- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087605099
感想・レビュー・書評
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SL 2022.9.1-2022.9.4
上巻はどんどん複雑になっていくので少し混乱していた。下巻でフリアンの物語が明らかになるにつれてどんどん惹き込まれていく。
ダニエルとフリアンの相似に不安になったけど、ラストは安心できる終わり方でよかった。
ダニエルとフェルミンが防波堤に座ってバルセロナの夜明けを眺めているシーンが静謐でとてもいい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
内戦の影が徐々に迫りくる、バルセロナの描写に息苦しさを覚えた。
過去に生きていた人々と、現在を生きる人々の思惑が交わり、悲劇的な結末に向かっていくスピードは、エロスとタナトスに彩られ、カタルシスを感じずにはいられない。
一冊の本に巡り会ったことから、少年の人生は大きく変わっていったけれど、本にはそんな力があることを、思い出させてくれる物語だった。
難点は翻訳か?誰が話している台詞かわからなくなるところが多々あった。誰もが同じ口調なので、登場人物それぞれの性格を反映させてくれるとありがたいなあ。
本作品は、たった一冊で、ミステリ・恋愛・ホラー・サスペンス・冒険といろいろ味わえる。とてもコストパフォーマンスの高い小説だ。 -
下巻に入ってもバルセロナに日の光は無い。
ヌリアの手紙によって明らかになった真相は、重く暗い影を露わにした。それでもなお、闇の中で理解の外にいるフメロ、彼は何を恐れ何を求めていたのか。少なくとも、地位や名誉ではない。ただひたすら破壊することで得られる快楽を、内乱のスペインが彼に与えた。彼もまた、時代の影そのもの。
物語が1955年に入り、ようやくバルセロナに太陽が現れて、物語は終わる。
「忘れられた本の墓場」は、次の登場人物を待つ。 -
おおお...衝撃の謎解きが凄い....かな。
と言いつつも、何となくフリアンが誰だか
わかってしまい、やっぱりなーと思った次第。
なんといっても読みづらいのひとことに尽きる。
翻訳がよくないんじゃなかろか。 -
言葉遊びグレゲリア 貧血症気味 ホルマリン漬けにした胎児 巫術ふじゅつ 硫黄の臭気 敬虔な ハシンタフリメロ カテドラル大聖堂 ペネロペ・アルダヤ フリアン・カラックス 短い逢瀬おうせ サンクトペテルブルク 野牛バイソン 愛の逃避行 ミケル パリ行きの列車 パトロン イヴォンヌ セーラー服 フェルミンのジョーク メフィストフェレス悪魔的な自分の姿に悦に入っているようだ クララがドビュッシーの曲を辱しめている 教師としての職権濫用 アフォリズム金言 ヌリア・モンフォルト ミケル・モリネール 模範的夫婦 自己破壊に向かう死喘鳴 死装束 フォルトニー帽子職人 三十六歳。自分が生きられると思ってた以上に、長かった人生でした。 自分が夢見た人生、生きる支えにしていた唯一のものが、ほんとうは、いちども存在しなかったことを知ったとき、彼がどう感じただろうかと考えたのです。わたしたちの多くは、人生がゆっくり崩壊していくのを自分で目にしていながら、幸か不幸か、それには殆ど気付かずにいます。ところがフリアンの場合、人生が崩壊したと確信するのに、わずか数秒で事足りたのです。 怨恨の匂い 辛辣な噂 僕の心臓は七十四秒間停止した 赤血球をたくさん増やし タナトス死の化身 エロス愛の神 モンペウス夢の神 もや靄の天使 バルセロナオリンピック ロサンゼルスハリウッド 新興ブルジョア 擁護 四匹の猫クアトロ・ガッツ
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スペイン出身、アメリカ在住の作家ですが、日本でいえば浅田次郎とか宮部みゆきのような位置にいるエンタメジャンルの作家だと思います。面白かったです。
スペイン内戦や第二次世界大戦という動乱の時代を背景に、主人公の少年が「風の影」という本の謎を解くというミステリになってます。
登場人物はほとんど深刻な人生を送ってますが、その中ではフェルミンという人物がとても魅力的です。傷を体にも心にも負っているのに明るく、知識があり、そしてエロジジイです。彼の女性に対する熱情はすばらしいです。
後半になると謎解きをすべて回想でやってしまうので、そこはどうかなあと思いましたが、まあ仕方ないのかな。
人生というものは大抵失敗や悲しみがつきまとうものだ、という儚さが漂い、そこがスペインの重い歴史と相まって無常感がありました。 -
ダニエルがたどり着く真相は?それがいよいよ、明らかになる下巻。
上巻と比べ、訳書にありがちな登場人物の多さがやや目立った。
そのため、肝心な箇所で完全に理解しきることが出来なかった。
結果として、やや冗長としてしまった感もある。
しかし、作者の描写力は素晴らしいものがあり、
イメージをビジュアル化しやすく、
読んでいて物語の世界にすんなりと入ることの出来る小説だった。
有名な小説でもあるので、未読の方には読んでもらいたい。 -
「忘れられた本の墓場」で見つけた世界に一冊しか残っていない本にまつわる謎という紹介文にひかれて読み始めたのだが…。
主人公が十歳の少年というので、児童文学かと思って読みはじめると、開幕早々にキスシーンが現れ、その後も性的な仄めかしやら、くすぐりが結構出てくる。今頃の子どもはこれくらいでは驚かないだろうとは思いつつも、違和感が残る。
そこで、ああこれは大人向きのミステリなんだ、と納得したのだったが…。
それにしては、出てくる人物が、あまりにも類型化されていて、悪役は徹底的に悪く描かれ、主人公を助けるワトソン役はどこまでも善人として描かれているのに少し鼻じらむ思いが残った。
呪われた館やら塗り込められた部屋の中に隠された棺やらという、ポオやゴシック・ロマンを思わせる設定には事欠かないのだが、1945年という時代設定にやや無理があるのか、スペイン内戦というあまりにもリアルな背景が邪魔して、雰囲気の中に入り込めない。
ここは、もっと整理して、社会派でいくか幻想小説派でいくかしぼってもらった方が読者としては有り難かった。
『風の影』という本を書いた作家フリアン・カラックスと主人公のダニエルが二重写しになって奇妙に交錯する運命を辿るという設定は面白いのだが、歌舞伎の花川戸助六、実は曽我の吾郎というのと同じで、あまりにも御都合主義的な人物相互の関係がスペイン内戦という深刻な背景と齟齬をきたしている。
世界中でベストセラーになっているというのだから、それなりに面白いにはちがいないのだろうが、オペラ座の怪人風の登場人物といい、サービス過剰で、せっかくの素材を充分に活かしきれなかったのではないか。
バルセロナの地下にある「忘れられた本の墓場」という迷宮めいたイメージだけはすてがたいものがあるだけに惜しい気がする。『ダヴィンチ・コード』ファンにはお勧めかも知れない。 -
過去と現在の繋がりが、ヌリアの手記により徐々に明らかになる。
フリアンとダニエル。
似た人生を歩んでいる2人が、最後に幸せになれるかどうか?
不思議な展開だけど読み応えのある下巻です。