ザ・バット 神話の殺人 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (536ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087606881

作品紹介・あらすじ

オーストラリアで起きた連続女性殺人の捜査に当たることになったノルウェー人刑事ハリー。異邦人として捜査に苦闘するが、容疑者は二転三転する…。「ガラスの鍵」賞受賞の驚異のデビュー作、登場!

感想・レビュー・書評

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  • 『真夜中の太陽』、『その雪と血を』の世界観を求めて。
    前に読んだ『ヘッドハンターズ』はハズレだった。
    本作はハズレとまでは行かないが、期待していたのとは違う、レイプ殺人を追う比較的王道な警察物。

    ただ、ノルウェー作家のデビュー作であるにも関わらず本国ではなく、なぜかむしろ珍しいオーストラリアを舞台とした、しかも先住民族の話や土着信仰、伝承を強く織り込んだ物語という意外性あり。

    現地人で先住民族にルーツのあるアンドリューとの捜査の中に、この土地ならではの味わい、異国情緒を含めながらの展開がおもしろい。
    また、典型的なバディものと思わせておきながらの後半のひねり具合はなかなか。
    序盤の、何なのだろうこの場面はと思っていたオーストラリア観光めいた足取りがそんな風に回収されるとは。

    最後、アクションでカタを付けに行く大捕物はいかにもであまり好きではなかったかな。

    次はシリーズ3作目の『コマドリの賭け』(2作目は邦訳されていない模様)。

    ※オーストラリアのミステリが珍しいなと思って調べてみたら、ジェイン・ハーパーとかケイト・モートンとか既読の物も意外とあって驚き。
    そうかあれらの話はオーストラリアだったのか。

    • fukayanegiさん
      111108さん、おはようございます。

      コメントありがとうございます!
      ケイト・モートン、いいですよねー。自分のめちゃくちゃ好きな作家の1...
      111108さん、おはようございます。

      コメントありがとうございます!
      ケイト・モートン、いいですよねー。自分のめちゃくちゃ好きな作家の1人です。
      ケイト・モートンは、オーストラリア出身というわけではなく、『忘れられた花園』がオーストラリアを舞台とした作品です。

      是非そちらも本書、『真夜中の太陽』(これはノルウェーが舞台です)と併せてどうぞ!
      2023/09/24
    • 111108さん
      fukayanegiさんお返事ありがとうございます♪

      あら勘違い、恥ずかしい!オーストラリア舞台のお話なんですね。
      ケイト・モートンいいで...
      fukayanegiさんお返事ありがとうございます♪

      あら勘違い、恥ずかしい!オーストラリア舞台のお話なんですね。
      ケイト・モートンいいですよね。物語の世界に浸かれる感じで。『忘れられた花園』も面白そうですがやっぱり上下巻なんですね。じっくり読める時に挑戦します。
      そしてfukayanegiさんに教えていただいた北欧ミステリをかじりかけた私としては、ノルウェー作家も見逃せませんね♪
      2023/09/24
    • fukayanegiさん
      いえいえ、こちらこそ紛らわしくてすみませんm(_ _)m
      『真夜中の太陽』は激推しです!!
      薄いのですぐ読めるし。
      いえいえ、こちらこそ紛らわしくてすみませんm(_ _)m
      『真夜中の太陽』は激推しです!!
      薄いのですぐ読めるし。
      2023/09/24
  • バットっていったら、悪いやつとか連想するんだけど、この場合は「コウモリ」。
    それなら、「蝙蝠」とかいうタイトルにすればよかったのに。
    コウモリと原住民の神話の中に出てくる話とかをからめた物語。
    北欧ミステリの有名シリーズ物の第一作としては、かなり意表をついた作品。

  • ハリー・ホーレのシリーズ1作目。3と5作目を先に読んでたけど、その時よりハリーが明るく生気がある印象で意外だった。だから後半にハリーに起こる悲劇に妙に納得。
    プロットはよく練られてると思うけど、殺人犯の行動がちぐはぐに思えること、アンドリュー刑事の行動が異常に思えること、オーストラリアの警察がお粗末過ぎることが気にかかった。アボリジニの過酷な歴史の一端を伺い知れたのは良かった。

  • 「キューレターの殺人」の解説でハリー・ボッシュと似ていると書かれていたので。

    結論から言うと、似ていないと思う。

    オスロ警察の刑事ハリーは、
    ノルウェー女性の死体が見つかったオーストラリアへ派遣される。
    署長には余計な手出しをするなとくぎを刺されるが、
    先住民の刑事を相棒にあちこちをつついて回る。

    被害者と同じバーで働いていたスェーデン人女性と知り合い、
    恋愛関係になるのは良いが、
    彼女との関係がハリーを過去から救うのかと思いきや、
    結局彼女を囮にして失敗し殺されてしまうとは、ひどすぎる。

    オーストラリアという舞台が気に入らないのか、
    いやオーストラリア自体ではなくその描かれ方が気に入らないのか、
    神話の殺人、というタイトルの割には
    先住民の精神世界の扱い方が軽いからか、
    ハリーの推理に振り回されている感のせいか、
    禁酒が破られたからか、
    いま一つパッとしなかった。

  • 北欧ミステリの傑作、ハリー・ホーレ・シリーズの
    三作目以降(第二作は未訳)を通読するにあたって第一作をビルギッタとのエピソードを中心に読み直す。

  •  ミステリっていうレベルじゃない。
     オーストラリアで起きた殺人事件の捜査に、ノルウェーの刑事がやってくるところから物語が始まるのだが、もう、なんというか、登場人物たちのキャラの濃さだけで成り立っている(誉め言葉)。一筋縄でいく人物がほとんどいない。

     多面的すぎて、読んでいるとくらくらしてくる。
     そうして、このエンディングだよ! ああもうどうしてくれようってなる。ミステリだからって油断できない! 面白い! 切ない!

  • ノルウェーの刑事がオーストラリアでの殺人事件を捜査する、という設定が新鮮。前半は話がもたついている感じで、お決まりの恋愛模様があったりしてちょっとダレる(何でこういうミステリーってみんなこうなのか?読者サービス?)が、途中からどんどんページをめくりたくなる快調な展開となる。

    先住民族と白人の軋轢など、オーストラリアの抱える問題があぶり出されている所など、読みごたえがある。アル中の主人公、そこに至らせた過去の出来事、恋愛の行方、友情、先住民族の神話、多くの要素が盛り込まれているが、もっと焦点が絞り込まれていた方が良かったようにも思う。

  • 刑事ハリー・ホーレ・シリーズの第一作。オスロ警察の刑事ハリーはオーストラリアで起きたノルウェー人女性の殺人事件の捜査でシドニーを訪れる…オセアニアを舞台にした北欧ミステリー。

    マイクル・コナリーのハリー・ボッシュ・シリーズのような趣きもあり、二転三転のストーリー展開が面白い。しかし、いまひとつ決定打に欠けるような感じの作品。

  • 何か面白い本はないか…と本屋で手に取った1冊。
    以来10年越しで読了。

    ノルウェー人が主役の、オーストラリアが舞台という作品。不思議な魅力がありました。
    主人公に身近な人たちが、割とたくさん亡くなりすぎて悲しくなりましたが、お話の展開は面白かったです。

    タイトルの「ザ・バット」は蝙蝠のこと…つまり…。
    それから神話の殺人、は、ラストでようやく意味がわかる。オーストラリアの神話です。

    読書慣れしていない時期には読みにくい作品でしたが、今は比較的さらさら読めました。チャプターも細かすぎるぐらいに分かれていて、目標も立てやすかったです。

    読後感としては3.8くらい。
    何かが足りない感じがして。何かはわからない…(笑)
    でも、キャラクターは、主人公も脇役も魅力的でした。
    オットーとアンドリューが良かった。
    それから、オーストラリアの歴史、先住民のこと。あまりわかっていなかったので、もっと調べてみようと思いました。

    P78
    「先住民には、蝙蝠(ザ・バット)は死の象徴なんだ。(以下略)」

    P79
    「その瞬間、冷たい風が上から吹き下ろしてきて、邪悪な姿の何者かが巨大な黒い羽で彼女を包み込んだ。それは蝙蝠のナラーダーンで、パイアーメの信頼を得て聖なる木を守ってい たんだ。ベル・ローク・ボールンの妻は地面に落ち、洞穴へ逃げ込んで身を隠した。しかし、 もう誰かった。彼女はナラーダーンに象徴される死を世界に解き放ってしまい、ベル・ロー ク・ボールンの子孫は一人残らず、その呪いにさらされることになった。悲劇が起こったこ とを、イランの木は涙を流して嘆いた。涙は幹を伝って流れ落ちて凝固した。だから、いま、 その木の樹皮に赤いゴムを見ることができる、というわけだ」

  • 「ジョー・ネスボ」の長篇ミステリ作品『ザ・バット 神話の殺人(原題:Flaggermusmannen,英語題:The Bat)』を読みました。

    『スノーマン』に続きノルウェーの小説家「ジョー・ネスボ」の作品… 舞台は南半球のオーストラリアですが、ノルウェーの作家の作品で、主人公はオスロ警察刑事なので、北欧ミステリですね。

    -----story-------------
    オーストラリアで働くノルウェー人女性が死体で見つかり、オスロ警察の刑事「ハリー」は捜査協力のため、単身シドニーに赴く。
    「ハリー」も加わった捜査班の前に次第に浮かび上がる、隠れていた一連のレイプ殺人。
    犯人の目星は二転三転し、捜査班は出し抜かれては後手を踏む。
    さらに、封じ込めていた自身の過去が「ハリー」を苛みはじめる…。
    「ガラスの鍵」賞受賞に輝く驚異のデビュー作、登場。
    -----------------------

    本作品は刑事「ハリー・ホーレ」を主人公とした推理小説シリーズの記念すべき第1作目で、1997年に発表された作品… 国際推理作家協会北欧支部(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、アイスランド)主催の「ガラスの鍵」賞受賞に輝いた「ジョー・ネスボ」のデビュー作です、、、

    序盤~中盤の展開は、ややもどかしくて、なかなか進まない感じはしましたが、終盤の真犯人が判明してからの展開は面白かったし、「ハリー・ホーレ」の過去を知ることもできたので、収穫のあった作品でした。

     ■ワッラ
      ・1 シドニー
      ・2 ギャップ・パーク
      ・3 タスマニアデビル
      ・4 道化師(クラウン)
      ・5 スウェーデン人
      ・6 司教
      ・7 リスゴー
      ・8 ボクサー
      ・9 クラゲ
      ・10 ニンビンという町
      ・11 売人
      ・12 とても大きな蜘蛛
      ・13 バッバー
     ■ムーラ
      ・14 ドレッシング・ガウン
      ・15 統計上の優位性
      ・16 魚
      ・17 無主地(テラ・ヌリウス)
      ・18 ポン引き
      ・19 愉快な売春婦
      ・20 クリケット
      ・21 酔っぱらい
      ・22 二人の露出魔
      ・23 黒蛇(ブラック・スネーク)
       ・24 ホオジロザメ
      ・25 ミスター・ビーン
      ・26 もう一人の患者
      ・27 処刑
      ・28 猟師
      ・29 ビルギッタ、服を脱ぐ
      ・30 チンギス・ハン
      ・31 肥った女性
      ・32 チャトウィック
      ・33 病理医
      ・34 フログネルの屋外プールの跳び込み台の上
      ・35 旧敵、目を覚ます
      ・36 部屋係
     ■バッバー
      ・37 二人の大男
      ・38 スピーディという男
      ・39 幸運の国
      ・40 スカイダイビング
      ・41 バロック様式のソファ
      ・42 訪問者
      ・43 大魚
      ・44 アンドンクラゲ
      ・45 仕返し
      ・46 餌
      ・47 データ
      ・48 計画
      ・49 公園の小径
      ・50 気取り屋の要素
      ・51 ワライカワセミ
      ・52 コンピューター
      ・53 蜥蜴が歌っている
      ・54 優秀な耳
      ・55 左ストレートと三発
      ・56 タトゥー
      ・57 四千フィート、そして、終わり

     ■訳者あとがき 戸田裕之

    ノルウェーの首都オスロ警察に奉職する「ハリー・ホーレ」は特殊な任務を帯びてオーストラリアのシドニーにやってくる… この地で「インゲル・ホルテル」というノルウェー人女性の他殺体が発見されたのだ、、、

    オーストラリア先住民の「アンドリュー・ケンジントン」というベテラン刑事とコンビを組んだ「ハリー」は、犠牲者が現地で「エヴァンズ・ホワイト」という男性と親密になっていたことを知る… 「エヴァンズ」は麻薬売買に関与している評判の悪い人物だった。

    さらにシドニー警察のデータベースは、捜査陣のために新たな事実を掘り出してくる… シドニーのあるニュー・サウス・ウェールズ州で過去十年間に起きた未解決の殺人事件の中に、「インゲル」殺しと共通する要素を持つものが四件存在したのだ、、、

    被害者は全てブロンドの女性で絞殺されていた… 「ハリー」は「アンドリュー」と行動をともにする中で、現地のさまざまな風俗や文化、先住民族が移住民である白人から受けてきた差別等について教えられる。

    二人は、重要な容疑者であり、調べれば調べるほど疑いの高まる「エヴァンズ」を追うが、決定的な証拠を掴めない… 捜査を進めるうちに「ハリー」は「アンドリュー」が事件の鍵を握る事実を知っているが、それを隠していると感じるようになる、、、

    そして、「アンドリュー」の知人で同性愛者の道化師「オットー・レヒトナーゲル」が新たな容疑者として浮かび、「オットー」を逮捕しようとした直前、「オットー」は何者かに殺され、さらに「オットー」の自宅では「アンドリュー」が自殺していた… 連続レイプ殺人の犯人は「オットー」で、その事実を知っていた「アンドリュー」が「オットー」を殺害して自殺したのかと思われたが、「ハリー」には違和感があった。

    「ハリー」はアルコールに溺れ、ノルウェーへの帰国予定まですっぽかしてオーストラリアに残ってしまう… しかし、ある事実に気付いた「ハリー」は独自に捜査を進め、真犯人に接触する、、、

    犯人は「ハリー」のガールフレンドでスウェーデン人の「ビルギッタ・エンクヴィスト」を誘拐し、「ハリー」に対して「エヴァンズ」に罪をなすりつけることを提案するが… クライマックスのシドニー水族館の攻防は、なかなか迫力があり、エンターテイメント作品として愉しめました。

    「アンドリュー」は犯人に気付いていたけど、同じ先住民族の血をひいており、親子のような関係を持った人物だったので、自分では逮捕できなかったんですよねぇ… 哀しい、、、

    シドニー水族館から逃亡し、「ハリー」に銃撃されてホオジロザメのいる湾へドボン… この先は書かなくても想像できますよね。

    悲惨な最期でした、、、

    刑事「ハリー・ホーレ」シリーズの第1作を読んだので、少しずつ過去の経緯もわかってきました… 他の作品も読んでみたくなりましたね。




    以下、主な登場人物です。

    「ハリー・ホーレ」
     オスロ警察刑事、ノルウェー人

    「アンドリュー・ケンジントン」
     シドニー警察刑事

    「ニール・マコーマック」
     シドニー警察署長
     
    「ラリー・ワトキンズ」
     シドニー警察刑事、インゲル・ホルテル事件捜査班長

    「セルギー・レビエ」
     シドニー警察刑事、捜査班員

    「ヤン・スー」
     シドニー警察刑事、捜査班員

    「インゲル・ホルテル」
     シドニーで殺害されたノルウェー人女性

    「ビルギッタ・エンクヴィスト」
     <オルベリー>で働くスウェーデン人女性

    「アレックス・トマロス」
     <オルベリー>の支配人

    「オットー・レヒトナーゲル」
     道化師、異性装者

    「ロビン・トゥンバ(ザ・ムッリ)」
     フィリープの妻

    「ハンター・ロバートソン」
     インゲルが住んでいたアパートの大家

    「エヴァンズ・ホワイト」
     インゲルのボーイフレンド、麻薬の売人

    「アンジェリーナ・ハッチンソン」
     エヴァンズのガールフレンド
     
    「マーガレット・ドーソン」
     エヴァンズの母

    テディ・モンガビ」
     ポン引き

    「サンドラ」
     売春婦

    「ジョゼフ・ウォルター・ロダーリーグ」
     公園にいる酔っ払い

    「ドクター・エンゲルソーン」
     病理医

    「ロニー・スティアンセン」
     オスロ警察刑事、ハリーの元同僚

    「クリスティン」
     ハリーのかつてのガールフレンド

    「ジム・コノリー」
     元ボクサー

    「クローディア」
     ジムの妻

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