二重裁判 (集英社文庫)

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  • 集英社
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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087497045

感想・レビュー・書評

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  • 今から四半世紀ほど前に描かれた傑作法廷ミステリー。幼き頃に両親を亡くした兄妹。妹面白いの兄の古沢克彦は社長殺しの容疑で逮捕され、無実を叫びながら獄中で自殺する。兄の無実を信じる妹の秀美は兄の名誉回復のため…

    タイトルの二重裁判の意味は読み進むうちに少しずつ明らかになるのだが、冤罪の恐ろしさと兄妹の強い絆を感じさせる見事な構成の小説だった。また、冤罪を産むのは警察や裁判所などの司法機関だけではなく、マスコミの報道も大きな要因の一つであるという強いメッセージも描かれ、今のマスコミの暴走を見ると四半世紀ほど前の作品とは思えない先見性をも感じた。

  • 小杉健治の『二重裁判』は、裁判法廷ものミステリーであり、事件発生時の新聞・雑誌などのマスコミ報道姿勢に一石を投じる作品。

    逮捕直後からの新聞決めつけ報道に、追い詰められていく容疑者。また、判決が確定しない公判中の被告人の死は、有罪ではなく無実、という裁判制度上の規定により再審請求もできないということが判明する。

    妹の秀美は自分の手で兄の真実を明らかにするために、兄の人間関係を洗います。そのうえである奇策を講じる。それは疑わしい人物に関する事件に関わり、その裁判を通して、兄の裁判もまたやり直させようとするもの。

    「裁判で有罪の判決が出るまでは無罪、ということになっているが、実際には警察に逮捕された時点で、マスコミにより有罪判決を受けている。裁判にて無罪が確定しない限り、"有罪"なのである。」、本作品ではこの部分を訴えるために全体が構成されている。事件詳細に加えて、法廷での検察官、弁護士のやりとりが真に迫り、読書は「法廷」へどんどんと引き込まれていく。

    また、複雑な事件構成を表現するための伏線や背景が細かく設定されており、見事な構成である。

    また、人間物語として真実を明らかにすることで、亡くなった者の名誉を回復する一方、彼らが大切に守ろうとしたものも白日の下にさらしてしまう。しかもそのさらし方が、相手を追い込み、結局自分の意志で申し出るような展開。この妹は素人ではないな...

  • 評価は5.

    内容(BOOKデーターベース)
    東京高輪でおきた社長殺しの容疑で逮捕された古沢克彦は無実を叫びながら、獄中で自殺した。兄の無実を信じ名誉回復の再審を弁護士に依頼する妹秀美。だが、公判中の被告人の死は、有罪ではなく無実というのが法律上の建前で再審請求には該当しない。マスコミが騒ぎ、殺人者に仕立て上げられた兄の無実を晴らすために、秀美が打った奇策と意外な事実とは…。真実を問う長編法廷ミステリー。

    自分が犠牲になってまで誰かをかばうのは良いが、素人の偽装を見抜けない警察が間抜けすぎる。
    弁護士がクールで知的でかっこよく。裁判での弁護もなるほど・・・と思えたが、何故に不倫をしているんだ?しかも正当化しているし。
    そこだけが最後まで残念だった。

  • 内容云々より女性の言葉遣いに違和感があった。。。
    「…ですわ。」とか「お待ちになって?」とか。
    女性らしい言葉遣いなのかもしれないけど、どうもいちいち引っかかった。
    話が書かれた30年前は普通だったのかなぁ。

  • 獄中で無実を訴えながら自らの命を絶ってしまった兄のため、妹は無実を立証しようとします。妹がとった行動は唯一それを可能とするものですが、兄には黙して語らなかった真実があったのです。兄妹の思いが交差する人間ドラマの名作です。

  • 東京高輪でおきた社長殺しの容疑で逮捕された古沢克彦は無実を叫びながら、獄中で自殺した。兄の無実を信じ名誉回復の再審を弁護士に依頼する妹秀美。だが、公判中の被告人の死は、有罪ではなく無実というのが法律上の建前で再審請求には該当しない。マスコミが騒ぎ、殺人者に仕立て上げられた兄の無実を晴らすために、秀美が打った奇策と意外な事実とは…。真実を問う長編法廷ミステリー(amazonより抜粋)

    事件内容はとても面白かったのに、妹がとった奇策がこの小説の核なんだろうけど、それが「あー・・・」という変な残念感が否めません。
    むしろ再審請求できないのだからこれが唯一なのかもしれませんが(法律は知りません・・)そこが変にややこしくて、途中で主役が妹から弁護士に変わってしまったようで私は好きじゃなかったです。

    ただ事件内容は面白いです。
    真犯人を探すというよりかは無実をはらす、・・・よりも兄の秘密を暴くということにコロコロ転じていった感じもしました。

    バタバタした一冊だったなぁ。

  •  目撃者の証言により、社長とその妻を殺した容疑で逮捕されてしまった古沢克彦。屋敷に行ったことは認めるが、その時にはすでに2人は死んでいたという主張は誰も信じてはくれない。唯一の肉親である妹・秀美だけは一緒になって無実を主張してくれたが、マスコミ報道により周りの目は厳しくなる一方で、その妹も婚約者から結婚破棄を言い渡されてしまった。ショックを受けた克彦は獄中で自殺。結審する前だったので法律上は無実とされた克彦だったが、世間的には汚名を着せられたまま。そして残された秀美は兄をはめた人物を突き止め、殺してしまった!?

     被疑者死亡ということで一度決着がついてしまった事件は、二度と動くことがない。ということで、無理やり別の事件を引き起こし、その場で前の事件の真犯人を明らかにしようこということでの”二重裁判”の話。有罪が確定するまでは無罪、という一見被疑者を保護するような法律だが、実際は全く反対で、新聞などで報道された時点で被疑者は世間的には有罪。無罪が確定するまでその汚名は返上されないということに気づかされた。確かに。そういうことをうまく取り入れた作品だったとは思うが、あまりに不倫をしている人間のオンパレードで登場人物達に肩入れできない(^^;メイン弁護士・瀬能寿夫ですらそうなんだもんなぁ。

  • この人の話は、悲しい結末にも希望と明るい光が見えてきます。小杉ファン、必読です。

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著者プロフィール

小杉 健治(こすぎ けんじ)
1947年、東京生まれ。東京都立葛飾野高等学校、コンピュータ専門学校卒業を経て、プログラマーとして18年間勤務。1983年「原島弁護士の処置」でオール讀物推理小説新人賞、1987年『絆』で日本推理作家協会賞、1990年『土俵を走る殺意』で吉川英治文学新人賞を受賞。
社会派推理小説や、時代小説で活躍。著書に矢尋・知坂刑事シリーズ、「風烈廻り与力・青柳剣一郎」シリーズ、「三人佐平次捕物帳」シリーズ、「栄次郎江戸暦」シリーズ他、『父からの手紙』『残り火』『曳かれ者』などがある。
1993~1994年、日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門の選考委員を務めていた。

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