天国の囚人 (集英社文庫)

  • 集英社
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レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087606911

作品紹介・あらすじ

1957年バルセロナ。青年ダニエルと友人フェルミンは書店員として生活していたが、実はフェルミンには監獄での壮絶な過去があり…。人々の因縁を巡る、『風の影』で世界的ヒットを博したシリーズ第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • スペインのベストセラー作家サフォン。
    「風の影」「天使のゲーム」に続く「忘れられた本の墓場」シリーズ4部作の3作目。
    前2作よりはだいぶ薄いので、迷宮のような重厚さ複雑さはややシンプルに。
    妖しい雰囲気と登場人物の哀しいまでの純粋さは同じです。

    スペインでは内戦が終わって間もない1957年、バルセロナ。
    ダニエルはその名も「センペーレと息子書店」という父の書店で働いています。
    怪しげな雰囲気の男が書店に現れ、親友フェルミンへメッセージを残します。
    フェルミンは結婚を間近に控えているのですが‥?

    フェルミンが語り始めた過去は。
    18年前、監獄に入っていたこと。そこで出会った作家マルティンのこと。
    彼と交わした約束のこと‥
    内戦とフランコ独裁の様相は、日本人には想像を絶します。
    若いダニエルにとっても、それは実感はできない話。

    フェルミンが獄を出たとわかっているからまだ読むのに耐えられる獄中の話と、鬼気迫る脱出行。
    そして、ダニエル自身の思わぬ問題と戸惑い。

    前作が非常に描写の細かいややこしい話なので、具体的にはどこまで覚えているのか‥記憶にちょっと自信がありませんけど‥
    サフォンのこの、水気が多い筆で描いたような、独特な陰影に富んだ華麗さ。
    どこから出てくるものなのでしょう。
    酔わされる心地を堪能しました☆

  • 「忘れられた本の墓場」シリーズ3作目。てっきり三部作だと思い込んでいて、集大成なのにこんなに短いのかと残念に思い、すぐに読み終わっちゃうのは嫌だしと、前作『天使のゲーム』から読み直し。前作は恐ろしい話だったので気が進まなかったけれど、マルティンに感情移入した状態で読めたので大正解でした。そして『天国の囚人』が、これまでの二作とは対照的に、登場人物の心情描写よりもフェルミンの脱獄劇や救出され回復してゆく過程、マルティンとの約束などなどの冒険物語がテンポよく劇的に進んでいくのでとても読みやすかったです。サフォンならではの不穏で妖しい雰囲気はありつつもフェルミンの人柄で作品全体が柔らかい感じになっています。シリーズは三部作じゃなくて四部作だったし、読後感は爽やかで明るいし、良い気分で大変満足して読了しました。四作目が本当に待ち遠しいです。それを楽しみにしながら、これからまた『風の影』を読みます。

  • 内戦終了後間もない1957年のクリスマスを目前に控えたバルセロナ、旧市街にある「センベーレと息子書店」を訪れたのは、古臭い仕立ての黒い背広を着て杖を突いた年寄りだった。猛禽を思わせる目をした男は鍵つきの書棚から『モンテ・クリスト伯』を選ぶと、不自由な手でメッセージをしたためた。《死者のなかからよみがえり、未来の鍵をもつフェルミン・ロメロ・デ・トーレスへ。十三より》と。使用人で店主の息子ダニエルの親友でもあるフェルミンに本を贈ったのはいったい何者、不吉なメッセージは何を意味するのか。

    心配するダニエルの問いに重い口を開いたフェルミンがぽつぽつと語り始めたのは、内戦からフランコ独裁に至るスペインの歴史の暗闇のなかに隠されていた悲惨きわまる物語だった。権力が推移するたび、現政府は前政府の関係者を次々と監獄送りにした。おかげで当時のスペインでは囚人の数が膨れ上がったが、そのなかにはフェルミンのように前政府の下で働いていた者ばかりではなく、政府批判をしたという理由で収監された作家や医者といった普通の市民も多かった。

    『モンテ・クリスト伯』を模したフェルミンの脱獄とその後の『レ・ミゼラブル』ばりの逃亡生活は、敬愛するデュマやユゴーに捧げる作家のオマージュだろう。冒頭に登場するサルガドのような傍役にいたるまで登場人物の容貌や性格の輪郭がはっきりしているので感情移入しやすい。前二作にあった複雑に入り組んだ構成は影をひそめ、血湧き肉踊る19世紀ロマン主義小説の作風で通している。主人公が少年の面影を残す純情な人物であるだけに、話を面白くするには脇を固める人物に個性的な面々が必要になる所以である。饒舌で多方面に顔が利き、何でもこなすダニエルの良き相棒フェルミンは以前から気になる人物であったが、今回は、このトリックスター的な人物に光を当てることにより、バルセロナの闇が愈々際立つ。

    世界中でベストセラーとなった第一作『風の影』、第二作『天使のゲーム』につづく「忘れられた本の墓場」シリーズ四部作の第三作。四部作のグランドデザインを描く『風の影』でラフ・スケッチにとどめ置かれた部分に光を当て、細部をふくらませ、小説の厚みを増した。迷宮のようなバルセロナの街のどこかにある「忘れられた本の墓場」をめぐる幾重にも折りたたまれた入れ子状の物語のなかでは、比較的シンプルなストーリー展開。フェルミン自身の物語による回想部分を含めても、前二作のもつ複雑な構成とは一線を画す読みやすさだ。分量も半分におさえられているのは、ひたすら怒涛のように最終巻にのめりこむために一息入れる役割を果たしているのかもしれない。

    バルセロナ・ゴシックとでも呼びたくなるような独特の怪奇・残酷美に溢れるサフォンの世界だが、奇を衒っている訳ではない。住民投票の結果を見ても分かるように、スペインからの独立を強く希求するカタルーニヤ。内戦の混乱、その後のフランコ独裁に締め付けられ、忍従しつつ生き延びてきたカタルーニャの人々には、曰く云い難い日々の記憶が層を成して堆積しているのだろう。それだけに、人々の生や愛に寄せる思いは強く、願いを遂げる意志には熱いものがある。宗教的立場や政治信条の差異が生死を分ける日常の中で、他人と自分の命を秤にかけるような毎日を生き抜いてきた人々の物語は時に怪しく、時に酸鼻を極めるものともなろう。

    一つの小説のなかに、別の作家の手になる物語が入れ子状に仕組まれ、物語世界の動きが現実世界に影響を与え、今を生きる人物の行動が物語に反映するという、トポロジカルでメタ小説的な小説構造。どこから入っていっても最後に待つのは「忘れられた本の墓場」であり、物語はそこからいくつもの時代、数え切れない登場人物の生活へと延びている。バルセロナという都市の地下に埋もれた歴史の層を蟻の巣のように迷宮化してしまう四部作。本篇だけ読んでも充分に楽しめることはうけ合うが、おそらく、これを読めば他の二編と、刊行の待たれる最終巻も読みたくなるだろうことはまちがいない。

  • 全部で四部作であると言う三作目。
    一部と二部はほんの少し繋がりがあるか、と言う具合だったけど、三部になってから一気にそれぞれの登場人物が出て来て、どう繋がって行くのが興味深い。

    話しはそれぞれの部で完結しているとのことだが、これは四部がすごく気になる。二部のどんでん返しに疑問が出て来るし、どの見方をするかで話の内容が変わってしまいそうなくらい。

    舞台はスペインで、小説はスペインの内戦とフランコ独裁を通り抜けている。この時代の背景がスペイン人の人達の心にどう落とし込まれたか、主人公や登場人物の心や人生にも大きく関わっているのがよくわかる。

    作品の中のスペイン人達の会話が面白い。とってもまわりくどい情熱的な比喩を使いまわしながら、普通に会話をするのが、いいなあと感じる。

    「ツケがききますかねえ?」「神様でもお断りです」なんて言い方出来るなんていいなあと思う。

  • これぞ小説のなかの小説、まさに王道を行く面白さ。唯一の不満は、第3弾の本書が前作に比べて分量が物足りなかったことで、もっと読みたいぞ、サフォン。恨めしいのは、自分の記憶の不確かさで、ちょいちょい脇役やサイドストーリーの巧みな伏線を読み飛ばしてるのではと不安にさせられた。これはもう完結編である次作が出たら、もう一度シリーズを最初から読み直すしかない。はやく次が読みたいとはやる気持ちと、次読んじゃうとこの物語世界も終わっちゃうんだからもう少し先でいいという、二律背反した思いに引き裂かれる。

    フェルミンがダニエルを叱るシーンが特にいい。内戦時のことを語らない父を批判する資格はない、と。「父上はね、あの時代に生きることになった大勢の人といっしょで、ぜんぶ呑みこんで口をつぐんだ、それより方法がなかったんです。誰もが、あの痛みを何十年となく胸に抱えて、自分の一生をふいにした。そうすることで、きみや、きみみたいな人たちが生きつづけられるようにです」終戦の日を前に、何でも語り伝えることが推奨される一方で、困難な時代を生き抜いたことにあえて口をつぐむ姿勢を尊重するのも大事ではないかと考えさせられる。

    今回もハッとさせられる言葉の数々。
    「未来は望んで来るもんじゃない、生きてきた結果としてあるんです」
    「思ったとおりですよ。神のほうが、きみのことを信じている」
    「男の人って、街角で売ってる焼き栗みたいなもんじゃない? 買うときは、みんなホカホカで、いいにおいがするんだけど、袋から出したら、すぐ冷めちゃって、割ると、ほとんど中身が腐ってるのよ」

  • 読み終わってしばし茫然。なかなか物語の世界から帰って来られない。時代も場所も一気に飛び越えて、連れていかれる。2作目で少し中弛みしてたのですが、この作品で前の2作がブリッジされて、俄然面白くなってきた。前のを読み返したい衝動に駆られる。この複雑な感情を喚起する感じ、映像ではちょっと味わえない。読書の楽しみを知りたいなら、読んでほしい。

  • 前作と違って、暗くどんよりした色が薄く、読みやすい。
    このシリーズは映画を見たような読後感があると思う。スペイン、行ったことないくせに笑

  • 面白かったですね。
    すべてが繋がっているので、
    1作目の「風の影」はもう内容も忘れてるところもあるので
    もう一度、読み返そうと思っています。
    次が、早くも待ち遠しい・・・

  • 1957年、バルセロナ。父の書店で働く青年ダニエルは、結婚間近の親友フェルミンの様子がおかしい事に気づく。彼宛に不可解なメッセージを残す謎の男の来店もあり、友人を問い詰めると、フェルミンは自らの過去を語り始めた…。18年前、監獄に収容された事。そこで出会った作家マルティンの事、彼と交わした約束の事―『風の影』『天使のゲーム』をつなぐ、「忘れられた本の墓場」シリーズ第3弾!

  • 『風の影』のサイドストーリー。
    フェルミンが好きなので面白かった。

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