風の影 上 (集英社文庫)

制作 : 木村 裕美 
  • 集英社
3.82
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本棚登録 : 1293
レビュー : 193
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087605082

感想・レビュー・書評

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  •  物語の中に物語がある、これは見事な仕掛けが施されたマトリョーシカのような小説です。

     小説の中にこの小説と同じ「風の影」というタイトルの本を書いたフリアン・カラックスという男が登場します。そしてその本の登場人物であるライン・クーベルトを名乗る顔のない不気味な男が、本の中から抜け出したように夜の街をさまよい、その本を探し当ててはことごとく焼いてしまおうとするのです。

     フリアン・カラックスの謎にとりつかれた主人公ダニエルがこれを解き明かそうとするうちに、次第にダニエルの人生はフリアンの人生と重なり合っていきます。まるでペネロペを愛したフリアンの運命をなぞるかのように、ダニエルはベアトリスに引き寄せられていきます。

     この小説はミステリーだと紹介されていますが、単なる娯楽小説に留まってはいません。意味深い言葉で人生の中にある愛憎劇や悲劇を描いています。上巻では、登場人物たちは欲望や憎悪や嫉妬に駆られ、あるいは絶望の前で人生の意味を見失いかけています。誰もが不幸を抱えているようで、読み進めることを辛く感じるほどです。それは内戦を迎えたスペインの暗い時代のせいなのか、それとも人間の本質なのか……。

     しかも、それらの全ては、下巻のクライマックスに向かう助走に過ぎないのです。

  • バルセロナを舞台に、謎の作家の影を辿ろうとする青年の話。

    次第に明らかになっていく作家の過去と青年の身に起こる現在がシンクロしていき、不思議な世界観に浸れる…一気に読みたい!


    バルセロナの歴史や宗教、生活を知っていれば、もっと面白いにちがいない。自分の知識の無さが口惜しい!

    後半でどんなオチが待っているのかが楽しみ☆

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      新刊「天使のゲーム」は読まれましたか?(私は近日中に読む予定です)
      「バルセロナの歴史や宗教、生活を」
      「風の影」のサイトにバルセロナガイド...
      新刊「天使のゲーム」は読まれましたか?(私は近日中に読む予定です)
      「バルセロナの歴史や宗教、生活を」
      「風の影」のサイトにバルセロナガイドマップが載ってます。。。
      http://bunko.shueisha.co.jp/kaze/index2.html
      2012/08/22
  • テンポが良いので、話にぐいぐい引き込まれる。一人の人間の成長を描いた作品が好きなのでとてもよかった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「一人の人間の成長を描いた作品」
      私は「忘れられた本の墓場」と言う設定に魅せられました。早く「天使のゲーム」読まなきゃ!
      「一人の人間の成長を描いた作品」
      私は「忘れられた本の墓場」と言う設定に魅せられました。早く「天使のゲーム」読まなきゃ!
      2012/10/29
  • わたしを虜にした本。何度も読んでます。やはり外国人作家は書き味が全然ちがいます、比喩的表現やユーモアが日本のそれとは別物。どちらが良いというわけではなく、全然ちがう。異世界ものではないけどどこか非現実的で、それでいて人間味と個性あふれる登場人物たちの台詞ひとつひとつが生きてる。老若男女楽しめるかと思います。

  • 行間まで中身がギュッと詰まった濃い1作だった。無駄な描写がなく、文章表現が素晴らしい。
    作家カラックスの哀しい物語が現在のダニエルのストーリーに重なってしまい、結末を考えてハラハラした。
    それぞれの登場人物に人生がある。それを最後まで丁寧に描き切っていて、読みながら感動した。
    素晴らしい文章を日本語に訳した翻訳家の方も凄い。

  • いやもうね、バルセロナ行きたくなりますよ、ホンマ。


    『風の影』を巡る、少年の人生と作者の人生。
    そして周りの人々の生き様が壮大な物語を奏でてくれます。

    あとがきにもありますけど、すべての登場人物が
    それぞれに人生が感じられるというのがすごい。


    上下巻合わせてなのでこちらに書きますが
    下巻は特に素晴らしい。
    ページめくる手が止まりません。

    特にヌリアの手記の部分。
    それまでの謎をクリアにするだけでなく
    ヌリア自身の悲しい人生を浮き彫りにする
    何とも悲しい流れが待っています。


    そして何より、名言が多いのだ。


    だって、働いてるうちは、人生を直視せずにすむでしょ

    ただ稼ぐだけなら、それほど難しいことじゃない。
    難しいのは、人生をささげるに値する仕事をしながら
    金を稼ぐことだよ。


    特に下記の、ヌリアの戦争についての言及が好き。
    戦争というものをこういう表現で書いた文章は見たことがない。
    そしてこれが戦争の本質なのではないかと思う。


    戦争は、忘れることを“えさ”にして大きくなっていくのですよ、ダニエル。わたしたちは誰もが口をつぐみ、そのあいだに、戦争は、わたしたちを納得させようとする。わたしたちが見たものや、やったこと、自分の経験から、あるいは他人から学んだことはただの“まぼろし”だった、一過性の悪夢だったのだと、わたしたちに思い込ませようとします。戦争に記憶はないし、誰もあえて戦争を理解しようとしない。そのうちに、なにが起こったのかを伝える声が消滅し、わたしたち自身も、戦争というものを認識できなくなるときがやってきます。すると戦争は、顔を変え、名前を変えてもどってきて、後ろに残してきたものをむさぼり食うのです。

  • ロマン主義的な独特のリズムをもった文体と幻想に包まれたようなストーリー。訪れたこともないバルセロナの街のにおいが伝わってくるようで、書き出しからこの光と影の物語世界に引き込まれてしまった。『天使のゲーム』のイサベッラのような役回りを今作ではフェルミンが務め、重く沈みがちな物語の良いアクセントになっている。誰からも見向きもされず、忘れ去られる運命にある「書物」や「記憶」に対する痛切な感情と、それらを掬い取って必死に紡ごうとする魔法のような物語も、前に読んだ『天使のゲーム』と共通していると感じた。

  • 過去と今が平行線になっていて
    主人公の身に起きることを読み手が嫌でも想像させられて ドキドキしてしまう。
    しかも登場人物たちがすごく生き生きしてて、引き込まれてしまう。
    ところどころに不吉な描写がちりばめられてて、ぞわっとしてしまう。

    伏線のばらまき具合が見事

  • 忘れられた本の墓場から始まる古書モノということで、死の蔵書みたいなのを想像していたら違った。でもおもしろい。

    フェルミン・ロメロ・デ・トーレスが最高。映画化するならフェルミン役はロバート・ダウニー・Jr.がいいな。

    バルセロさんも、主人公ダニエルの父も好きなキャラ。時計屋のおじさんも好き。後半が楽しみ。

  • スペインが好きで、バルセロナを舞台にした小説を探していて出会ったのがこの「風の影」。登場人物がみな個性的で、翻訳も読みやすく、一気にシリーズのファンになった。新作が楽しみで仕方がない。

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