風立ちぬ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087520156

感想・レビュー・書評

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  • 代表作「風立ちぬ」のほか3編が収められている。
    「風立ちぬ」については、定義はともかく、これが純文学なんだなと思う。ピュアで、美しく、切ない。余命いくばくもない妻をあんなにも愛せるものか…。

  • 3度目です。
    前回は角川文庫、前々回は新潮文庫、そして今回集英社文庫で読んでみたが、氷室冴子氏の解説が良かった。
    氷室さんも私と同じ中学生の頃この本を最初に手にして嵌ってしまったんだとか。私は読んではみたもののちんぷんかんぷん。中学生で堀辰雄を理解出来る感性に軽く嫉妬を覚える。

    言葉遣いがとても綺麗で、お互いを合う労わり合う二人の姿がいじらしい。
    一歩一歩死に近づいて行く彼女とそれを見守る恋人、辛くないはずはないのだけれど…二人だけの事を考えて、二人だけで生きる。実は少し贅沢な事なんじゃないかな…なんて思えた。

  • サウンド文学館・パルナス 小説1(日本文学)「風立ちぬ(第三章「風立ちぬ」のみ収録)」 朗読:金内吉男

    なるほど、こういうのがサナトリウム文学っていうのか。「マルテの手記」もサナトリウム文学だっけ?療養先でのお話だった気がする。よし読もう。

    今に集中しようにも心が千々にちぎれてどうすることもできない。これは時代や場所を越えた悲しみだ。

    「僕たちほど幸せな二人はほかにいない」
    ヴァージニア・ウルフも遺書の中で同じ言葉を遺していたな。

  • 「風立ちぬ」の二人は、一見具体的な「生きがい」を明示しないまま、サナトリウムでの日々を過ごしていたように見えるが、よく読みこむと、具体的な何かでなく、二人で他者の介入のない、心を通い合わせる濃密な時間を、静で豊かな自然環境の中で最後の刻まで過ごしたということは、精神性において最高の「死の創り方」ではなかったろうか。

  • 「風立ちぬ」と他三篇を収録。「風立ちぬ」が収録されたものは他にも105円で売っていたけど、これを選んだのは「曠野」が載っていたから。あと、色々おまけ的なものも附いてます。"Le vent se l?ve, il faut tenter de vivre."を、堀辰雄はこう訳した。「風立ちぬ、いざ生きめやも」「やも」って何だ? 辞書を引くと詠嘆または反語、疑問の助詞で、上代語って書いてある。なんでそんな古い言葉わざわざ使うんだ・・・ 辞書を引いてもいまいちよく分からなかったので、春休みに入って初めてのフランス語の勉強をしてみることに。その結果出来上がった僕の訳文は、「風が立つ、生きてみなければ」。なんのこっちゃという感じですが、忠実に訳したつもりです。前半はフランス語だと現在形なのに、「ぬ」は完了だったりするけど、やっぱり「風立ちぬ」だとなんかしっくりくるような。元々詩の一節なので、韻を踏むために「やも」を使ったりしたのかも。感想は、誰でも引用しそうな所だけど、「皆がもう行き止まりだと思っているところから始まっているようなこの生の愉しさ」。確かに、死の影が付きまといながらも、なるべく普通に、平穏に生活しようとしていて、それで満足していたような感じでした。それで良いのかな、とも思うのですが、良いのでしょう。「曠野」は芥川龍之介の真似みたいのだけど、ちょっと違う感じ。「曠野」のことは確か阿刀田高のエッセイで知って、その元になった話は昔から有名だったのかは知らないけど、予備校の古文の授業でもやった。他に「窓」、「麦藁帽子」収録。鑑賞・年譜は 池内輝雄。解説は氷室冴子。松岡正剛には「風立ちぬ」関する奇妙な思い出が。http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0641.html

  • 病を患った婚約者とのラブストーリー。幸福とは何なのか。サナトリウムで婚約者に付き添いながら、幸福と感じ、また幸福とは…と考えている主人公。時代のせいか共感は得られなかった。宮崎駿監督の「風立ちぬ」は作者堀辰雄と実在した堀越二郎とを混ぜて、ひとりの主人公に仕立てているらしいので、そちらも観てみたいと思いました。

  • 死と生について描かれた名著。

  • 収録内容は以下の通り。

    窓(昭和5年10月 発表)
    麦藁帽子(昭和7年9月 発表)
    風立ちぬ(昭和11年12月~昭和13年3月 発表)
    曠野(昭和16年12月 発表)
    小田切進: 語注
    池内輝雄: 解説「内部へ、そして内部から」
    氷室冴子: 鑑賞「生きようとする祈り」
    池内輝雄: 年譜

    「窓」では、A氏の絵画を直接目にする事ができない読者と作中のO夫人が重ねて捉えられいて、特異な読後感がある。

    カバーイラストは本くに子。

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著者プロフィール

東京生まれ。第一高等学校時代、生涯親交の深かった神西清(ロシア文学者・小説家)と出会う。このころ、ツルゲーネフやハウプトマンの小説や戯曲、ショーペンハウアー、ニーチェなどの哲学書に接する。1923年、19歳のころに荻原朔太郎『青猫』を耽読し、大きな影響を受ける。同時期に室生犀星を知り、犀星の紹介で師・芥川龍之介と出会う。以後、軽井沢にいた芥川を訪ね、芥川の死後も度々軽井沢へ赴く。
1925年、東京帝国大学へ入学。田端にいた萩原朔太郎を訪問。翌年に中野重治、窪川鶴次郎らと雑誌『驢馬』を創刊。同誌に堀はアポリネールやコクトーの詩を訳して掲載し、自作の小品を発表。1927年に芥川が自殺し、翌年には自身も肋膜炎を患い、生死の境をさまよう。1930年、最初の作品集『不器用な天使』を改造社より刊行。同年「聖家族」を「改造」に発表。その後は病を患い入院と静養をくり返しながらも、「美しい村」「風立ちぬ」「菜穂子」と数々の名作をうみだす。その間、詩人・立原道造との出会い、また加藤多恵との結婚があった。1940年、前年に死去した立原が戯れに編んだ『堀辰雄詩集』を山本書店よりそのまま刊行し、墓前に捧げる。1953年、春先より喀血が続き、5月28日逝去。

「2022年 『木の十字架』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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