果て遠き丘 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (600ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087501247

感想・レビュー・書評

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  • 昼ドラの悪役並みに悪いヒロイン香也子の毒気にあてられます。裕福な家庭に生まれ、人並み以上の美貌もあるのに人の幸せを台無しにすることに熱意を注ぐ香也子は、心優しい姉絵理子までも妬み…

    どこかで改心するものと思いましたが、最後までどうしようもないままでした…小悪魔にもなりきれていないし…

    でも香也子程でなくても自分より優れたり恵まれている人を羨んでしまう気持ちは私の中にもあります。
    人の振り見て我が振り直せ。西島・絵理子カップルは完璧すぎるけど、せめて金井のような男の本質を見抜く目は欲しい。

    幸せにしてくれそう(だから好き)ではなく、幸せにしてあげたい(だから一緒にいたい)とお互いに思い合えればその結婚は幸せなものになると思う。

  • 大学時代、三浦綾子さんの著作を読みまくっていた時期があり、この作品もその時に読んだもののひとつなのです。いわゆる純文学風でない作品であるゆえ、太目の文庫なのに妙にとっつきやすかったように思います。


    この作品の説明をする時に私は、
    「確かねー、「悪徳の栄え」のような姉妹が出てきて(姉がいい人で妹が極悪人ちゅう感じね)最終的には姉が幸せになって、妹がギャフンと言わされるという話だったと思います」なんて言い方をしてしまいます。さらっと読んだ時の印象はまさにこんな感じだったのです。ところが2回目に読んでみたらもっと複雑で奥が深い作品でした。


    主人公香也子は、自分より美しいものが嫌いで、また、他人が自分より幸せになるのが許せない人。それがゆえに義姉である章子の婚約者金井を奪い、実姉恵理子(最初の説明で言う、いい人の姉はこの人)と西島との間を裂こうとしたりします。そして金井を奪うことには成功しましたが・・・ところがどっこい、この金井という男、超がつくぐらい極悪人で、結局香也子は捨てられることに。


     最初にこの作品を読んだ当時は香也子ってとんでもない女!って思っていましたが、再読してみて、この人は自分を一番に愛してくれる人が欲しかっただけなのかなーとも思いました。最後の、金井に捨てられた後の彼女の行動は、誰かに心配してほしいという無言の叫びがあったように思えます。


     また、これは最初に読んだ当時も考えさせられましたことですが、恵理子の恋人西島は、
    「好きだからといってむやみに会ったり、たちまち肉体関係に陥るよりは、会いたい思いに耐えるそのせつなさが、恋愛の重さである」
    「会うという自由もあるけれど、会わないという自由もある。会いたいから会うのなら子供でもできる。でも、会いたくても会わない自由を行使するのは、ほんとの大人にしかできない」と、恵理子に話します。


     それを読んだ時私は、「あえて会わないでいることで愛を育てることも大事」と解釈し、思わずうなってしまいました。
     結婚してからはこういう恋愛に関して考える機会が著しく減ってしまったのでピンと来なくなりましたが、当時確か「そういう愛情の育み方もありか」と思ったような気がします。
     というよりもむしろ、恋愛以外にもやりたいこと、すべきことがいっぱいあるのだから、感情に任せきりにせず、それらをきちんと自己管理しながら、愛を育てるのが大人の愛だな、という風に今は考えています。


    でも、この作品自体のテーマは別のところにあったはずなので、今度もう一回じっくり読んでみようと思います。

  • ラストまで炸裂する香也子砲を「ひどい」「子供のようだ」という感想は持てても、非難することができない自分に気がついた。

  •  
    ── 三浦 綾子《果て遠き丘 19780101 集英社文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4087501248
     
    …… 姉を妬む妹が姉の才能にけちをつけた時に、姉を慕う従兄が、
    「野に遺賢あり、と言うからな」とぽつりと言います。
    https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10147361805
    (20150702 07:30:48)
     
    …… 「ところで先日、吉行 淳之介さんの本に『野に遺児あり』って
    ありましたけど、あれ、どんな意味だったんでしょうか?」(略)言葉
    としては、『野に遺賢なし(やにいけんなし)』が本来の言い方であり、
    意味は次の通り。民間にうずもれている有能な人物なんてなかなかいな
    い。官の中にこそ有能な人材はいるのだよ。それをモジって吉行さんは、
    野に遺賢あり、と言っておられたのである。(浅川 太郎)
    http://ncode.syosetu.com/n4282ba/
     
    …… 《「書経」大禹謨から》すぐれた人物はすべて官について民間に
    残っていない。人材が集まって正しい政治が行われていることをいう。
    [補説]「野(や)」は民間の意。「のにいけんなし」とは読まない。
    ── 《デジタル大辞泉 小学館》
     
    …… 失われし刻をたづねてちりぬるを 蒼き老兵 死せず野に在り。
    (Let'19960602 to Mr.木戸 壮吉&順子 夫妻 from 雅敏)
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/20040928 四句八句 ~ 与太郎戯詠集 ~
     
    http://q.hatena.ne.jp/1535554663#a1268674(No.2 20180830 02:23:36)
     疑辞苑 ~ ありやなしや、あらいでか ~
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%A4%A2%A4%EA%A4%E4%A4%CA%A4%B7%A4%E4
     
    (20180830)
     

  • まるで昼ドラ。感動はないです。途中で妹香也子の意地悪っぷりに腹立てることしきりで、でも内容はTVドラマ向けです。
     そう、妹香也子は家なき子に出ていた’「えりかが例えてあげる’」みたいな人なのです。’’黒革の手帖’’何回もリメイクするよりも制作局はに取り組んでほしいなあ。
     ただ善良な姉恵理子は波留のイメージなんだが、意地悪い妹香也子にピッタリの今どきの女優が浮かばないので(昔だったらえりかが例えてあげるの榎本加奈子)、オーディションしかないですね

  • 三浦綾子『果て遠き丘』読了。さすがの読みごたえ。各キャラクターが素晴らしくたっている。最後の最後に見える希望の光に、みんながほっとするはず。

  • 再読。うーむ。今読むと時代を感じるし、氷点を読んでないと意味がわからんとこもあるが、しかし群像劇を書く手腕は見事。

  • 初めてこのような文庫本を読んだが、とても読みやすく一気に読み終えてしまった。

    香也子は何故そんなにまでして人の不幸を楽しんでいるのか最初はわからなかったが、物語が進むに連れなんとなくわかるような気がした。
    人間誰しもが香也子のような気持ちを、気付かないだけであって心の奥底に眠らせているのではないか。
    人の幸せを願っているようで、実はそうでない部分が自分にもあるような気がした。

    恵里子と西島はできすぎたカップルだと思ったが、そんな理想のカップルは今の時代いないだろうと思い羨ましく思った。
    様々なタイプの登場人物がそれぞれの役割で上手く登場しているように感じた。

  • オチがない救えない子悪魔小娘の話。小説内での結婚初夜までの貞操死守感にオドロイタ。結末が案の定で且つ適当だな。「氷点」「塩狩峠」といったこれまで読んだ三浦綾子作品中に人格容姿共に100点満点の男女が必ず出てくるなと思いました。そういった人々より「氷点」の夏枝とか人格的に不完全な大人のキャラの方がおもしろいなあ。リアリズムだ。

  • 香也子にとって他人の愛を壊すことは楽しいゲームですらあった。北都の残照に浮かび上がる美貌の姉妹の愛のかたちと人間の信頼、抜きがたいエゴイズムを痛烈に描く傑作。(解説・佐古純一郎)

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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