可笑しい愛 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087604443

感想・レビュー・書評

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  • 会議で説明しているそばから、その内容について一言一句違わない質問をしてくるヒトがいて、自分の説明が悪いのか、そのヒトがよく聞いてないのか、何故なんだろう?と思っていたが、この短編集にある"シンポジウム"を読むと成る程と思う。同じ局面でもヒトの受け取り方は様々。そして"だれも笑おうとしない"にゾッとする。ストーカーと化した利害のある人物に対して、初動で軽くうっちゃる積もりでついた些細な嘘がどんどんと周りを巻き込んで、最後は自分の生活基盤が・・・怖い、怖い、怖い。原田いずみがココにいるし、身近にもやはり居る。

  • 七編のうち特に好きなのは「ヒッチハイクごっこ」「老いた死者は若い死者に場所を譲れ」「ハヴェル先生の二十年後」「エドワルドと神」の四編。

    「ハヴェル先生の二十年後」ではハヴェル先生や若きジャーナリストは虚栄心のために愛する女性への愛を失ったり、取り戻したりと身勝手だ。また、「エドワルドと神」のエドワルドは、目的達成の目の前にして途端に対象への興味を失ってしまう。そのような冷めた心情の描写が物凄くクール。

    クンデラの描く人物は、心のうちに思想や信念、自分の設けたルールを持っているにも関わらず、それが作品の中であっさり(といってもいいように。しかし単純ではない。)と覆ってしまう。それが浅はかだと一刀両断することも出来るだろうけれど、ここに小説の面白みを感じられるし、一部共感する。

    ただの性愛に関する短篇集ではなく、宗教や政治、哲学的な思想に絡めて登場人物の立場や感情が設定されているのが、これらの作品に色を与えていると思うが、そのあたりは難しく感じられてよく理解できなかった。これから何度か読み返し、味わいたいと思う。

  • 〈恋愛のちょっとした苦みを描く短編集〉

    著:ミラン・クンデラ

    クンデラ唯一の短編集。
    恋愛の苦々しさをユーモアと皮肉でまとめるのがクンデラ流。

    共産主義的な世界観を持つ「だれも笑おうとしない」、「エドワルドと神」が社会主義体制下のチェコから亡命したクンデラの背景を思い起こさせます。
    特に後者は秀逸、素晴らしい!!

    また「永遠の欲望という黄金の果実」で、クンデラ教授がご教授してくださるナンパのやり方(探知→接近→最終段階)にはニヤリとさせられました。

  • 演習。

    クンデラの短篇集。面白かった。「だれも笑おうとしない」と「ヒッチハイクごっこ」「シンポジウム」が特に好き。

    私にとって「愛」について考えることはとても難しい(それで別の授業で困ってるw)のだけど、ここで描かれている「愛の滑稽さ」は読んでいてとても楽しかった。

  • タイトルにある通り、様々な愛の形を示した七編の短編によって構成された小説。
    どの話も掴めそうで掴めない複雑で曖昧で繊細な感情の動きが描かれていて目が眩む。
    やはりクンデラの言葉選びのセンスは気持ち悪いくらいに精微過ぎる。訳者の人もすげえ。

  • 『笑いと忘却の書』に近く著者も語る所の、とあるテーマの変奏曲的な小説という構成を、刷り込みの部分があるにせよ感じずにはいられない。美しい旋律が形とリズムを変えながら展開する短編集。なぜそのような錯覚に陥るのかは『愛』が主題である事と、精密に指揮されている文章の流れによるのかもしれない。

    特に気に入ったのは、一番最後の『エドワルドと神』。信仰心をエッセンスに聖書と戦時下に渦巻く自由な思想を対比させながら描く若者の苦悩と幸福の物語。カミュのように透徹した冷静さを伴った語りがダイナミクスをより劇的に演出する効果を持つ事は『笑いと〜』で、すでに実証済みでしたが校長との行為に至るまでの過程は素晴らしいです。

    嘘をつかない事を誇りとする兄に対しての小手先の詭弁。「狂人に対して真実しか語らないという事は狂人の側(ここでは社会一般と対比されている)のルールでゲームに参加する事を同意したのと同じで兄は狂人である。さらに、同意してゲームを真面目にすればするほど不真面目であるというループに陥って行く事を証明する。よって、私は兄のようになりたくないからゲームを降りる(嘘をつく)」

    その結果絶対的な守護ラインを持つ女性達とのやり取りを突破するが、そこに情熱を注げば注ぐほどに見え隠れするカタルシスの徴候が見て取れる。

    絶対的な純潔を信念とする少女アリツェと絶対的立場にある校長。アリツェを手にした時点で明らかになって行くのは殉教者たる青年によって結果的に辱められた校長と彼の手に落ち輪郭を失った少女、社会的制限を振りかざす者と神へ信仰心。そしてそれら絶対的制限の堕落が、非本質的であるが故に実在する事がさらに際立つ神、という逆説的観念との対比がより鮮明に描かれて行く。

    アリツェに見た線の美しさと脆くも崩れ去った虚構の純潔、要はちょっとした挫折に拠って、非本質的なものの中に本質的なものを渇望する青年が物質的、生活的なもの、現実への興味を無
    くしていく点は現在の若者の実態、絶対者の創出という点では近そうな気がします。

    そして決して満たされる事のない不条理感を包み込みながら青年の幸福そうな微笑を描写し、『誰も笑おうとしない』と同じく悲劇的な喜劇であるように結ばれています。その点に未来への希望を感じてしまうのは少し滑稽ですが、どこかほっとさせてしまうような不思議な浮遊感と虚脱感があります。

  • 訳が合わなかった。

  • どんな本だったか忘れた。

  • チェコからフランスに移住した作家、ミラン・クンデラの短編集。

    こんなにも愛が可笑しいものだなんて。

    軽やかでいて、重苦しい愛。
    滑稽な愛。皮肉に満ちた愛。

    どの愛も本当に可笑しい!
    それでも人は愛を求めるんですね。

  • クンデラは短編も完全にクンデラ(笑)。
    余談だけどクンデラって色男だと思うな。

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著者プロフィール

1929年、チェコ生まれ。「プラハの春」以降、国内で発禁となり、75年フランスに亡命。主な著書に『冗談』『笑いと忘却の書』『不滅』他。

「2020年 『邂逅 クンデラ文学・芸術論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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