踊る骸 エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (720ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087606645

作品紹介・あらすじ

最期までうち解けられなかった母親の残した日記と古い勲章を、偶然発見したエリカ。が、勲章の鑑定を依頼した歴史家が殺され…。スウェーデン発、1000万部突破シリーズ中一番の人気作、歴史ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 作家のエリカと刑事のパトリックのカップルが探偵役。
    スウェーデンの人気シリーズ5作目。

    すぐ出産して子育て中心だったエリカが、仕事に復帰することに。
    パトリックは、4ヶ月の育児休暇をとったのだ。
    男性が長い育児休暇を取るとは、さすがスウェーデン?
    とはいうものの、姑は反対している。
    パトリックもまだやり方に慣れず、すぐエリカに聞きに来たり、ちょっと見ていてくれるように頼んだり、エリカはなかなか楽にはならない。

    エリカの妹アンナは、恋人のダーンの家へ子連れで引っ越していた。
    ダーンにも元妻に引き取られた娘が3人いて、思春期の長女は父親の同棲に反発していたが。
    パトリックが元妻と再会するいきさつもあったりして。
    ややこしい人間関係だけど、まずまず悪くない方向へ。

    屋根裏にエリカとアンナの母親エルシの遺品が見つかり、中にあった古い勲章を鑑定に出してありました。
    母エルシは娘達に冷たく、エリカとアンナはそのために苦しんだのだが。
    母は娘達が何をあげても何を見せても嬉しそうにもしなかったのに、娘達のものを大事にとってあった‥

    鑑定を頼んであった歴史家エーリックが遺体で発見され、驚くエリカ。
    事情を知りたくてじっとしていられなくなり、エーリックの兄アクセルを訪ねます。エーリックとアクセルは、エルシの若い頃の友達だったらしい。
    アクセルは地味な学者肌の弟よりも優秀でカリスマ性があり、両親の期待を一身に集めて育ち、今でも風采のいい老人。
    エルシがかっては明るい性格だったことを知るエリカ。
    母に何があったのか‥?

    過去のいきさつと、現代の人間関係が重層的に語られます。
    いつも登場人物は多いのですが、今回は広範な人間模様というだけでない、くっきりした意味があるため、頭に入りやすい。
    第二次世界大戦当時のスウェーデンの若者達の様子も、当事者の回想でありありと描かれます。
    母の巻き込まれた思いがけない経験、母も知らなかった真相。
    エリカが理解できないでいた事情が明らかになっていくのは、面白く、これまで引っ張っていた謎だけに、引き込まれました!

  • エリカの母が残した日記とナチスの古い勲章。
    母の過去を探るエリカは、勲章の鑑定を依頼した老研究家が殺されたことで事件捜査に関わっていく。

    エリカが捜査の舞台に戻ってきたよ!
    パトリックが育児休暇を取ると言うのがスウェーデンぽくて、でも子どもの扱いにおたおたする様は万国共通なのか?と思ったり。
    エリカの苛立ちが判るだけに、物語の冒頭から共感を持ってその中に入ることができる。
    物語はエリカの母の過去を探るうちに、事件の関係者の過去があれこれ暴かれ、事件が起こった経緯がわかると言う構成。
    この過去の物語と現代の物語を行ったりきたりしながら、事件の謎が形を表していくという手法。捜査だけでなく、事件が起こってしまった要因がじわりと染込んでくるので好きなんだよなぁ。
    キャラクタに感情移入もしやすいし。
    構成やキャラクタの設定が『警視シリーズ』に被るところがあるんだけど、こちらのシリーズもあそこまで完成されていくといいなぁ。
    先が楽しみ。

    • niwatokoさん
      わたし、このシリーズ1作目を読んで、なぜか、あんまり好きじゃないなとか思ってしまってそれから読んでないんですが、早計だったかも?! シリーズ...
      わたし、このシリーズ1作目を読んで、なぜか、あんまり好きじゃないなとか思ってしまってそれから読んでないんですが、早計だったかも?! シリーズものってだんだん好きになっていったりしますよね。しかも!警視シリーズに似てるんですか?読みたくなってきました。 
      2013/06/12
    • kumanecoさん
      >niwatokoさん
      私も1作目はあまり好みではなかったです。
      でもだんだんよくなってきた感じ。
      章の冒頭に過去の物語が挿入される構成だけ...
      >niwatokoさん
      私も1作目はあまり好みではなかったです。
      でもだんだんよくなってきた感じ。
      章の冒頭に過去の物語が挿入される構成だけでなく、バツいち同士の再婚、ステップアップファミリーの問題、警察署のメンバーのエピソード、姑との関係…など取り上げる部分が似てるんですよね。
      福祉国家スウェーデンならではのコージーな部分も面白いですよ。
      2013/06/13
  • エリカ&パトリック事件簿シリーズ第5作。

    第二次世界大戦時代と現在を行き来しながら、エリカの母の真実の姿と隠されていた悲劇が語られる。過去の陰惨なできごとがしだいに明らかになっていく過程が丁寧に描かれ、緊張感が最後まで持続。

  • ゆったりと愉しめるソープオペラ的ミステリ。あらゆる世代のあらゆる情況の人の感情の動きに通じている、やるせない愛のドラマ

  • 人間ドックの待ち時間に読もうと数ヶ月前に買って温存していた本をやっと読みました。事件の謎解きだけでなく、人物描写が濃密で読み応えのあるシリーズ。初めから暗に示されていた母親との確執の根っ子にあるものが今回明らかになるのでは、、、と出版される前からすごく期待して、期待して、期待していたので、ちょっと期待し過ぎたと読み終ったあとに反省。北欧諸国にもナチズムの影響があったことなど全く知らず、また想像もしておらず、そうだったんだ!と今更驚きながら読み進む。事件のことの次第は途中で予測がついてしまったけれど、そこに至る過程の丁寧で緻密な描写を楽しみながら読了。メルバリとユスタは前作に続き更に人間くささを増し憎めないキャラクターになっています。そしてパトリックの母までが、いやなだけの姑ではなく人づきあいが不器用な人間味あふれる人物であることがわかり、ドラマとしての興味が尽きません。エリカとアンナの姉妹と母親エルシとの間の確執を語る核心作で、これでひと区切り、と思っていたのですが、ここまでが舞台設定で、ここから更に発展してゆくための分岐点のような位置付けの作品なのかもしれません。次作が楽しみです。

  • 2013.06 M氏よりレンタル)

    はなから、人様の生活を俯瞰で覗く感覚で読んでいる。
    ミステリものとしてでなく。

    その視点から〜シリーズ内で一番面白かった。
    自身の老いからくる感情とは思うが
    「そうだよね」と共感できるフレーズも多かった。
    (前シリーズまでは、さほど感じた記憶はない)

  • エリカ&パトリックシリーズ5作目。スウェーデンも大戦中はナチスの被害を受けていたのだな。今回はエリカの母親の日記も絡めながら、事件を解決していく。長年の憎悪や愛情が爆発した感じ。

  • 人に歴史あり、深い洞察力。
    回収しきってない伏線は次作への布石かな。

    • rudolf2006さん
      エリカ&パトリック事件簿の新刊です、今回も過去との対話が中心になっています。エリカの母親のエルシが主役のようになっています、若い頃に何があっ...
      エリカ&パトリック事件簿の新刊です、今回も過去との対話が中心になっています。エリカの母親のエルシが主役のようになっています、若い頃に何があったのか?? どうして笑いのない、愛のない母親になったのかの謎解きです。愛の物語です、最後は感動的ですよ ▼・。・▼
      2013/05/19
  • 「カミラ・レックバリ」の長篇ミステリー作品『踊る骸―エリカ&パトリック事件簿(原題:Tyskungen、英語題:The Hidden Child)』を読みました。

    「カミラ・レックバリ」作品は、先月に読んだ『死を哭く鳥―エリカ&パトリック事件簿』以来ですね。

    -----story-------------
    今は亡き母は、なぜ最期まで私達姉妹に冷たかったのだろう?
    屋根裏で母が戦時に書いた日記と古い勲章を見つけたことで、再び謎と向き合うことになった「エリカ」。
    だが、勲章の鑑定を頼んだ歴史家は直後に撲殺され、ヒントを探すため読み始めた母の、別人のように感情豊かな日記は戦中のある日唐突に終わっていた。
    スウェーデン発シリーズ第5弾、二つの時代が交錯する味わい深い名作ミステリ。
    -----------------------

    「ラーシュ・ケプレル」、「カーリン・イェルハルドセン」等、ここのところスウェーデン作家の作品が続いています… 北欧ミステリがマイブームですね。


    2007年に発表された「エリカ&パトリック事件簿」シリーズの第5作目… 「マヤ」が1歳の誕生日を迎え、「パトリック」が育児休暇を取得したというプライベートな設定が前回と変化した状況下で新事件の解決に挑みます。

    今回は、歴史家「エーリック・フランケル」の殺人事件の動機を探るうちに、青年時代(60年前)の「エーリック」の交友関係を調査することになり、その中で「エリカ」の母親「エルシ」(故人)が事件の鍵を握っていることが判明、、、

    「エルシ」が子どもたちに愛情を示さなかった謎を調べようとしていた「エリカ」が、この操作に深く関わってくる展開… 久しぶりに「エリカ」が直接的に推理に関わる展開でしたね。

    現代と60年前(1943年~1945年)のエピソードが交互に紹介されながら、徐々に真相に近づいて行く「カミラ・レックバリ」らしい展開で、700ページを超える大作でしたが、飽きずに愉しく読めました。


    本作は、前作『死を哭く鳥―エリカ&パトリック事件簿』のエンディングで示唆された「エリカ」と「アンナ」が母親の謎を調べようとする動きの続きとなっており、、、

    ○「エリカ」は4年前に交通事故で亡くなった母「エルシ」の箱を整理していたら若いころの日記帳や古いナチスの鉄十字勲章、幼児用のセーターを発見。

    ○「エリカ」は、ナチスの鉄十字勲章の鑑定を「エーリック」に依頼。

    ○若者が二人空き巣に入り、「エーリック」の死体を発見。

    ○育児休暇中だった「パトリック」だが、娘「マヤ」と散歩中に現場検証しているところに出くわして捜査に首をつっこむことに。

    ○「エリカ」は、「エルシ」の日記から、当時(60年前)に「エルシ」は殺害された「エーリック」や有名な極右活動家「フランス」、同年代の女性「ブリッタ」と親しくしていたことを知る。

    ○「エリカ」は、「ブリッタ」を訪ねるが「ブリッタ」はアルツハイマーを患わっており詳しい話は聞けなかったが「説明したかった、でも、できないでいたの……」、「昔の骨が。安らかに眠るようにしなくちゃ……無名の戦士が囁いている」と意味不明の言葉を伝える。

    ○そして、第二、第三の殺人事件が発生し、「エルシ」の旧友たちが次々に命を落とす…

    と、次々に新しい事実や謎が提示されます。


    次々と視点を変えながら物語が進展するところが「カミラ・レックバリ」作品らしい展開… これがなかなか効果的なんですよね。


    その後は、

    ○「エーリック」が50年間も送金を続けた相手がいたことが判明し、しかも受取人は最近死亡。

    ○「エルシ」たちの周囲に、当時、ノルウェーから避難してきたレジスタンスの「ハンス・オーラヴセン」という青年がいたことが判明。

    ○「エリカ」の推理をもとに第一次世界大戦時のドイツ兵の墓を暴いたところ、別な遺体が発見される。
     (本シリーズで墓を暴くのは三度目ですね… 今回は「メルバリ」が積極的に検察側を説得して驚きました)

    ○「エルシ」の遺した鉄十字勲章は「ハンス」の父親のもので、「ハンス」はナチス側の人物であったことが判明。

    ○「エリカ」には兄(義兄)がいたことが判明…

    と、新しい謎が提示されつつ、徐々に疑問や謎が解け、クライマックスで60年前と現在の出来事や犯行が一本の線としてつながります。


    そして切ない結末、、、

    「だって、愛さなければ、愛を失う危険性はないのだから。」

    この最後の一行に、心が締めつけられましたね。



    相変わらずサイドストーリーとして描かれるプライベート面の展開が秀逸、、、

    前作で失恋(結婚詐欺?)した「メルバリ」に新しい恋人ができたり、

    その恋人が新人警官「パウラ」の母親だったり、

    「パウラ」のパートナーは同性で、しかも妊娠→出産したり、

    「エリカ」と「アンナ」が妊娠したり、

    と、相変わらず続篇を読みたくなる巧い終わり方でした。



    以下、主な登場人物です。

    「エリカ・ファルク」
     伝記作家

    「パトリック・ヘードストルム」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事

    「マヤ」
     エリカとパトリックの娘
     
    「エルシ」
     エリカとアンナの母、故人

    「エーリック・フランケル」
     エルシの幼なじみ。歴史研究家
     
    「アクセル・フランケル」
     エーリックの兄
     
    「フランス・リングホルム」
     エルシの幼なじみ。極右運動家
     
    「シェル・リングホルム」
     フランスの息子。新聞記者
     
    「ペール・リングホルム」
     シェルの息子、フランスの孫
     
    「ブリッタ・ヨハンソン」
     エルシの幼なじみ
     
    「ヘルマン・ヨハンソン」
     ブリッタの夫
     
    「アンナ」
     エリカの妹、二児の母

    「ダーン・カールソン」
     漁師、教師、エリカの昔のボーイフレンドで現在はアンナのパートナー

    「クリスティーナ」
     パトリックの母

    「カーリン」
     パトリックの元妻

    「パウラ・モラレス」
     ターヌムスヘーデ警察署新人刑事

    「リータ」
     パウラの母、サルサの教師

    「ヨハンナ」
     パウラのパートナー(同性)

    「バッティル・メルバリ」
     ターヌムスヘーデ警察署署長
     
    「マーティン・モリーン」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事
     
    「ユスタ・フリューガレ」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事
      
    「アンニカ・ヤンソン」
     ターヌムスヘーデ警察署事務官 
     
    「トード・ペーデシェン」
     イェーテボリ警察管区法医学室監察医

    「アーンスト」
     メルバリに懐いている犬、元ターヌムスヘーデ警察署刑事の名前から命名

  • 自分の記録を見たら、シリーズのこの本の前作読んだの4年も前だった。いやはや!
    その間にこのシリーズ3冊も出てるし。
    覚えてるか不安もあったが主要な登場人物は割と思い出せるものだなーと。そしてやっぱり面白いし、引き込まれる。並行して読んでる日本の作品はなぜかのめり込めず…。このシリーズの魅力が再認識される。なんなんでしょう。
    事件の展開が興味深いのはもちろんだけど人間模様がそれ以上に興味深いのがこのシリーズの魅力なんでしょうかね。どの家族のあり方も考えさせられる。幸せなばかりの人生ではないけれど救いもある場面もありそれがジンとくる。
    エリカのお母さんは本当に辛い目にあって来て、エリカたちのお父さんと出会うことはできたあともそれをひきずっていたんですね。やるせない。
    ただ今回はメルバリがいい人?っぽくなっていての部分がほんわかした。

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