贖い主 下 顔なき暗殺者 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087607451

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  • ノルウェーの作家「ジョー・ネスボ」の長篇ミステリ作品『贖い主 顔なき暗殺者(原題:Frelseren、英語題:TheRedeemer)』を読みました。

    『コマドリの賭け』に続き「ジョー・ネスボ」作品です… 北欧ミステリが続いています。

    -----story-------------
    〈上〉
    クリスマスシーズンのオスロで、街頭コンサート中の救世軍のメンバーが射殺された。
    オスロ警察警部の「ハリー」はこの件の捜査に当たるが、衆人環視のなかの事件なのに目撃証言がまったく得られないことに疑問を抱く。
    一方、暗殺の実行犯は、すぐにオスロから脱出しようとするが、降雪で航空便が欠航になり、一晩滞在せざるを得なくなる。
    翌朝、新聞を目にした彼は…。
    傑作北欧ミステリー。

    〈下〉
    救世軍メンバー射殺事件の捜査チームは、犯人を特定し、クロアチア人の男を指名手配する。
    その男は、契約を全うするため、厳寒のオスロで過酷な逃避行を続けながら、本当のターゲットを繰り返し狙う。
    だが、名前が割れ、パスポートやクレジットカードが使えなくなり、手持ちの現金も底をつく。
    さらに、銃弾を使い果たしたために…。
    CWAインターナショナル・ダガー賞候補の傑作!
    -----------------------

    本作品は警部「ハリー・ホーレ」を主人公とした推理小説シリーズの第6作目で、2005年(平成17年)に発表された作品…  本国ノルウェーでシリーズは第10作目まで刊行されているようですが、翻訳されているのは、そのうち6作品(第1作目、第3作目~第7作目)で、間が飛んで翻訳されているし、翻訳順も発表順とは異なるのでわかりにくいシリーズなんでが、これで翻訳された全作品を読了です、、、

    ちなみにこれまでに第7作目『スノーマン』、第1作目『ザ・バット 神話の殺人』、第4作目『ネメシス 復讐の女神』、第5作目『悪魔の星』、第3作目『コマドリの賭け』の順で読んできました… むっちゃ面白いシリーズなので、未翻訳の4作品も翻訳してほしいですね。

     ■第一部 出現
     ■第二部 贖い主
     ■第三部 磔(はりつけ)
     ■第四部 慈悲
     ■第五部 エピローグ
     ■解説 右の脚は北欧に、左の脚はアメリカに 川出正樹

    いやぁ… 相変わらず面白かった、これまでに読んだ本シリーズの中では最高傑作じゃないですかねー

    序盤は複数の視点で物語が重層的に織り成され、中盤で物語の展開がスピードアップし、終盤に意外な真相が明らかになり、カタルシスを感じるエンディング… 「ハリー」とクロアチア人の「顔のない殺し屋」との間で緊迫感あふれる追跡劇が繰り広げられる、スリリングなサスペンスミステリに仕上がっており、ホントに愉しめました。


    1991年(平成3年)8月、オスロ近郊のエストゴールの森で行われていたノルウェー救世軍のサマー・キャンプに参加した14歳の少女が、深夜、何者かによって暴行される… そして、12年後、クリスマスまで10日余りとなった2003年(平成15年)12月14日の日曜日の夜、三人の男がそれぞれの目的に向かって赴いていた、、、

    一人はオスロ警察刑事部の警部「ハリー・ホーレ」、もう一人はノルウェー救世軍の青年大尉「ヨーン・カールセン」、そして、最後の一人はクロアチア共和国から来た年若き殺し屋… 「ハリー」は薬物中毒者「ペール・ホルメン」の両親に、2時間ほど前に港のそばのコンテナの中で「ペール」が死後かなりの時間が経って発見されたことを伝えるために、「ヨーン」は薬物中毒者が暮らすアパートに食料を届けるために、殺し屋はパリの高級住宅に住むターゲットを始末するために寒空の下、街を行く。

    序盤は、この三人の物語が交わらず並行して展開します… 「ハリー」は誰もが自殺として疑わない「ペール」の死に対して違和感を覚え独自に捜査を進め、「ヨーン」は恋人「テア・ニルセン」に年子の弟「ロベルト」が彼女に対して異常な執着を示していて、このままだと何をするか判らないと打ち明けて悩み、殺し屋は最後の仕事として請け負ったオスロでの救世軍兵士殺害の準備を着々と進める、、、

    そして、氷のような冷たい風が吹き荒れ雪が降る12月16日の夕刻、クリスマスを前にして賑わうオスロの繁華街で名の売れたバンドがチャリティーコンサートを行っていた只中、救世軍の社会鍋(クリスマス・ケトル)のそばに立っていた「ロベルト」が射殺される… 大勢の目撃者がいたはずなのに犯人につながる情報が全く得られず、犯行動機も皆目、見当がつかなかった。

    一方、すばやく国外(クロアチア)に脱出しようとした犯人だったが、大雪のため航空機が欠航となりオスロに足止めされ、しかも、翌日の新聞で自分が殺した人物は狙った人物とは別人であることを知り、本来の目的を果たすために、再び暗殺を実行しようとする… 中盤以降は、「ハリー」を中心にした警察の捜査、暗殺犯の孤独な戦い、被害者を巡る人間関係という、3つの物語が並行しつつ、絡み合いながらスピーディに展開、、、

    犯行動機や犯人像に関わる謎解きと、警察官、暗殺者、宗教者それぞれが抱えている社会的な問題が重なり合い、単なる警察小説では終わらない深みが加わわった作品に仕上がっていましたね… さらに、最後の真相解明も衝撃的で、謎解きについても高レベルで愉しめましたね。

    まさかねぇ… 被害者と思っていた人物が、事件の元凶となる悪役だったとはね、、、

    終盤は、殺し屋の方に感情移入しちゃって、思わず応援してしまいましたね… 殺し屋の最後の仕事を見逃す「ハリー」の判断にも共感、他の作品にないほど「ハリー」の魅力にも、どっぷり浸かってしまいました。

    作品中に大好きなミュージシャン… 「ザ・クラッシュ」や「ザ・キュアー」の「ロバート・スミス」、「ザ・ザ」、「トム・ウェイツ」等がちらっと登場するのも共感できる要因のひとつかもしれませんね。



    以下、主な登場人物です。

    「ハリー・ホーレ」
     オスロ警察警部

    「ヤック・ハルヴォルセン」
     オスロ警察刑事

    「ペアーテ・レン」
     オスロ警察鑑識課長

    「マグヌス・スカッレ」
     オスロ警察刑事

    「ストーレ・アウネ」
     刑事部付きの心理学者

    「ビャルネ・メッレル」
     オスロ警察前刑事部長

    「グンナル・ハーゲン」
     オスロ警察新刑事部長

    「シヴェット・ファルカイト」
     警察特殊部隊<デルタ>隊長

    「ダーヴィド・エークホフ」
     ノルウェー救世軍司令官

    「マルティーネ・エークホフ」
     ノルウェー救世軍兵士、ダーヴィドの娘

    「リカール・ニルセン」
     ノルウェー救世軍士官

    「テア・ニルセン」
     ノルウェー救世兵士、リカールの妹

    「ヨーン・カールセン」
     ノルウェー救世軍士官

    「ロベルト・カールセン」
     ノルウェー救世軍兵士、ヨーンの弟

    「ソフィア・ミホリェッチ」
     クロアチア難民の少女

    「ペール・ホルメン」
     薬物常習者

    「ビルゲン・ホルメン」
     ペールの父

    「ペルニッレ・ホルメン」
     ペールの母

    「アルベルト・ギルストルプ」
     ギルストルプ証券経営者

    「マッツ・ギルストルプ」
     アルベルトの息子

    「ラグニル・ギルストルプ」
     マッツの妻

    「トーレ・ビョルゲン」
     レストラン<ビスケット>のウェイター

    「クリスト・スタンキッチ」
     クロアチア人の殺し屋

    「クリストッフェル」
     薬物常習者

    「ラケル・ファウケ」
     ハリーのかつての恋人

    「オレグ」
     ラケルの息子

    「マティアス・ルイ=ヘルゲセン」
     救急外来の医師

  • (上巻より)

    射撃犯の重い過去にひっぱられて、
    すっかり動機は復讐だと勝手に思い込んでしまい、
    プロの殺し屋だということを認識するのに時間がかかった。

    その殺し屋が本来のターゲットを殺すまでと、
    泊まる場所を、お金を、銃を失い、オスロの町を逃げ回り、
    寒さに震え、犬にかまれたりとしているうちに、
    何だか可哀想になってしまった。
    だが、ベアーテでも認識できないぐらい、
    顔の筋肉が発達していて顔を変えられるという設定は
    ちょっと盛りすぎ。

    そして、ハリーの守護天使であった上司が、
    転勤してアルコール依存症になり、
    金品を受け取っていたとハリーに告げるとは、
    何とも唐突だし、がっかりした。
    そして、結局「殺人」を見逃すハリーも、
    理由や経緯はどうあれ、
    同じ穴のムジナではないのか。

  • 6月24日読了。図書館。

  • ハリー・ホーレのシリーズ6作目。クロアチアからオスロで仕事を済ませた暗殺者は、標的を間違ったことに気付く。本当の標的を殺すために苦闘する暗殺者と、それを阻止しようとするハリーたち警察。一方で殺された救世軍の兵士とその周囲の人間には、それぞれ秘密があった。
    相変わらず一匹狼のハリーのみならず、犯人を含め登場人物たちのキャラが魅力的。細かい説明がなくても、性格や考え方を端的に描写する文章が上手いなと感じる。ハリーの同僚や上司にも色々起こるし、このシリーズの先が楽しみだ。

  • 上巻とまとめて。

    翻訳小説読むときは登場人物の名前に慣れることに時間がかかるため、上巻に時間がかかる。今回も。
    登場人物が多い&視点が切り替わるのでなかなか上巻前半は時間がかかってしまった。
    慣れてきて話も進んできた下巻は一気に読み終えた。
    読み終わると、枠組みはよくあるものだなと気づいたけど、読んでいるときは振り回されていたような感じ。
    面白かった。

  • ハリー・ホーレシリーズの中ではやや冗長かつややこしい感じがした。

  • 安易なミスリード、騙される人いるんかな。
    それでも読ませる力技。面白い。

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