荒野へ (集英社文庫)

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感想 : 181
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087605242

作品紹介・あらすじ

アラスカの荒野にひとり足を踏み入れた青年。そして四か月後、うち捨てられたバスの中で死体となって発見される。その死は、やがてアメリカ中を震撼させることとなった。恵まれた境遇で育った彼は、なぜ家を捨て、荒野の世界に魅入られていったのか。登山家でもある著者は、綿密な取材をもとに青年の心の軌跡を辿っていく。全米ベストセラー・ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 20代の男性がアラスカのバスの中で腐乱死体となって見つかるまでの話。
    自然に憧れて、その自然には牙を剥かれ喰われた、という感じ。
    散々批判されてた通りに準備不足だったんだろうなとも思う。
    きっちり準備してたって死ぬ時は死ぬのが山とかそういう地域だし。
    元々のスキルその他が高くて、自分ならなんとかなると思ってしまったのか。
    準備不足でアラスカの自然の中に4ヶ月間生き延びれたっていうのはすごいと思う、けどやっぱり無謀。

    ただ、その憧れはちょっとだけわかる。

  • 大学を卒業後、ヒッチハイクを繰り返しながらアラスカへ辿り着いた青年は一人で荒野へと足を進める。結果、彼は荒野に置き捨てられた廃バスの中で孤独死し、アメリカ中を震撼させることとなる。

    いったい彼はなぜ荒野へ足を運んだのか?そして荒野での廃バス生活の中で何が彼を孤独死させる要員となったのか?極めてミステリアスなこの出来事を巡って描かれるノンフィクションが本作である。

    アメリカ出身の稀代なるノンフィクション作家、ジョン・クラカワーの出世作である本作では、若かりしクラカワー自身の姿が孤独死した青年に重ね合わされている点が魅力的である。かつて、若きクラカワー自身は登山を通じて自己のアイデンティティを確立しようともがいていた。その姿は孤独死した青年と重なり、”荒野への冒険を通じて自己のアイデンティティを証明する”のが青年の冒険の目的だったのではないか、というのが冒頭の問に対するクラカワーの仮説である。

    しかし、青年の失敗はアラスカという極めて過酷な自然に対する甘えであった。刻々と変わる自然状態の中で青年の行動圏は徐々に狭まっていき、食料も尽きる中で栄養失調と共に死を迎えることになる。青年が廃バスに残した日記には、その恐怖がありのままに残されており、読み手を震撼させる。

    誰しもが若き時代に一度は考える自らのアイデンティティの確立。一人の青年は危険な登山で死の間際にまで直面するが何とか生き延び流ことに成功し、方やもう一人の青年は孤独に死を迎えることになる。その対称性が痛ましく悲しく映る。

  • 映画を観たあと、数年経ってから読んだ。良くも悪くも原作のほうが筆者の思い入れが強く現れているような気がする。アレックスという一人の人間の心のうちに少しでも寄り添おうとして、細かな手かがりでもとにかく全部拾っていく。人間の行動を簡単に表面的に理解して心理学用語で分類して片付けるなんてできないと改めて感じた。
    壮大な自然に憧れたり、文明に嫌気が差すことはあっても、人と人とのつながりは心に絶対に必要な要素なんだろうなあ。

  • 「本の雑誌がつくる夏の100冊」から、まずこれを。クラカワーはずいぶん前にエベレスト登頂について書かれた「空へ」を読んで、とても面白かった記憶がある。これも、人間を拒絶するようなむき出しの自然に惹かれて、最終的には命を落としてしまった若者の軌跡が共感を持って書かれていて、いろいろ考えさせられた。

    この青年が、アラスカの荒野へ、十分な装備を持つことなく分け入っていったことに対して、愚かで傲慢だと厳しく批判する声も多かったそうだ。著者は、青年に若かった頃の自分と共通するものを感じ、あくまで彼の心に寄り添って考えようとする。家族や彼と接触を持った人たちの証言を丁寧に追いながら、荒野に惹かれていく彼の心情や、餓死に至ってしまった原因を追求していく。

    読み進めていくうちに、次第にこの若者の人物像が厚みを増していく。確かに、未熟で視野の狭いところはあっただろうが、若い時って誰でもそうじゃないだろうか。たまたま危険な淵に近づかなかったり、偶然に助けられて事なきを得たり、大なり小なりそうした幸運の積み重ねによって、疾風怒濤の青年期を通過していくものではないだろうか。

    彼の家族、特に母親の悲嘆が胸に痛い。ほんの少し事態が違えば、彼はおそらく荒野から帰ってきて、再び人との交わりの中で生きていったように思われる。拒否していた両親の愛情も受け入れられる日が来ただろう。運命の重さに粛然とした気持ちになる。

  • アラスカの荒野に一人分け入って、帰ってこなかった若者の物語。読んだあと、ネットを検索してみたら本人が最後に撮った写真が見つかった。映画になったと聞いていたので、映画のワンシーンかな、と思った味のある顔。ボロい服を着こみ、髭面で痩せてはいるが、生き生きとした目をしている。やせ我慢には見えない。彼なりに楽しかったのだろう。

    想像していたような、若い隠者風の話ではなかった。彼を荒野に向かわせたのは、自然への憧憬や社会の生きにくさではなく、こうあるべき、という理想論のようなものだ。青臭いが非難するいわれはなく、結果としてクリスは死んだがそれは事故で、他人がどういういう筋合いのものではない。家族は辛かっただろうとも思うが、だからまじめに地道に生きていけ、というのもずいぶん傲慢な言い分だとぼくは思う。

    長生きをすればよい人生、というわけではないし、アラスカの廃バスの中で一人で餓死したら悪い人生、というわけでもない。

  • 安定を捨ててまで、自らを困難に追い込み、挑戦を続けるクリス・マッカンドレス。生きることに貪欲すぎるのか、生きることの意味や意義に向き合った結果なのか謎に満ちている。
    考えを理解する為にも、映画も見てみたいと思った。

  • ○感想を
    手にしてから完読するまで約3ヶ月かかかった。それは、中断することも多かったから。
    人の一生は短い。
    彼は24年で幕を閉じた。
    名前を変え、お金も寄付し、ほぼ徒歩で歩みアラスカへ旅へ出かけた経緯や周りのエピソードなど交えたドキュメンタリーである。自然の怖さも感じるし、地球の未だ見ていない人が殆ど歩かない地に単独で入っていくことは、彼にとって勇気でもなく、自然な行為だったのだと思う。
    主人公以外にも遭難したり、自然のなかで餓死していく他者も登場したが、このあたりが一番覚えていて読み進めが早かった。途中人との関わりやマックでバイトしたりして稼いだり、そうした人道的な内容もあるからリアルを感じる。バスは撤去されてしまったが、いつか機会があれば、お目にできたら嬉しい。今度は映画を観ようと思う。

  • こういう人っているよな、世の中生き辛いんだろうな…と思いながら読んだ。何のってわかんないけど、専門家のサポートがあったら違ったかな?とも思いながら読んだ。

  • 厨二病と言えばそうなんだろうけど…
    ちょっと切ない一冊。

  • 裕福な家庭で育ち物質的に何不自由のない青年クリスマッカンドレスが何かを求めてアラスカへと向かう。著者ジョンクラカワーの関係者への取材、自身の経験が合わさって、クリスマッカンドレスが何を考えてアラスカへと向かったのかが推察されていく。

    きっと生を実感したくクリスは冒険をしたのだろうか。角幡さんの本でも書いてある、脱システムを求めているような気がする。時に極端だと思うこともあるが、彼の破天荒さを批判するほど私たちは生を実感した暮らしをしていない。

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著者プロフィール

1954年生まれ。ジャーナリスト、作家、登山家。
当事者のひとりとして96年のエベレスト大量遭難事件を描いた『空へ』(1997年/日本語版1997年、文藝春秋、2013年、ヤマケイ文庫)、ショーン・ペン監督により映画化された『荒野へ』(1996年/日本語版1997年、集英社、2007年、集英社文庫。2007年映画化、邦題『イントゥ・ザ・ワイルド』)など、山や過酷な自然環境を舞台に自らの体験を織り交ぜた作品を発表していたが、2003年の『信仰が人を殺すとき』(日本語版2005年、河出書房新社、2014年、河出文庫)以降は、宗教や戦争など幅広いテーマを取り上げている。

「2016年 『ミズーラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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