絆 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087495966

作品紹介・あらすじ

"夫殺し"の起訴事実を、すべて認めた被告弓丘奈緒子。執拗に無実を主張する原島保弁護士。犯行に使われたと思われる柳刃包丁を買ったのは奈緒子だ、と認める証人。殺された夫には愛人がいた。離婚話もあって…状況は被告不利に傾むいてゆく。だが、裁判の進行につれて明らかになる秘められた意外な真実とは。人間の心の気高さを謳いあげる感動の長編法廷ミステリー。第41回推理作家協会新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 法廷ミステリー
    テーマは暴いてはいけない真実といったところでしょうか?

    ストーリとしては、
    夫殺しの起訴事実を認めている被告の奈緒子。しかし、弁護士の原島は無罪を主張。
    検察の状況証拠や論述、本人の自白も含めて、奈緒子の犯行にしか思えないところから、原島が法廷で少しずつ真実を明らかにしていきます。

    奈緒子が殺人の罪を背負ってまで、守りたかったものとは?
    といった展開です。
    そこには知的障碍者が絡んできます。
    さらに家族の絆が浮き彫りになります。

    そして、この裁判を通して、語り手である司法記者の「私」の知的障碍者に対する考え方、生まれてくる子供に対する決断が心打たれます。

    とってもお勧め

  • 夫殺しの被告弓岡奈緒子。殺された夫には愛人が⋯。状況は被告不利に傾いて行く。だが、裁判の進行につれて秘められた意外な真実。人間の心の気高さを謳いあげる感動の法廷ミステリー。

  • 第41回日本推理作家協会賞長編部門受賞作。直木賞候補にも挙がった作品である。
    物語は、被告人に憧れを抱いていた司法記者の視点で進み、記者自身が進行形で抱える問題と、裁判の進行が見事にリンクする構造となっている。
    罪を全て認めている被告人と、無罪を主張する弁護人。実際の事件の犯人は誰なのか、という点に主眼はなく(そこも一定の推理はされるが)、「被告人はなぜやっていない罪を認めるのか」を、知的障害者(本作では精神薄弱者となっている)の問題と「罪」に絡めて描写している。
    舞台は全て法廷であり、尋問を見つめながら過去を紐解く語り手の「私」の設定が秀逸だと思えた。
    きっちりきっちりと薄皮を剥ぐように明らかになる事実。
    弁護人は法廷外で語ることばはほぼない。代わりに前弁護人が、弁護人の葛藤を語り、その考えを語り、そして「私」も心を決める。この物語は多くの人物が心に抱える「何か」を、痛みを抱えながら清算する物語なのだ。
    被告人は過去の罪への思いが強すぎて結果、現在の家族をある種置き去りのような形にしているのもどこか人の業を感じてしまう。人間は複雑だ、というありきたりな結論になってしまうのだけれど。

  • 法廷ミステリー。
    原島弁護士が被告人の過去を暴くことで無罪を勝ち取る。
    こんな悲しい過去があったなんて。
    最後は姉弟が明るく笑顔であったことが何より。

  • この人の作品はたぶん今まで読んだことがないと思うけど、帯に「日本推理作家協会賞長篇賞受賞」って書いてあったので、それがどんなもんかさっぱしわからなかったけど評価は得てる事は確かなんだしと思って読んでみた。

    普段、推理小説はほとんど読まないけど、これは面白かった。
    最初から最後まで一つの殺人事件の裁判シーンばかりで構成されていて、隠されている事をひとつひとつ暴いていく・・・なんてこたあ、推理小説にとって当たり前のことなんだろうけど、題材が知的障害を持つ家族にあるので、単なる探偵ものとはちと違う。
    私だってというか、誰だって家族の中に障害者が出来るかもしれないのだから、偏見差別の話は、かなり勉強になるし、知っていなければいけない事だと思う。

    ただ、やっぱり推理小説って嫌いじゃないけど、あえて進んで読む分野ではないな。完全に個人の嗜好ですが。

  • ー これまでの検察側の尋問においても、被告人の犯行は浮き彫りにされたのである。さらに、被告人自身も自白している。このようなケースにおいて、なおかつ原島弁護士だけが無実の主張をしているのだ。

    事実はなにか。法廷にさらけ出されるのは、『訴訟上の事実』であって、『真実』ではない。『真実』は神にしかわからないのだ。
    冤罪事件の多くは不当な自白から起こっている。冤罪事件の弁護は、捜査側の自白強要による嘘の供述の指摘からはじまる。つまり、被告人は取調官の過酷な追及に抗し切れずに、ついにやってもいない事件を自白してしまうのだが、裁判に入って、その自白をくつがえすことから、冤罪裁判がはじまるのだ。

    ところが、この事件の被告人弓丘奈緒子は、裁判に入ってもすなおに罪をみとめている。その被告人を無実だと、原嶋弁護士は言いはなったのである。 ー

    起訴事実をすべて認めている被告人を無罪だと主張する弁護士が紐解いていく“真実”。
    後半の弁護側の冒頭陳述からの展開が面白い!
    背後にある重たいテーマも考えさせる作品。

  • 「絆」
    日本の、法廷物ミステリーの名作をご紹介。
    ミステリーでは、裁判で真実を暴く、というのが王道ですが、小杉作品は「暴いてはいけない真実もあるのではないか、真実とは何か?」が大きなテーマとなっている作品が多いですね。社会的弱者を題材にした作品を数多く発表していますが、「絆」はその中でも感動的作品です。

  • ミステリーでここまで心に沁みる話は滅多にない。裁判の過程を辿り、明らかになっていく真実・過去の因縁・強い絆。 ミステリーとしてもすごいし、心に迫ってくる力も、最大級。 すごくいい本です。

  • 内容紹介
    夫殺し!罪を認めた妻の供述に不審な点を発見。いったい何を隠そうとするのか。被告人絶対不利の状況で、法の下の真実を追求して原島弁護士が立ち上がる。法廷ミステリー

  • 夫を殺した犯人にされた妻はアリバイを主張せず、法廷でも犯行を認める証言を繰り返す
    しかし、ひとり無実を確信して、弁護士は法廷で無罪を主張する…

    法廷劇ミステリーで、濃い人間ドラマでもあり、当時の社会福祉を問う内容でもあり、さらにはどんでん返しを仕組んであるといういい本でした

  • 涙無しでは読めません!
    30/10/28

  • 評価は4.

    内容(BOOKデーターベース)
    “夫殺し”の起訴事実を、すべて認めた被告弓丘奈緒子。執拗に無実を主張する原島保弁護士。犯行に使われたと思われる柳刃包丁を買ったのは奈緒子だ、と認める証人。殺された夫には愛人がいた。離婚話もあって…状況は被告不利に傾むいてゆく。だが、裁判の進行につれて明らかになる秘められた意外な真実とは。人間の心の気高さを謳いあげる感動の長編法廷ミステリー。第41回推理作家協会新人賞受賞作。

    ここまでして罪を背負う必要があるのか?家族愛も分かるが娘のこと考えたら実際は出来ないだろう。

  • 「殺人を自白し、法廷でも認めている容疑者を
     無実だと主張する弁護士」という「ナニかある」感が
    すごいツカミだった。

    法廷でのやり取りは小説として面白かった。

    ものすごい秘密を期待していたけど、
    オチはそこまでではなかった

    ただ、読み進めたいと思わせる文章だったし、
    障害に対する主人公の気づきなど、他の点でも
    読んでよかったと思えた

  • とてもいい作品でした。夫殺しを認めている奈緒子、無実を信じている原島弁護士。裁判を通して明らかになる過去の事件の真相と奈緒子の秘密。単なる謎解きミステリーでは無く人間の尊厳にまで切り込んだとっても感動的な作品でした。

  • 新聞記者の眼を通した法廷劇。
    被告人は罪を認めているのに、弁護士は無罪を主張。
    なぜ弁護士は無罪を確信しているのだろうか、現実問題として弁護士にそこまでの調査力はあるかと、一部覚めた目で読み進めながらも、法廷でのスリリングな展開を楽しめた。
    そして、裁判の形式を踏まえ、精神障碍者問題というたいへんなテーマを作品に昇華した著者の力量に、改めて敬意を表したい。

  • 図書館で借りた。夫殺しを自供した妻の裁判が始まる。夫には愛人がいて妻とは離婚話が進んでいたのだが…裁判が進むにつれて明らかになる切ない真実。そして当時の社会情勢。秀逸な法廷ミステリーだと思った本。

  • 法廷もの。法廷場面のみで繰り広げられるが、臨場感と緊張感でとてもハラハラする。

  • 久しぶりに重いストーリーの本を読んだ気がする。

  • タイトルやジャケットの見た目より、
    数段おもしろい。裁判ものです。

    障害をもつ子どもの家庭に起こった悲劇が
    書かれています。家族の愛ってすごい。

  • 明らかに無罪だと思われるのに、なぜか夫殺人事件の犯人として自白し、裁判所でもそのことを認め続けるヒロイン奈緒子。そしてその無実を証明しようとする原島弁護士。奈緒子がなぜ自らの犯罪を主張し続けるのか、その謎解きの物語です。当然ながら大きな秘密があって・・・。読者としてもどきどきしながらその展開を追うことに惹きつけられました。「私」として語り手となっている新聞記者の視点が奈緒子の若い日からの魅力と無実を信じさせてくれるのですが、それにしても夫殺しを認めることにまでなるのだろうか、と冷静には思ってしまいます。このようなタイプの法廷小説は普通の推理小説と異なり新鮮でした。

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著者プロフィール

一九四七年、東京都生まれ。八三年「原島弁護士の処置」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。八八年「絆」で日本推理作家協会賞、九〇年「土俵を走る殺意」で吉川英治文学新人賞を受賞。他に「仇討ち東海道」「遠山金四郎」「風烈廻り与力・青柳剣一郎」「栄次郎江戸暦」「蘭方医・宇津木新吾」「親子十手捕物帳」「八丁堀赤鬼忠孝譚」「義賊・神田小僧」シリーズなど著書多数。

「2023年 『剣の約束 はぐれ武士・松永九郎兵衛』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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