堕落論 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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レビュー : 64
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087520026

作品紹介・あらすじ

「日本は負け、そして武士道は亡びたが、堕落という真実の母胎によって始めて人間が誕生したのだ」生きよ、堕ちよ。堕ちること以外の中に人間を救う道はない、と説く「堕落論」。救われない孤独の中に、常に精神の自由を見出し、戦後の思想と文学のヒーローとなった著者の、代表的作品を収録。

感想・レビュー・書評

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  • おそらく、日本が負けた戦後、「これからどうしよう」という絶望に満ちた日本国民を想って坂口安吾が書いたエッセイではと思います。堕落というのは、僕たちがイメージする落ちぶれたという意味の堕落じゃなくて、「またやり直そうよ」という意味での堕落なんだと思います。もう少し言えば、今まで伝統的であった天皇制・武士道・耐乏の精神からの脱却です。まあ、全部そういうものを脱いで裸になって、もう一回新しい人間として生まれ変わろうよ、ということだと思います。今回の東日本大震災にも似たようなことを言える気が、しないでもないのではないでしょうか。

  • 評論から短編まで、けっこう盛りだくさんな内容です。
    どれをとっても痛快です。
    書かれた時期を考えてもすごいですね。

    日本文化の見方は目から鱗。

    太宰の話もおもろい。

    しばらくしてから、また読もう。
    5年後くらいかな…。

  • ううん。表紙これじゃないからちょっとくやしいなあ。
    集英社の前の表紙ですがな。

  • 旧表紙版。堕落論は色々な形で色々な本に収録されているけれど、作品バランスでは集英社文庫の作品の選び方が一番好き。
    「文学のふるさと」を読んだとき、自分が普段思っていることと当に被っていてとても嬉しかった記憶がある。今も一番好きな作品。
    アウトローで潔くて男前で、ちょっとキザで、そんな自分をコンチクショウとばかりに罵倒する、そんな姿勢がたまらなく格好良い。その反面、心の琴線の涙もろいところをふいにぎゅっと鷲掴む…そんな繊細さも隠し持っていて本当ににくいヒトだなあと思う。

  • あまり、長々と書かない方が しっかりレビューできそうなので、簡潔に。

    大雑把だけれども、見るとこ見てます。
    臆面もなく、おそらく言葉もあまり選ばず、言う。
    彼は 自身をさらけ出すことを厭わない。

    このおっさん、ロックです。

  •  何かに囚われてしまうということ、それを嬉々として受け入れて思考停止のまま踊っている人間、そういうものに対する嫌悪を本書からは強く感じる。終戦期に発表されるや一気に話題となったのは、読み手が戦時体制への批判を程よい羞恥心を伴って反芻できたからか。一方で、2009年に生きる自分の心にも安吾の言葉が響くのはなぜか。

     ここでいう堕落は、「いわゆる堕落」とは違う。制度や伝統や価値観、そういうものが生み出す茶番を示して、人間本来の姿への回帰を説く。その回帰が「堕落」と呼ばれるのなら、甘んじて堕落の道を行こうではないかと語りかけている。

      『生きよ堕ちよ、その正当な手順のほかに、真に人間を救い得る便利な近道がありうるだろうか』(本文抜粋)。人間存在を真摯に見つめていればこそ、かくも硬派な評論ができる。一見シニシズムに陥っているようだがそうではない。大きな愛に満ちているテクストだ。

  • 死にそうになったら再度読むかもしれない本の一つです。

  • 辛口だけど愛嬌があって 魅力的。。。
    古本なのに 新鮮

  • 「堕落は制度の母胎」「必要ならば、法隆寺をとりこわして停車場をつくるがいい。我が民族の光輝なる文化や伝統は、そのことによって決して亡びはしないのである。」「孤独は、人のふるさとだ。恋愛は、人生の花であります。いかに退屈であろうとも、このほかに花はない。」
    新鮮な言葉がありすぎて、読んでいて自分の価値観が大崩壊・再構築されていく感じがした。「桜の森の満開の下」目当てで購入したが、他の作品も読めて本当によかった。太宰のことも前よりも好きになった。

  • いいとこどりすぎる安吾の文庫本。
    多彩。安吾入門としてもおすすめ。

  • 「桜の森の満開の下」が収録されているのがポイント高い。「堕落論」は心が萎えた時に自分に喝を入れるために読みたくなる。

  • 堕ちるところまで堕ちたら、あとは上がるしかないっていう。でも堕ちきるにも覚悟が必要だと。
    中途半端な堕落がいちばんダメです。

  • 反常識、反社会規範のスタンスの炎上商法的な芸風は当時は珍しかったのかもしれないが、今となってはありきたりな感じもする。言っている内容も現代では常識的な内容になってしまったし。だから、現代ではあまり話題にならない作家であるのかもしれない。要するに、思想的には普遍性がなったという事なんだろう。
    ただし、エッセイは時代性といった要因により新鮮さが無くなったかもしれないが、小説である『桜の森の満開の下』は短編ながら読み応えがあり、物語の力を感じる部分はある。(『風博士』はよくわからんけど・・・)

  • これが知識人の教養なのだろうか。
    ただ文化に詳しいだけ与太者のエッセイという感じがした。

  • やはり時代を感じる。太宰の斜陽などと同じに、昭和3^40年代に風靡し、現代の若い読者には、その意図は伝わらないだろう。

  • ‹内容紹介より›
    「日本は負け、そして武士道は滅びたが、堕落という真実の母胎によって始めて人間が誕生したのだ」生きよ、堕ちよ。堕ちること以外の中に人間を救う道はない、と説く「堕落論」。救われない孤独の中に、常に精神の自由を見出し、戦後の思想と文学のヒーローとなった著者の、代表的作品を収録。

    ーーーー
    ☆4の評価は、『堕落論』と『続堕落論』に関してです。そして『日本文化私観』も参考になる作品でした。
    他の作品群については、「読みにくいなあ」という印象で、正直なところ、坂口安吾の作品が好きなのかどうか、と言われると迷いが残ります……。

    ただ、『堕落論』と『続堕落論』については、すごい作品だと読むたびに感じます。
    世間で広く言われているような「道徳的」な振る舞いや思想は、そもそも人間の本質から外れている、という安吾の主張には、ハッとさせられます。
    「農村の美徳は耐乏、忍苦の精神だという。乏しきに耐える精神などがなんで美徳であるものか。必要は発明の母という。乏しきに耐えず、不便に耐えず、必要を求めるところに発明が起こり、文化が起こり、進歩というものが行われてくるのである。日本の兵隊は耐乏の兵隊で、便利の機械は渇望されず、肉体の酷使耐乏が謳歌せられて、兵器は発達せず、根柢的に作戦の基礎が欠けてしまって、今日の無残きわまる大敗北となっている。」
    天皇制についても、国民も支配者も"システム"としての天皇制を知りながらそれに進んで騙されていた、と喝破します。
    「自分自らを神と称し絶対の尊厳を人民に要求することは不可能だ。だが、自分が天皇にぬかずくことによって天皇を神たらしめ、それを人民に押し付けることは可能なのである。そこで彼ら(歴史上の支配者たち)は天皇の擁立を自分勝手にやりながら、天皇の前にぬかずき、自分がぬかずくことによって天皇の尊厳を人民に強要し、その尊厳を利用して号令していた。」

    そして安吾の求める"堕落"とは、
    「人間の、人性の正しい姿とは何ぞや。欲するところ素直に欲し、厭な物を厭だと言う、要はただそれだけのことだ。好きなものを好きという、好きな女を好きだという、大義名分だの、府議はご法度だの、義理人情というニセの着物をぬぎさり、赤裸々な心になろう、この赤裸々な姿を突き止めみつめることがまず人間の復活の第一の条件だ。そこから自分と、そして人性の、真実の誕生と、その歴史が始められる。」
    ということでした。

    おためごかしや建前、メンツなどにこだわらず、自身の欲求に素直に生きることが大切だ、という安吾の主張は、今の社会でも十分に通用するものではないでしょうか。

  • 安吾の随筆は韜晦的というか、安吾が裡に持っているであろうものをこれぞとすぐ曝け出してくれないもどかしさを感じる。これだけ饒舌に語ってくれているのにそう感じるのは、私の理解力が乏しいのと、「〜は、〜だ。」という断定ではなく「〜は、〜ではない。」という否定の印象が強いせいだと思うけど。
    何か私個人にとってもとても大事なことを言ってくれている気はする。ただどうも杳として掴めない。くやしい。いつかまた安吾に戻る時にはもう少し確かな感触を得たい。

  • 敗戦によって、近代日本の茶番劇だったことは暴露されたが
    それだからといって卑屈になることはない
    背を向けるにせよ、居直るにせよ
    誰もが地に足をつけて生きる必要にかられている
    その真摯さを堕落と呼ぶならそれもいいだろう
    ならば我らは生きるために堕ちるべきなのだ
    といったような
    茶番をなつかしむ感情と否定する感情の錯綜するうちに
    混乱の中で編まれたエッセイ・短編小説集

    「桜の森の満開の下」
    美は崩壊する茶番劇にほかならない
    それにとりつかれ、翻弄されて、茫然自失の男を描いた本作は
    決戦を避けて生き延びた日本男児たちの戯画である
    現実がそんな美しいものではなかったにせよ
    太宰の「桜桃」と並べ、戦後無頼派の代表作と呼ぶにふさわしい

  • 久保帯人先生作画版の表紙のを購入。
    小説…?かと思いきや、タイトルのとおり、随筆でしたね。
    現代文学って、文章がかたくて読みにくいイメージだったのですが、安吾の文章はとても読みやすくて、現代文学に対するイメージを払拭される思いでした。
    堕落論は、すごく共感する思考で、自分の中にあるものに言葉を与えてくれる本だなあと思いました。

  • 2回目の読了。初めて読んだとき、
    「私は坂口安吾の文章は、なんだかきらいだ」
    と感じたのだが、数年ぶりに読んで、前回とはまた違う感想。

    堕落論・・・悪くないかも。

    それが、内的要因なのか外的要因なのかは分からないけれども。
    私が文学に対して冷めたからなのか、
    安保法案が問題になっているご時世だからなのか・・・
    そして安吾の文章は、太宰治に通づるところがあるし、その内容は会田誠に通づるところもあるなあと。
    (太宰治のことを、フツカヨイ的だと言っていたのはなるほどと思った)

    坂口安吾のいう「堕ちる」とは、「存在する」ということなのかなあと思った。

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著者プロフィール

1906年、新潟生まれ。評論家、小説家。おもな著作に『風博士』『堕落論』『白痴』など。1955年没。

「2019年 『復員殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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