熱帯安楽椅子 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.26
  • (39)
  • (41)
  • (238)
  • (19)
  • (5)
本棚登録 : 723
感想 : 53
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087495928

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 10代後半から20代の頃、一時期、山田詠美ワールドにはまっていた時があり、たしか、この作品は一番最初に手にしたもの。彼女の作品の個人的なイメージは熱気。ふつふつと立ち込める熱気の中にたたずむ感じ。閉じ込められた熱気を煽ったあとは気持ちの良いスコールシャワーで全身を解放する。まさに五感が生き返るみたいな。。
    今作はバリ島を舞台にした恋愛小説ですが、行ったことのない南国の海、空、雨、夜、朝、太陽、匂い立つ空気まで、感覚で楽しむ小説です。小説の世界に恋い焦がれたのはこれが最初だったかもしれません。一気に読めます。

  • もうね、大好き‼‼

    邪道かもしれないけど、正直ストーリーとかどうでもいい。
    何より注目していただきたいのは、熱帯特有のエロさ切なさ寛容さを文章でとてもリアルに表現している事。

    ある一節で、バリの地元のオバちゃんから民族衣装を着せてもらい乳首に紅塗って首元に練り香水につけてもらうシーンがあるんだけど、これがもうっ!!
    読んだ時にね、フワッと甘い香りがして、背筋からお尻にかけて撫でられた様になって、濡れた。
    文章に愛撫された事なんて、今まで無かった。

    後ね、市場で買った蜂入りの蜂蜜。巣から出ている蜂のお尻は蜜で濡れていて、後部座席で新聞をじっとり湿らせる。ってシーンなんてエロ過ぎ‼
    南国特有の暑さと甘い香り合わさった時どれだけエロい気分になるのかを、さすが!よく知っていらっしゃる!
    ウェイターを口説き落とそうと紅い口紅をつけたけど、白いカップについた自分の跡を見て、この国に似合わない無粋な事をしたと思うシーンとか、すごい好き!

    そして、始まりは身体なりゆきは心。
    すごいよね。素晴らしく現実的だよ。

    だってさ、恋愛感情って基本性欲じゃん。好きな男できたら触りたいしKissしたいし寝たいでしょ?
    手が好きとか、目が好きとか、声がイイとか、まぁ理由は色々だけどさ、結局は欲しいんじゃん。
    じゃなきゃ付き合う意味ないし。

    でもね、ちゃんと心から始まる恋愛もあると分かってるから言えるセリフだよね。そんな恋愛の方が本当は辛くて淫靡だよね。

    この本読むなら、是非そういう所に注目していただきたい!
    そして語り合おうよ‼

    • りるさん
      感想の速さとクオリティにびびった。
      ちょっと自己反省する。。。(^_^;)
      読みたくなったよ!よむね!
      感想の速さとクオリティにびびった。
      ちょっと自己反省する。。。(^_^;)
      読みたくなったよ!よむね!
      2012/02/14
    • りるさん
      今借りてよんでるよ^^
      今借りてよんでるよ^^
      2012/03/03
  • インドネシア、バリ島でのお話。本人の体験談も含まれるのでは、と言われています。

    私はバリへ何度も訪れ、長期滞在もしていますが、バリの描写が凄く上手だなと、読む度思います。
    あのねっとりした暑さとバリ人の雰囲気、祭りの時期や普段の生活の様子、自然など、日本にいる時に読んでバリに浸っています。

    内容自体は、ほぼ官能小説なんですが笑

  • バリから帰国後、読み始めて読了。

    何と表現していいのかずっと言葉にしあぐねていた、バリの空気や人々の、感情を含まず受け入れるというような感覚を、この小説の空気を濡らす水分やスパイスの匂いや空に溶ける太陽の赤のように漂う言葉は、あまりにもしっくりと伝えてきて、浸み込んでしまう。

    当地の空気を実際に感じてきた後に読んで良かった。
    そして今年最初の本としても。

  • 初めてこの著者の書いた小説を読みました。
    確かに、性的な描写に対する耐性が無いと気持ち悪く感じるのかも。人を選ぶのでしょう。
    私は、美しい描写だなぁ、と。足首の鎖が印象深かった。きっとまた読みます。

  • 最後の一文がよい。

  • 5P目で文章から醸し出される自己陶酔に酔った。電車内で読み始めたので初めは電車に酔ったのかと思くらい眩暈や吐き気を感じさせた。古い本をBOOK○FFで購入したためか、独特のスタンプされたような書面と茶色の紙、という構成だったのも陶酔感を強くさせていたと思う。

    山田詠美さんの作品は何冊か読んでいますが、どれも作品への陶酔が凄まじく何冊も連続で読む気はしない。でも時々読んだら新しい世界が開けたような興味深さがある。
    すごく甘くて変な色のお菓子で身体に悪いし正直美味しくないんだけど、どうしてか全然やめられないとまらないからパクパク全部食べたあとの状態。もういらない!と思うけど時々思い出して食べたくなる。

    バリにはいったことがないですが、暑い地域や季節にしかない独特の物悲しさは感じたことがある。それが文中から伝わってきた。
    何度も読まなくても、記憶に残り時々思い出しそうな作品でした。

  • 小説書きが失恋してバリに行き、そこで愛をするお話。
    (これは著者自身のことを書いてるのかなぁ~。)

    短く言えばそうなんだけど、これはもーっと奥の深い小説。
    愛すること愛を感じることを南国の島で実感するのよ。

    いつもこの人の作品を読んで思うんだ~。
    体を合わせるシーンが何度もでてくるのに厭らしくなく、それで官能小説のように安っぽくない。
    この人の表現力ってすごいな~。って思う。
    今まで何百冊も読んできたのに、この人の文で表現する力ってダントツだと思う。
    どんな生き方をしてどんな考え方をしたら、こんな表現力が生まれてくるのか不思議で仕方ない。

    今まで何冊か山田詠美の本を読んできたけど、この本が一番好き。
    読んでて関心するほどの表現力に、南国のきれいな景色、そして二つの相反する愛が織り込まれて、読み終わった後、泣きそうに胸にこみ上げてくるものがあった。

  • 図書館から借りました


     現代物。インドネシア・バリ島が舞台で、主人公は日本人の女(彼女の一人称)

     恋愛小説ではない。どちらかというと、性愛小説だが、ポルノではない。
     ・・・・・・ジャンルが難しい。
      不倫して、男にのめり込みすぎて、愛しているために疲れた「私」は男友達(寝る関係)に勧められて熱帯の国へゆく。滞在費とかは全部男友達のおごり。(羨ましいね

     そこで、現地の男をつまみ食いしてまわるうちに、ワヤンというホテルの給仕と関係を持って、彼とだけするようになる。
     ワヤンの友人で、白人(男)の愛人をしている青年と、その弟に出会う。
     弟のトニは耳が聞こえず、喋れない。ただ、彼女を見つめる。


     これは無夜にとっては「マヨネーズをのせた卵かけご飯」みたいなものかなー。
     他人にとっては美味しいのでしょうが、なんか気持ち悪いのです。

     男は美味しい。男は甘い。汗の味がどうたらこうたら~。

     胃が受け付けないので、ごめんなさい。
     元気なときは食べられるかも。
     美味しく天ぷらが食べられる人と、天ぷらってぎとっとしているから嫌っていう人といるから。
     そう、これ。
     こってりとしていて、疲れるのです。。 

  • これは衝撃的作品だ。
    数々の賞を取っているのを知りながらも、山田 詠美という人は、私の中では、文豪の肩書きに収めるには、少し浮いた存在だった。
    奇才、とも違う。
    じゃあなんなんだと聞かれたら、奔放に自分に正直に生きている女性に、たまたま神様が表現力を授けた結果、こういう小説家が生まれました、としか言いようがない。

    主人公は、女子力なんて鼻で笑い飛ばすほどの、徹底的に女たる女であり、
    甘える事のプロフェッショナルであり、
    同時に欲望と怠惰に忠実で、打算をつきつめすぎて正直で無垢な女である。
    つまり、おいしく食べやすいように加工されたワガママな女である。

    物語は、彼女が恋人に唾を吐きかける事からはじまる。
    男は汚いものとして唾をぬぐった。それをみて彼女は恋の終わりを知る。
    彼女は重大な過ちに気がつく。
    男を一人だけ選んで愛してしまった事は、間違いだったのだと。
    再び自分を甘やかすために、彼女は熱帯のバリへ、リゾートにでる。

    彼女は決して美しくはない。
    しかし確固たる自信に溢れている。皆が私を好きなのだと言い張る。
    皆が娼婦だと指さしても、どうして皆がそれをしないのかと首をかしげる。

    四行に一度くらいの割合で「!?」と驚かされる。
    台詞に、感性に、展開に、そして文才に。

    自身の作品について、山田詠美は幸福の吐瀉物と表している。
    そしてその吐瀉物はお金を稼ぎすぎてしまった、と。
    山田詠美がまったく謙遜と無縁の人物だと仮定して。
    いやいや。作品は出産レベルですよ。
    この人にとっての普通が、世間的には希少な感性であり、
    それを不快感薄く、ただし深く伝えられる文才を兼ね備えていて、
    当人の自覚以上にこの作品には価値があると、私はおもいますよ。

    所々、えwそれはさすがに勘違いじゃね?と思ってしまう説得力のなさと、
    本人の写真が余計だったので☆をひいて☆4。

    この本のしおり紐が、南国を思わせる草のような素材だったのは、
    私が手にとった本だけたまたま?
    仕様だったら素敵だなー。

全53件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山田詠美の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×