車輪の下 (集英社文庫)

制作 : 井上 正蔵 
  • 集英社
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本棚登録 : 812
レビュー : 84
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087520217

感想・レビュー・書評

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  • この小説は愉快でも無ければ感動するものでもないだろう。
    周囲や近所の大人たちによって神童と呼ばれた彼の感じやすい精神が無責任な期待の積み重ねに屈し、青春の姿の断片を人生の全てと思えてしまう景色にのめり込み、社会に潰されてしまう物語。

    本来の読み方であれば、突き詰める問題やテーマは「教育制度のあり方」や「拘束からの開放、または脱走」だと思う。しかし、自分の場合は、神学校に入学してからの主人公ハンスと真逆の性格をしている少年ハイルナーとの出会いとふれあいによって育まれた友情とも愛情とも形容出来ない関係について焦点を当ててもいいと思った。
    ハンスが持った学校内の環境に対しての意識、自分が勉強すべき理由、などに対する疑問は、どちらも少年ハイルナーと関わるようになってからだ。これはある意味、考えること、生きることに気付かされた、悟らされたと言ってもいいのではないだろうか? 過去にハンスはよく釣りをしていたり、悪童とつるんだりして過ごしていた。この頃のハンスは人間らしく感じられた。しかし本書の序章のハンスはまるで自意識が無いように思えた。それは常に勉強・試験と彼の意識はそれだけであったからだ。実際試験が終われば趣味の釣りをするワケだけれど、しかし間もなくして勉強に再び取り組む。確かに「教育制度のあり方」について疑問を持ってしまうのもわかる。話しを戻して、ハイルナーと関わった後のハンスは、みるみると行動が変わっていく。学校を出て、実家に帰り、恋をして、働き、友人と飲み歩く。これらは根本からではないにしろ、ハンスの意思で選び取った行動だ。そして最後の結果も…。
    だからこそ、この物語は大半の人にとっては悲しい物語に見える―ー実際そうだと思う。それでも自分は(高校を出て働いてる身だからかもしれないが)、ハンス自身が選んだ結果をそのままに実行しているのだから、たとえそれが逃避だったとしても、本人にとっては幸せだったのではないだろうか、と思わずにはいられない。

  • 多感な青春時代に挫折と脱落という、にがく苦しく恥ずかしい思いを味わった内気な少年の物語。周囲の期待に応えようとする姿勢や、第二の人生でも見せた好奇心などから、まだ「自分」を確立する前の素直であやうい人物像が見えてくる。小説全体を通して「僕の人生なんだったんだ」という被害者的なにおいは確かにあるし、教育者への反発あるいは教育のあり方を問うているように感じられなくもないが、やはり主体は主人公である少年であり、容易に動かしがたい壁を乗り越える方法も壊す方法も見いだせなかった未熟な己からの離脱願望がああいう形となって表れたのではないかと思う。それにしても少年たちの描写の魅力的なこと……文章も読みやすくよどみないが、ヨーロッパの雰囲気をぶち壊す「骨皮筋衛門」などの言葉には脱力感が……(苦笑)。

  •  小さい時にエリートの男の子話なんだろうなあ~自分もそうなりたいな~と思いながら読みましたが、途中で断念(笑)ただ、ラストだけ見てすごくびっくりしたのを覚えています。
     そして、4年後。かなり見方が変わりました。
     ハンスの結末を知ってしまったからこそ、序盤も読むのが苦しかったです。本当の幸せなんて本人次第だけど、自分はそういうものを掴みたいな~とか・・・また何年か後で再び読みたいです。

  • 非常に読みやすかったです。
    言葉がすごくきれいで情景を思い浮かべながら、
    どんどん読み進めることができた。

    青春ってなんだろうとおもう。
    そして青春って必要なんだと思う。
    神経症になったとき、
    ハンスの名誉とは何だったのだろうかと思った。
    ハンスにとっての名誉はただ、外的名誉であり、
    誰かに褒められ認められることであった。
    彼は自分で内的名誉を得ることができなかったのだろうと思う。

    靴屋はそれを知っていたんだ。

  • ストーリーはすっと面白い。
    解説分厚い。
    鑑賞、面白くない自分語りと主人公たちに自分を重ねてジェラシーとか言ってるところがイラっとさせる。(私だけ?)

  • 勉強しかできない(しかも本当の天才と比べれば全然大したことない)陰キャが秀才軍団の集まりで鬱になり、地元に帰り、童貞だから女の扱い方も分からず、地元の陽キャに憧れイキったら酒で酔っ払って死んだ話。

    テーマは色々あるんだろうけどこのストーリーにまとめただけで悲しくなった。ありうる。

  • 明るくはない話。
    どうなっていくんだろうと思ったら、ふいの結末。途中、たくさん勉強したのにうまくいかなかったり、だめだ〜と思ったらすごくいい成績だったり、学生時代の喜怒哀楽が懐かしくもあり。

  • 主人公に共感しながら一気に読んでしまった。
    私は主人公ほど真面目ではないからあのような結末にはならなかったが、勉強ばかりでやりたいことも見つからず悩んでいた学生時代の自分と主人公の姿が重なる。学問も大事だが、親は子供の感受性を大事にしてほしい。

  •  多感な少年が厳然たる体系を持った教育制度に押しつぶされる物語。タイトルの車輪とは、教育制度の比喩であることをわざわざ言うのは野暮であろう。

     毎日夜中まで勉強し、友だちから引き離され、釣りや散歩を禁じられた少年。試験が終わり、当然与えられるべき休みすら許してもらえなかった。彼は根本から優しいのだ。父親や数人の教師のくだらない名誉心を満たし、彼らを喜ばせなければと自分を追い詰めてしまうほどに。そして、悲しいほどに感じやすかった。周囲の期待に応えられない自分に存在価値を見出せなくなるほどに。
     時代も国も違う物語なのに、少年の気持ちを想像しやすく、すんなり自分の中に入ってきた。「期待」が人を簡単に壊してしまうことを改めて認識できた一冊。

  • 読み比べて井上訳を購入。精彩な自然描写が趣を深めるこの物語は、小さな町で育った秀才の少年が、牧師への道を約束された神学校に優秀な成績で入学するも、心と体のバランスを崩して退学し、休養中に失恋も経て、鍛冶職人への道を歩み始めるも、休日に仲間と飲み過ぎて川に流された、という話。勤勉な彼は思春期を迎え、ありありと敏感過ぎる程に感じられ始めた生と、空疎な机上の学問とに引き裂かれてしまった。再生を試みるも、繰り返しの日々が待ち受ける未来展望に絶望し死に至ったのだと解釈した。賞味期限を過ぎてしまうと味わえない、もしくは味気なくなる経験が人生にはある。私の人生には忘れ物が多いかもしれない。だからこそ、今を大切に生きたいと思った。

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著者プロフィール

ヘルマン・ヘッセ(Hermann Hesse)
1877~1962年。ドイツ、バーデンヴュルテンベルク州生まれ。詩人、作家。1946年ノーベル文学賞受賞。代表作に『青春彷徨』(『郷愁』)『車輪の下』『デーミアン』『シッダールタ』『荒野の狼』『ガラス玉遊戯』などがある。

「2019年 『文庫 愛することができる人は幸せだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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