表題のほか「晩鐘」「夜の喜劇」「夜の出帆」「帰れタロウ」を収録した短編集。巻末に寺久保友哉さんによる各短編の解説あり。
単行本『サビタの記憶』で「夜の出帆」を読み、その魅力に取り付かれ、今回文庫で再読。代表作『挽歌』も読了した結果、実は原田さん青年(中年)×少女の恋愛好きなのかもしれないと感じた。自分を弄んだプレイボーイの青木二郎への復讐にと、乙部京子が青木の友人・副島卓次と偽の恋人を演じる「いたずら」。その後互いに惹かれ合う様子にときめいたわ〜。元恋人の一人娘・朝子と彼女を育てる養父・牟田口(むたくち)の悲恋を描いた「夜の出帆」。何度読んでも大好きだ。落ち合う約束の時間を間違えたため両者が浮気する恋人を描いた「夜の喜劇」、療養のため山荘へやってきた女性が怪我した猟犬に心を寄せる「帰れタロウ」も良い。「晩鐘」のみ途中までしか読めなかったので、また次の機会に借りて読むつもり。絶版でなければ購入したいと思うほど、原田さんの文章は好きだ。復刊望む。