燃える男 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087603750

感想・レビュー・書評

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  • 翻訳というのが引っかかった良著。
    流れ、構成、すごく良いが、もう少しのところで翻訳という変換作業が壁を作っているような気がした。

  • 主人公・クリーシィは、元外人部隊の傭兵で、50歳目前に引退したものの人生の目的を見失い、酒に溺れる毎日だった。
    それを心配した元同僚のグィドーが、実業家の娘ピンタのボディガードとして雇われるように伝手をたどって根回しした。
    しかしクリーシィは最低限の人付き合いしかせず、自分の殻に閉じこもったままだった。

    前半、クリーシィが自分の殻に閉じこもっているうちは、話も進まず、主人公の魅力もほとんどない。
    その代わり語られるグィドーの半生(コソ泥からマフィアの一員、その後外人部隊に入隊し、現在はペンションのオーナー兼シェフ)が面白くて、こちらが主人公でいいとまで思った。

    が、11歳の少女ピンタが、純粋な子どもの好奇心を持って、少しずつ戦略的にクリーシィに近づいて行ったところから徐々にクリーシィが変わってくる。
    全てを排除するのではなく、全てを驚きと喜びをもって受け入れるピンタの心に、頑ななクリーシィの心がほどけてきた。

    ピンタの母は猛烈な美貌を誇り、それゆえに見栄っ張りであり、負けず嫌いである。
    そして娘をとても愛している。
    ピンタの父は実業家であるが、経済状態は必ずしもいいとは言えない。
    常識的に考えて今の経済状態では娘が誘拐されるとは思えないのだが、妻がボディガードを雇うと言い張れば反対はしない。(ただし値切る)
    娘も可愛いが、あくまでも妻の付属物と考えている節がある。

    というわけであまり両親にかまってもらえないピンタと、グィドー以外に友達のいないクリーシィの間に生まれた友情がほほえましくて、読んでいてもちょっと幸せな気分になっていたのに、突然の暗転。
    ピンタが誘拐され、凌辱されたあげく死体となって発見される。
    この事件の際に、クリーシィも命に係わるようなけがを負うのだけれど。

    後半はクリーシィの復讐譚。
    グィドーの亡妻の実家があるマルタで鍛錬をしているクリーシィに愛する女性ができた。
    しかし彼は最初に彼の心を再び生かしてくれたピンタのために、一人復讐の道を歩き出す。

    少しテンポがゆっくりかもしれない。
    けれどその分、丁寧にクリーシィの内面が描写されていて、クリーシィの苦しみや怒りが存分に伝わってくる。
    陰惨な事件ではあるけれど、その辺はさらりと書かれているので、グロテスクな描写が苦手な人も多少は読みやすいかも。
    で、陰惨な事件のなかで、私が一番腹が立ったのは、ピンタの誘拐のからくり。
    これだけは絶対に許すことができない。

  • 元傭兵であったクリーシィを主人公とした『クリーシィ・シリーズ』の第一作である。
    映画「マイ・ボディガード」は観てないが、ポスターのダコタ・ファニングが愛らしいので、印象に残っていた。本屋で、文庫本の表紙を飾るデンゼル・ワシントンとダコタを目にした途端、どうしても読みたくなって購入。

    生きる意欲を失った男が、美しく聡明な少女との関わりの中で、生きる喜びと希望を取り戻していく前半。
    そして、少女を誘拐した一味との壮絶な闘いを描く後半。
    特に、後半部分は、息つく暇もなく一気に読ませる展開となっている。
    だが私は、前半部分、少女との日常のやり取りを通じて、少しずつ人に対する愛を取り戻していく主人公の姿が好きだ。
    そして「なんて魅力的な少女なのだろう」と、読者である私自身もまた、少女をいとおしく感じ始めていることに気づく。これこそ、作者の思う壷なのだが、進んでそのワナにはまってしまう。
    多くを語らないクリーシィの心情と一体となり、喜びや悲しみを共有し、何が善で何が悪であるのか、彼の視点で世界を見ることができるのだ。

    ミリタリーファン&武器オタクにはたまらん一冊ではある。

    追記:Amazonのカスタマーレビューは思いっきりネタバレなので、本気で読もうと思っている方は見ないこと。私は衝動買いだったから、Amazonチェックしなくてヨカッタ。

  • 久々に読んだがやっぱり面白い。
    クライマックスに行く前にたっぷりと前置きがあるので
    とっても感情移入しやすい。しかも、前置きがどちらかというと心理的な描写の方が多いので、クライマックスのアクションとのメリハリがばっちり。

    熱い男の生き様。
    カッコ良い。

  • その年のイタリアは、各地で組織的な誘拐事件が頻発していた。
    かつて傭兵として名を馳せたクリーシィは、11歳の愛娘ピンタの身を案じたミラノの実業家により、ボディガードとして雇われる。闘いに疲れ、生きる意欲を失っていたクリーシィは、少女を守る仕事を続けるうちに心が癒され自分を取り戻すが、ある日、突然、目の前でピンタを何者かにさらわれてしまう。クリーシィの苦しみを全部理解できるとは思いませんが、生きる意欲失っていた彼が、ピンタのボディーガードを努めるうちに癒されて自分らしさを取り戻してゆく過程に、思わず涙が出ました。
    そんな彼女(ピンタ)が目の前で誘拐され、凌辱されたうえに死んだと聞かされたら、クリーシィの行動も当然もことと思います。
    (だからといって、イタリアのほとんどのマフィアを殲滅するのはさすが!)

    ピンタとクリーシィの関係もそうですが、クリーシィの旧友であるグィドーや弟、そしてサッタ大佐たちとの今後の関係がまた魅力的で、「クリーシィ、頑張れ!」と全力で応援してました。
    映画『マイ・ボディーガード』原作

  • 映画のマイボディガードの原作
    トニースコット独特の映像とデンゼルワシントンの好演もあり映画もいい出来ではあるが、原作のほうが面白い
    まあ、三部構成のこの話を映画にまとめるには少なくとも二部作にするしかないだろうからそれは仕方ないだろうが
    ネタバレになるが主人公がボディガードする少女ピンタは映画版では生き残り、原作では惨たらしく死ぬ
    だが、少女が死ぬ原作のほうが明るい雰囲気が強いんだよね
    クリィーシーが少女の復讐をするためリハビリをする土地ゴッツオに出てくる住人たちの明るさや美味そうな料理の数々
    復讐の機会を狙い再起するための期間は陰鬱に語られるのではなく明るく個性的な住人たちとの触れ合いの中で語られこれだけでもひとつの小説として読めてしまう

  • デンゼル・ワシントン主演で映画化された“マイ・ボディガード”の原作本です。映画も面白いですが、この本も秀作です。

  • 面白い
    クリーシィー、グィドー

  • 友人の強い強い勧めで購入。
    凄く楽しみ。
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    通勤の行きかえりの一週間で読み終えた。
    どうなる、どうなるであっという間だった。

    元傭兵クリーシィの復讐劇。

    ハードボイルドな冒険小説と評されているが、実は人間ドラマと感じた。
    イマドキのこの類の小説ならこの復讐の実行場面に大部分にページが割かれるであろうが
    この物語はむしろ、背景に重きを置いていると感じた。
    復讐に至る背景、それを成功させるための準備、仲間や敵の生活、など
    「外堀部分」がタップリ丁寧に描かれており、読者が彼の復讐を応援できる土壌作りにページを割いている。

    残念なのは訳がちょっと読みにくい。
    正確さよりもこなれた言い回しにしたほうが良ければと私は感じた。
    そんな英訳っぽい言い回しを読み解きながらの話しを把握するのに少々わずらわしさを感じた。

  • メキシコシティ、メキシコなどを舞台とした作品です。

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