あるいは酒でいっぱいの海 (集英社文庫)

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  • 集英社
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感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087502237

感想・レビュー・書評

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  • イヤミス!我慢して読了(オイ!)

  • 少し物足りない。

  • 内容紹介
    海全体がこぼこぼと沸き返った!酒だ。世界中の海が酒になっちまう。そして川をさかのぼり、湖に沼に、さらには貯水池に…。ブラック・ユーモアの鬼才の原点を示す初期短編集。

  • 筒井康隆の初期ショートショート集。未収録作品が多いが佳作揃いで筒井マニアならニヤリとする切れ味の鋭い短篇ばかりである。表題作「あるいは酒でいっぱいの海」はデイヴィッドスンの「あるいは牡蠣でいっぱいの海」のパロディだが、こちらも中々に秀逸で、水を酒に変える薬を開発してしまった男と起こってしまったアクシデントもさることながら、彼自身が酒になってしまうというオチの付け方も素晴らしく流れに一切の無駄がなく、短いながらも非常に心に残りやすいショートショートになっている。他にも興味深い短篇は多く、「トンネル現象」は遅刻ばかりする男の自室の押入れと会社のロッカーが繋がってしまったという奇想天外な短篇で、第三者の下世話な好奇心が現象を終わらせてしまうという流れが面白く、同僚の警告からトンネルが再び繋がった場所が夜空というのも面白く、男が落下したのかどうか分からない曖昧なオチがなんとも言えない味わいがある。「給水塔の幽霊」もオチはタイトル通りではあるのだが、幽霊という言葉の先入観がたやすくひっくり返される様が読んでて心地よい。個人的に一番のお気に入りは「底流」で、テレパシー能力を持つエリートが、引き継ぎの際に普通人の中年の男の悪意に晒されて嫌がらせを受けるという、言ってしまえばただそれだけの短篇なのだが、内容に非常にリアリティがあり、育ちの格差や学齢の格差など、属する階層による分断をあますところなく描き切っている。悪意を知らない環境で育ったことは謂わば恵まれている証であり、そんなエリートを引きずり落とす底辺の男の執念や底知れない醸成された悪意は一概には否定出来ない。最後、エリートが中年男が憎悪や殺意のためだけにあらかじめ仕事のことが思い浮かばないように苦心していたことを知り、その底知れない悪意や理解できない人間の存在に対して何も出来ず泣いてしまう様は後味の悪さがある。人間の嫉妬というのは馬鹿にできないぐらい恐ろしく、また誰が悪いわけでもないというのがこの短篇のミソだろう。最後の短篇である「睡魔のいる夏」は非常に綺麗にまとまった傑作短篇であり、新型爆弾が炸裂して穏やかに死んでいく人々が描かれている。それはさながら真夏の午睡のように穏やかな死であり、戦争の背景も理由も作中では一切描かれていない。市井の労働者の視点のみで、周囲への視座が隣人、そして最後に自分へと収束していく様がとても美しく、眠るように物語の幕は閉じる。タイトルと内容とオチが奇跡的な噛み合いを見せており、SF短篇でありながらどこか文学的な佇まいもある。どれも読み易く、筒井康隆らしい幻想的なSF短篇集である。

  • 表題作は錬金術的展開だった(忘れていた)。解説で、本書はNULLに発表された初期作品を含む短編集だと教えられ、その希少価値に充足感を感じる。30+1編というテンポの良い作品は、著者の才能に改めて驚嘆。自分も「佇む人」に魅せられて筒井ファンになったのだった。その意味で「睡魔のいる夏」は印象的だ。


  • あるいは酒でいっぱいの海
    陸族館
    フォーク・シンガー
    睡魔のいる夏
    底流
    ケンタウルスの殺人 解決篇

  • ブラック!!面白い作品たくさん。いちいち世界観すごくて引き込まれる。

  • 著者のブラック系にしては当時の時代背景も有るのか、やや抑え気味な印象も否めませんが、相変わらず独特のエッセンスを吹き込んでの大変おもしろく、良く練り上がったショートショート作品集となっております。 内容は様々ですので、飽きることなく読むことが出来るかと思います。 おすすめの一冊です。 

  • 表紙はいいけど、中身は記憶に残ってない

    引っ越しの際、この本を資源ゴミで出した翌日、近所の古本屋店頭に並んでいた。

    仕事はやすぎ!

  • 表題から始まり、地味な怖さと、地味な面白さが続く。
    ブラック要素は素晴らしい。
    でもショートショートなので、やはり当たり外れが大きく、すごく面白いものから退屈なもの、わけの分からないものまである。切なくなったりもする。
    よかった。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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