河童 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.52
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本棚登録 : 417
レビュー : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087520279

作品紹介・あらすじ

その患者23号の語る河童社会は醜悪な制度と奇怪な価値観に満ちていた-。精神を病んだ芥川が痛切な自虐で描い人間社会の戯曲「河童」。半透明な歯車の群れにおびやかされる不安幻想「歯車」。早熟な知性を持ち35歳で死を選んだ芥川の晩年の作品には不思議な美しさが漂っている。遺書「或旧友へ送る手記」を含め6編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 全8編。

    私がこの本を買ったのは『或旧友へ送る手紙』を読みたかったから。この中で芥川は自殺の理由について「将来に対するぼんやりとした不安」と語っている。

    この描写を読んだときビビっときた。こういってはおこがましいけれど、芥川という文豪にシンパシーを感じたし、とても身近に感じた。

    人が自殺すると、周りの人は「○○が原因だ」って、なにかしら理由を欲しがるけど、実際はこれって理由はないんだと思う。色んな悩みが降り積もって、それがいつも頭の中を悶々としてて、最後に何かちょっとした引き金になることが起こって人は死を選ぶんじゃないかな。

    芥川龍之介って、すごく感受性が豊かで、ある意味で純粋で、純粋すぎて不純なものばかりの人世に耐えられずに、最終的に死を選ばざるを得なかったんじゃないかなぁ?彼は死ぬことより生きることの方がつらかったのかもね。

    『桃太郎』『河童』なんか読むと、厭世的っていうか、人間の汚さにたいする嫌悪感が読み取れる。

    『歯車』『或阿保の一生』読むと、精神をどんどん蝕まれてくる様子が手に取るようにわかる。不眠症。幻聴。幻覚。生きることに無気力になっていく。

    こんな文豪がなぜ夭逝せねばならなかったのかと嘆きたくもなるけれど、これほどまでに精神をやられてしまうほど、神経質であり、純粋であったからこそ、素晴らしい作品が残せたわけで・・・考え出すと堂堂巡り。

  • 桃太郎、雛、点鬼簿、蜃気楼、河童、歯車、或阿呆の一生、或旧友に送る手記8編。
    芥川後期の作品ですが、なんて憂鬱なんだろうというのがまずの感想。
    けれど文章構成力とその感性の鋭さはさすがとしか。なげやりささえ思わせる作品の数々です。自伝半分、創作半分。

  • サンドイッチに絶句。河童の合理主義に脱帽

  • 不思議な世界だった。特に表題作の河童は、価値観が面白い。
    2017/12/1

  • 語り手である「僕」が、ある日河童の世界へと紛れ込み生活を共にしながら、河童の習性をおもしろおかしく描く……
    ような生易しいファンタジー小説ではまったくない。厭世観を持ち、時代の移り変わりに順応できずに精神を病んでいた著者が書くだけに、社会への(一方的な)失望と人間生活の生き辛さが語られている。
    すさまじく「鬱」、だ。

    河童の世界も人間の世界と文明や技術といった面では大差なく、文化的な生活を送っている。
    ただひとつ決定的に異なるのは、価値観が180度異なるということ。人間が尊ぶ「正義」も河童からすれば蔑みの対象でしかない。
    「僕」がどんなに人間世界の論理を持ち込もうとも、河童の世界では通用しない。
    架空の存在とされている河童に人間が笑われる。いかにも皮肉である。
    写し鏡のような河童社会での「僕」の生活体験に、この世の不条理さを感じさせられる。

    狂気じみた「歯車」は、まさに命を削って書かれる鬼気迫るものとなっている。
    死の代替として手に入れた破滅の美しさが、読み手を侵食しながら押し寄せる。
    花がもっとも美しいのは散り際か…。

    なかなかにヘヴィな内容なのだが、余韻として残るものは悪くない。

  • 逃避。そして死。
    ぼんやりした不安からの逃避。それが死だったのか。
    何もかもが暗く、濁っている。

    私はもう彼より年上です。
    ここまで生きてしまった。

  • 【状態】
    展示中

    【内容紹介】
    その患者23号の語る河童社会は醜悪な制度と奇怪な価値観に満ちていた―。精神を病んだ芥川が痛切な自虐で描い人間社会の戯曲「河童」。半透明な歯車の群れにおびやかされる不安幻想「歯車」。早熟な知性を持ち35歳で死を選んだ芥川の晩年の作品には不思議な美しさが漂っている。遺書「或旧友へ送る手記」を含め6編を収録。

    【キーワード】
    文庫・芥川龍之介・名作・短編集・遺書

  • 改めて芥川天才やなー。
    ただし、生きる気力的なものに雲がかかることは本人の結末からも避けられないと予想できるだろうからカタルシス以外の目的では有用になり得ない。

  • 海外旅行中の鉄道で現地の人にガン見されながら読みました。

    『河童』も面白かったんだけど、『歯車』の最後の一文が特に印象に残っている。あれほど色んな感情が同時に沸き上がる文ってなかなかないよ

  • 風刺があって、河童たちはなんだか滑稽でした。しかしあんなに盛大な河童の世界を見せられて、最後にあのように来ると、何て言うんでしょうか…こう、拍子抜けしちゃう所もありますね。そこが面白かったりしたんですけれど。

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著者プロフィール

小説家(1892-1927)。東京帝国大学文科大学英文学科卒業。創作に励むかたわら、大阪毎日新聞社入社。「鼻」「蜘蛛の糸」など数多くの短編小説の傑作を残した。1927年、服毒自殺。

「2019年 『羅生門・鼻・蜘蛛の糸 芥川龍之介短編集 Rashomon, The Nose, The Spider Thread and Other Stories』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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