夏の葬列 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 675
感想 : 82
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087520149

作品紹介・あらすじ

太平洋戦争末期の夏の日、海岸の小さな町が空襲された。あわてて逃げる少年をかばった少女は、銃撃されてしまう。少年は成長し、再びその思い出の地を訪れるが…。人生の残酷さと悲しさを鋭く描いた表題作ほか、代表的ショート・ショートと中篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 本書はショートショート。
    タイトルから惹かれ『夏の葬列』のみ青空文庫にて読了。

    何か心響くものではなかった。
    自分のことで精一杯で、罪の意識すら美化する始末か。
    それも仕方ない。

    以下ネタバレ有り。(備忘録)

    戦時中のある夏の日、少年と少女が遊んでいると、誰かの葬式に出くわす。子供は葬式でお饅頭がもらえると少女は言う。二人は駆けっこで葬式会場に走る。その時、艦載機が現れる。白いワンピースを着た少女は、地面に伏せて怯える少年を起こし、一緒に防空壕へ逃げようと言う。しかし、白いワンピースが目立って、機銃の標的にされてしまうと、少年は少女を突き飛ばす。彼女は撃たれてしまった。大人に運ばれていった。それから少年と少女は顔を合わすことがなかった。

    時を経て、久しぶりに街に帰ってきた青年は、葬列を目撃し、あの日を思い出す。棺の上にあった写真を目にする。それは彼女であった。彼は歓喜した。当時、自分は彼女を殺していなかった。不謹慎であるが、彼は救われた。自分が人殺しをしていなかったことに安堵した。
    しかし、葬列に参加していた子供から真実を知らされる。この葬式は彼女の母親のものであった。少女が亡くなってから、気が違ってしまい、母親の若いころの写真しか残っていなかったそうだ。

    青年は何を思うか。罪の意識から逃れる術は無くなった。

    読了。

  • どんな人間にも、その人なりの苦労や、正義がある。その人だけの生き甲斐ってやつがある。そいつは、他の人間には、絶対にわかりっこないんだ

  • 0041.山川方夫『待っている女』2017/1/6読了
    0044.山川方夫『お守り』2017/1/9読了

    「夏の葬列」より

    収録作品
    ①夏の葬列
    ②待っている女
    ③お守り
    ④十三年
    ⑤朝のヨット
    ⑥他人の夏
    ⑦一人ぼっちのプレゼント
    ⑧煙突
    ⑨海岸公園

  • 山川方夫という作家が好きで
    夏の度に書棚から本を探し出す
    という作業を
    もう20年近く繰り返している。

    表題は、ひどく残酷で、重い、
    夏のある記憶。
    だが、
    ねっとりとした暑さと、
    喉を鳴らしたくなる饅頭の甘さ、
    重すぎる青空、
    むんと鼻を刺す芋の葉の匂い、
    破裂する戦闘機の音…
    そんな五感と共に
    やけに清々しいような印象で
    思い出すから不思議だ。
    そして、毎年、読み返す度に
    読後感が微妙に異なる。

    ちなみに今年は、
    決して免れることのない、
    免れてはいけない、
    一生背負うべき記憶があることを
    受け止める主人公に
    思いのほかシンパシーを感じた。

  • ぜんぜん大したことない。
    いくらショートショートとはいえ、「空襲のときに自分が突き飛ばした娘は死んではいなかった 自分は人殺しじゃない! と思ったらやっぱり娘は死んでましたー 写真は娘のお母さんでしたー」
    なんてのはあまりにお粗末。こんな風に死をもてあそぶのはおよそ作家の感性ではないと感じる。

    それに「彼」とか「彼女」という都合のいい三人称の使い方にも違和感。内省ばかりでほとんど一人称じゃん。と思いきや急に「彼女」視点に切り替わるのはもうやめてくれよと思う。

    「他人の夏」で、自殺しかけていた女性をあらかじめ偶然知っていて、しかもその女性が「今日真赤なスポーツ・カー」に乗ってきた、「いきをのむほど美しい若い女」だった時には思わずFuckしかけた。

    後二作はもう、「ハイハイ私小説私小説」という感じでなんらの感慨を得ない。自我の形成期における自己の苦悩や内省の云々なんてのは、もうちっともおもしろくない。
    「きわめて地味で平凡な作家」そのとおり。

  • 英語 だと、Funeral Procession in the Summer by Yamakawa Masao でしょうか。

    再び手にとって 
    『夏の葬列』 はもちろんですが、
    『待っている女』
    『十三年』
    の世界観も好き。

  • 2021.6.9読了。

    私にとって、横光利一の「蠅」、梅崎春生の「猫の話」と並んで、国語の教科書に掲載されていた小説の中で、初読の衝撃の強さから、年を経ても鮮明に記憶に残り続けている作品として「夏の葬列」があるのだが、本書はそのトラウマを植え付けた著者による作品集である。

    山川氏のことは、この作品を除けば全く無知だった。授業では扱われたのだろうが全く記憶になかった。

    だから、山川氏が第五次三田文学復刊に際し編集として辣腕を振るっていたことも、直木賞にも芥川賞にも候補として挙がったことも、そして受賞はしてないことも、結婚して1年と経たぬうちに交通事故で34歳にして急逝したことも、本書の解説で知った。

    昔受けた衝撃を懐かしく思い出し、確かめてみたくて手に取った。話の筋はなんとなく覚えていたが、わかっていてもやはり衝撃だった。昔より歳をとった分、余程リアルに胃の辺りや背や肩に、ずんと重みを感じた。

    その他含め、収録されている作品は全9作。

    夏の葬列
    待っている女
    お守り
    十三年
    朝のヨット
    他人の夏
    一人ぼっちのプレゼント
    煙突
    海岸公園

    「一人ぼっちの‥」まではショートショート、残り2作は中編。
    作者自身の時代背景やテーマを含め、思いの外楽しめた。

  • 戦争文学ではない。
    戦争をしてはいけない理由なんて彼は書いていない。戦争がだめだなんて彼は書いていない。
    彼の苦悩の源泉はもっと別なるところにあって、しかしそれは誰も知り得ないのである。

  • 教科書に載ってたのを改めて読んでみたくなった。
    読んで良かった。

    作品全体を通して感じる底暗さが非常に印象的だった。特に、ショートショートは話しの転換というか、どんでん返しが絶妙で、ゾッとする感じが心地よかった。

    「夏の葬列」「お守り」「十三年」「朝のヨット」がお気に入り。

  • 収録内容は以下の通り。

    夏の葬列(昭和37年8月 発表)
    待っている女(昭和37年2月 発表)
    お守り(昭和35年4月 発表)
    十三年(昭和35年2月 発表)
    朝のヨット(昭和38年 発表)
    他人の夏(昭和38年8月 発表)
    一人ぼっちのプレゼント(昭和38年 発表)
    煙突(昭和29年 発表、昭和39年 改作)
    海岸公園(昭和36年 発表)
    小田切進: 語注
    山崎行太郎: 解説 -陽気な絶望者-
    川本三郎: 鑑賞 -一瞬の日のかげり-
    山崎行太郎: 年譜

    闘う意志を持つことができず、中途半端な"絶望"を抱きながら日々を生きていく様子が自分と重なり、非常な共感を持って読んだ。

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著者プロフィール

1930年、日本画家山川秀峰の長男として東京に生まれる。慶應義塾大学大学院文学研究科仏文専攻中退。1954年第3次「三田文学」創刊。創作活動も始め、芥川賞候補4回、直木賞候補1回となるが、受賞に至らず。1965年2月20日交通事故のため逝去。享年34。主な著書に『海岸公園』『親しい友人たち』『愛のごとく』『山川方夫全集』などがある。

「2015年 『展望台のある島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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