところで見つけて(2)が手に入って、めでたく(1)を読んだのでした。でも、しかし、一旦(2)を手に入れたあとは、もうあちこちで同じ(2)を見つけるわ見つけるわ。これでもか!っつーくらいに見つかった。トドメは、いつも利用するTSKの蔵書に、まさにこの文庫版の(2)があるのを見つけたこと。なんぢゃこりゃぁー。さて、感想わっと。この本は たなぞう ではあんまし読まれない「SF」である。バリバリの超能力小説である。しかも1、2、3巻もある。この1巻でわ、岬一郎という名前のエスパーが、東京のとある町内会との関わりあいの中で、どのように自分の超能力に気付き、物語が始まっていくかを綴っているのであった。なに、町内会?いえいえ書き間違いではありません。エスパーなのに 町内会 なのです。そこら辺が、もう限りなく半村せんせ的SFなのです。つづく。

  • 15年位前に読んだかもしれないが、内容はすっかり忘れてる。文庫本一冊かけて、物語がじりじりと始まる。本巻ではテーマらしきものが現れ、幸福な世界観と一抹の不安をにおわせたところまで。もっと刈り込んで2章くらいにまとめたら、すっきりした小説になるのでは。書き込みすぎ。周辺人物像の描写というより、とっちらかった印象を受けてしまった。あくまで、途中まで読んだ時点の感想ながら。

  • 『人情噺とSFという水と油のようなものを上手くとき合わせて見せる』という半村良のライフワークを最も高いバランスで達成した稀代の一冊。

    読み終わったときの感動しながら知的興奮にとらわれるという
    精神状態は、病み付きになること必至です。

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