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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087606256

作品紹介・あらすじ

少年時代に抱いた友人の母親への恋心を、二十世紀メキシコの激動の時代と共に追想する、パチェーコ『砂漠の戦い』。犬に噛まれ、大怪我をしたことから鬱屈した青春を送る少年と仲間との交遊を描いた、バルガス=リョサ『小犬たち』。マヤの神話や伝説が語られる、アストゥリアス『グアテマラ伝説集』。ほか、オクタビオ・パス、フエンテスの詩や短篇を収録。ラテンアメリカを代表する作家たちの競演。

感想・レビュー・書評

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  • リョサ「小犬たち」お目当てで。「小犬たち」文体と構成の妙。読みやすいし面白いけど、クエリャルが、はあ、可哀想だ。パチェーコ「砂漠の戦い」素晴らしい!当時の政治状況や人々の暮らしぶりが巧みに語られながらも、少年の初恋の話で、ちょっとギュッとなる。フェンテス「二人のエレーナ」ラストに思わず...ワオッ!パスは散文がよかった。詩は解説を読んで納得。アストゥリアス「グアテマラ伝説集」神話・民話の世界はどこの国もなんかこう、めくるめく話になるのかしら...全部面白かったです。

  • 様々な作者を織り交ぜた短編集は入門編としてもありがたいなぁ!
    『砂漠の戦い』(ホセ・エミリオ・パチェーコ)と『小犬たち』(マリオ・バルガス=リョサ)が圧倒的なほどに見事。

  • ラテンアメリカ少年の小説2作
    というわけで、ラテンアメリカ五人衆の文庫より、パチェーコとリョサの作品を。どちらとも少年時代をその生の声に語らせることに成功した作品。

    パチェーコ「砂漠の闘い」はタイトルだけ見てブッツァーティみたいな雰囲気か?と思ったけど、全然関係なく?メキシコシティ下層地域(多分)の息遣いが味わえる。少年が友達の母親(アメリカナイズされた)に恋するという筋。結局ずっと後になって、その女性は自殺したということを旧友から聞かされるのだが…1940年代後半から50年代前半のメキシコシティ風俗も、日系移民やアメリカ文化との関係など含めて追体験できる楽しい小説だけど、語り手自身は語っている現時点でどこにどんなふうにいるのだろうか?そこが謎のまま。兄貴のことは書いてあるのだけれど…パチェーコは自分は初の作家だけど、どっちかというと詩の人みたい。

    で、リョサ「子犬たち」大作群の前。だけどもう語り口、構成と内容が渾然一体となったリョサの作風は完成してる、そんな感じ。こっちはペルーはリマのワルガキどもの追体験。4人の少年ともう一人、犬に男の一番大事なところを咬みきられてしまった少年との成長(或いは未成長)の物語。読んでて最初は4人の他に語り手の少年いるのかと思ってたけど、語り手というより4人の少年の声がこだましあう音響空間のただなかに、読者は立っているのでした…
    (2011 10/13)

    「ラテンアメリカ五人衆」より引用2つ

     それは単なる予兆、単なる前奏、事前の快感に対する単なる制限だが、だからこそやがて、行為そのものに変わる。
    (p138)

    フェンテス「二人のエレーナ」より。この短篇の筋は、結婚した妻のエレーナと、その母親の(同じ名前の)エレーナ二人を愛する男、というもの。それが土台にあって、そこに(1960年代の)映画とかアメリカ黒人運動とか(この文章で書かれている)ジャズなどが入り込んで溶け合っている、そんな感じの短めの短篇。で、この文章・・・なんか前に挙げた「本能による漂流」そのものってな感じ。人間における「本能による漂流」は文化(高いの低いのひっくるめて)?

     僕は宇宙とは巨大な信号のシステムであり、森羅万象の間で交わされる会話であると思った。僕の行為、コオロギの鳴き声、星のまたたきは、この会話の中にちりばめられた休止と音節と語句にほかならなかった。僕が音節であるのはどんな言葉だろうか。その言葉を誰が誰に向かって話しているのだろう。
    (p177)

    こちらはパスの掌編「青い花束」から。これと次の「正体不明の二人への手紙」は散文スタイルで、パスがシュルレアリスムの影響下にあったころの作品。「青い花束」では、こんなことを考えていると追いはぎ?にあい、目玉をくりぬかされそうになる。追いはぎは青い眼が目的だったそうだけど、パスはそうではなかったらしい。言葉は仮に聞いていたとしてもわからない、ということかな。
    「正体不明・・・」は正体不明・・・何をいっているのかな、と読んで行くとまったくわからない。
    そして、パスがインドなどの影響を受けた次の時代の詩作品「白」・・・これもよくわからない・・・んだけど、上下に詩が分れている上の部分は男女の交わりをストレートに詠んでいるのかな。下は神話的な部分。

    この「白」という作品がこの文庫のちょうど真ん中あたりにあることもあって、これを境にして「二人のエレーナ」の現代の恋愛とその下にある(フェンテス作品には必ずある、と思われる)神話構造が、裏返しとなって、先のパスの掌編2つ、そしてアストゥリアスの「グアテマラ伝説集」へと神話が表になっていくのかな?そう考えたりもした。そうすると「正体不明の二人」とは「二人のエレーナ」・・・?
    うーむ、出来過ぎた・・・
    (2011 10/23)

  •  ラテンアメリカ文学の作家5名による短篇と詩合わせて7篇を収録。

      ホセ・エミリオ・パチェーコ「砂漠の戦い」(安藤哲行訳)
      マリオ・バルガス・リョサ「小犬たち」(鈴木恵子訳)
      カルロス・フエンテス「二人のエレーナ」(安藤哲行訳)
      オクタビオ・パス「白」(鼓直訳)
              「青い花束」(野谷文昭訳)
              「正体不明の二人への手紙」(野谷文昭訳)
      ミゲル・アンヘル・アストゥリアス「グアテマラ伝説集」(牛島信明訳)

     M・バルガス・リョサの「小犬たち」とO・パスの「青い花束」が特に好き。この2篇は物語として比較的読み易く、理解し易かったかもしれない。
     反対にパスの「白」とM・Á・アストゥリアスの「グアテマラ伝説集」には全く歯が立たなかった。シュルレアリスムというのかマジックリアリズムというのか、翻訳による原文からの隔絶なのか、ラテンアメリカ文学はほぼ初心者である自分には早過ぎたのだろうか?
     改訂にあたり版権の都合で本作から除かれたというシルビーナ・オカンポの「鏡の前のコルネリア」を読んでみたい。

  • 砂漠の戦い(ホセ・エミリオ・パチェーコ/安藤哲行)
    小犬たち(マリオ・バルガス=リョサ/鈴木恵子)
    二人のエレーナ(カルロス・フエンテス/安藤哲行)
    白(オクタビオ・パス/鼓直)
    青い花束(オクタビオ・パス/野谷文昭)
    正体不明の二人への手紙(オクタビオ・パス/野谷文昭)
    グアテマラ伝説集(ミゲル・アンヘル・アストゥリアス/牛島信明)

    著者:ホセ・エミリオ・パチェーコ(Pacheco, José Emilio, 1939-2014、メキシコ・メキシコシティ、作家)、マリオ・バルガス・リョサ(Vargas Llosa, Mario, 1936-、ペルー、小説家)、カルロス・フエンテス(Fuentes, Carlos, 1928-2012、パナマ、作家)、オクタビオ・パス(Paz, Octavio, 1914-1998、メキシコ・メキシコシティ、詩人)、ミゲル・アンヘル・アストゥリアス(Asturias, Miguel Ángel, 1899-1974、グアテマラ、小説家)
    訳者解説:安藤哲行(1948-、岐阜県、ラテンアメリカ文学)
    訳者:鈴木恵子、鼓直(1930-、岡山県、ラテンアメリカ文学)、野谷文昭(1948-、神奈川県、ラテンアメリカ文学)、牛島信明(1940-2002、大阪志、スペイン文学)
    解説:豊崎由美(1961-、愛知県、書評家)

  • 文学

  • 2011-7-23

  • 期待したほどではなかった。バルガスリョサの「子犬たち」は面白かったが、翻訳の文章がちょっと不満。

  • 2011年に復刊された改訂新版で最初は1995年に同じ集英社文庫で出版されていたものにフエンテスの作品が加わっているようだ。
    「砂漠の戦い」パチェーコ タイトルから受ける印象とは異なり友人の母親に恋をしてしまった少年の話。40年代末から50年代初頭のメキシコが舞台らしくその時代の文化が数多く盛り込まれている。
    「小犬たち」バルガス=リョサ 巻末で豊崎社長が絶賛しているが、なるほどこれは傑作。局所を犬にくいちぎられた少年と友人たちの悲劇と喜劇がないまぜになった青春小説で、過ぎていく時によって否応なく生まれる落差がなんとも切ない。会話をベースにしたリズミカルな文体が素晴らしい。
    「二人のエレーナ」フエンテス 「砂漠の戦い」から時代が下ってこちらは60年代。ちょっとピンとこなかったな。解説で触れられているトリュフォーの『突然炎のごとく』を観れば少しわかるようになるのかな。
    「白」「青い装束」「正体不明の二人への手紙」オクタビオ・パス パスは『魔術的リアリズム』(寺尾隆吉)ではラテンアメリカのいわゆるマジックリアリズム文学の基礎づくりをしたシュルレアリスムの作家の一人に挙げられていた。「白」は前衛的な詩で丁寧な解説を読んでもいまだよく理解はできない。が、シュルレアリスム小説の後者二篇と共に言葉の力が強力で、凄い作家であることはよくわかった。他作品も読んでみようかな。
    「グアテマラ伝説集」アストゥリアス 『グアテマラ伝説集』が面白いという評判を以前聞いたことがあったが、たしかに面白い!宇宙的スケールで迸る色彩の洪水、といった趣でSFやファンタジーのファンもハマるやつだこれ。岩波文庫のは読まないとなー。

     最初の刊行から20年以上経ち、作家や作品のチョイスなどラテンアメリカ文学に詳しい読者からすると注文がある内容かもしれないが、まだまだ不案内な身としては一度に有名作家に触れることができて非常にありがたい一冊だった。日本の世界文学ファンにも歴史的意義の大きい本だったのではないか。

  • もはや、ブラックマジックだけではないということを多様な作家のショーケースで見せてくれる。とはいえ、その錯綜するイメージの立ち上がらせ方には固有の力を感じる。
    魔法などというものは、そう、ここにもあるものなのだ。

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著者プロフィール

1936年ペルー生れ。ラテンアメリカを代表する作家。2010年ノーベル文学賞。著書『都会と犬ども』『緑の家』『ラ・カテドラルでの対話』『世界終末戦争』『楽園への道』『チボの狂宴』『つつましい英雄』他。

「2019年 『プリンストン大学で文学/政治を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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