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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784087607802
作品紹介・あらすじ
性別なき聖職者、記憶を伝え話す鳥、マンモスの軍隊──圧倒的想像力で紡がれる革命的ファンタジー。2021年ヒューゴー賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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聖職者チーが旅をしながら歴史を集め、記録する。
語られる歴史がほんの一部でしかなく、ひと続きの歴史を順に追っているのではないことや、主人公が当事者にならないファンタジーは珍しいなと思った。
表題作は、とある王朝の追放された皇后の伝説について、その思い出の品を手に、聞かせてもらう。
いくつもの品から断片的に歴史を知るのは、好奇心を刺激される。
それぞれのエピソードを繋ぎ合わせて見えてくるものがあり、パズルのピースがはまるような小さな達成感もあった。
「虎が山から下りるとき」は、三頭の虎に追い詰められたチーが、ある虎の伝承を語ってその場をしのぐ、千夜一夜物語のようなスタイル。
チーの話は虎たちの知る内容とは違うようで、人間に伝わる話と虎に伝わる真実との違いが面白い。
伝承の中で、直截的な言葉を使わないで愛を伝えているところがいいと思った。
シリーズ化しているそうなので、日本でも続きが出版されたらぜひ読みたい。 -
最近こういうのは読んでなかったのだけど、カバー絵が素敵だったので買ってしまいました。トラと同じ気持ちで、それで?それで?って次の展開が気になって一気に読みました。帯にも書いてあったけど、「皿のように平らな顔」ってのは、我ら平たい顔の一族のことかね。
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1本目は読みにくく、「これは挫折するかも」とすぐに思いました。
でも内容は、皇后の辛酸を嘗めた歳月の長さを肌で感じるようだったし、舞台となる架空の世界も、西洋よりは私たちにもう少し近い国の話のようであり、なかなか味わい深かった。
2本目は逆に、どうなるのか先が気になって一気に読めました。聖職者たちと一緒に焚き火を囲み、その話に夢中になって耳を傾ける1人になった気分になりました。
夜に読んだのも良かったのかもしれない。
時間がたっぷりある時に、気長に読む本かなぁ。 -
2021年のヒューゴ賞中長編部門を受賞したファンタジー作品。著者であるアジア系アメリカ人女性の描き出す世界は中国やチベット、中央アジア、小アジアに近いような世界観で、まだ亡霊や人に変態する虎や、古代象(マンモス)などが普通に出てくる。内容的にはタイトル作の「塩と運命の皇后」と「虎が山から下りるとき」の二編がおさめられている。主人公となる大寺院の聖職者、チーが物語を語り、そして物語を聞いて記録することを職務としており、その行為が二篇とものキーとなる。魅力的な物語(の中の物語)と、エキゾチックな世界観に、続編の刊行を望まずにはいられない。
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歴史と記憶を語れる人、人知れず朽ちて行きつつある記録と遺物を求め、筆写と口伝でありとあらゆる情報をその身に宿し続ける、ひとりの聖職者と相棒の大鳥の旅の二編が収録された短編集
異国から輿入れし、子を成した後に離宮に追放され、廃妃の身の上から至尊の位に登り詰めた女性の物語の『塩と運命の皇后』
科挙に似た国家試験を受けるために旅立った女学生が、人に変じる雌虎に見初められ、知恵比べや恋の駆け引きめいたやり取りを重ねつつ、己の進退を選びとる『虎が山から下りるとき』
前編は、かつて皇后の忠実な侍女であった老婆の昔語りを聞く形で、徐々に皇后のたどった運命の真実が垣間見える推理ものの風味で
後編は人に伝わる女学生と雌虎の物語と、虎に伝わる
大いなる雌虎と女学生の物語が交互に語られ、その差分を吟味する内容になっており、どちらも緊迫感と好奇心が強く刺激される、魅力に溢れている
雄大な歴史の転換期における隠された真実と、市井の民話の異類婚姻譚が同居してそこにあり、記録を奉じる聖職者チーの興味がどちらにも等しく注がれていて、読者としてそれが嬉しく、知りたい、解き明かしたい、というシンプルな欲求が果てなく沸き上がる濃密な読書体験ができた
表紙絵は、発する言葉が動物の形を取る物語や、遠野物語の漫画化などを手がけている鯨庭さんが担当されているのも素晴らしい まさにこの小説の世界観とのシナジー効果が生まれている
1点だけ気がかりなこととして、登場する主な人物及び性愛を含む恋愛関係は全て女性同士の逸話ばかりであることが挙げられる
個人的には百合ものは大好きだけど、歴史の影に消えて忘れ去られてしまうかも知れない記録を集める、という教義の聖職者であるチーは、まさか百合ネタを選んで収集してるの? とちょっと邪推してしまった
(じゃあ自分はBL探しの聖職者をやって、チーと記録の見せあいっことかしたいわ)
実際には、チーが見出だした逸話は、偶然の巡り合わせにより出会うべくして出会えたもので、そこに作為は無いはずなので、百合収集というセンはないはず
でも、だとしたら、男性性の排除とすら見えるほど、男性の存在感が希薄な物語なので、次巻はどうなってるのか凄く気になるのだった -
歴史収集を任務とする聖職者が聞き取った皇后の話と、虎を相手に語った話を題材にした2本からなる。自分の当たり前とは違う世界が書かれるなかなか興味深い話でした。
https://historia-bookreport.hatenablog.jp/entry/2023/01/13/231815 -
ファンタジー世界のなかで語られる伝承や伝説を聞き取るという、入れ子構造のような濃密なファンタジー作品集。
舞台となる現在の時系列のファンタジーの世界観ですら全容が語られていないのに、さらにその世界のなかの伝承や伝説にフォーカスを当てます。
書く側からするとかなりの想像力と強固な世界観が必要となる作品に違いない。
それなのに作品の世界観に破綻を感じることもなく、自然と話に入っていけました。
何気ないふうに物語は展開していくけど、実はこれって相当すごいことをしている作品なのではないかと思います。しかも中・短編のページ数で……
収録作品は2編。追放された皇女の伝説をかつての侍女が語る表題作と、言葉を話す虎が、人間界に伝わる虎の伝説を語り直す『虎が山から下りるとき』
表題作は侍女の語りを通して、皇后の気品や存在感がくっきりと浮かび上がる。
世界観や話の展開はもちろん、何より侍女の語り口がよかった。懐かしさのなかに憧れや恐れといった様々な感情を秘められているのをなんとなく想像させる。そのすごみを感じます。
『虎が山から下りるとき』の試みも面白い。人間と虎。同じ伝説が伝わっていても、そのニュアンスや話の細部は大きく違っていて、それをすりあわせていくと伝説がまったく違ったかたちに変わっていく。
ミステリ的な面白さもあるし、一種の恋愛もの、寓話としてもそれぞれの見方から解釈が分かれていくのが面白く読めました。
作品の出来については文句なしだけど、惜しむらくは収録作品の少なさ。2編ではあまりに物足りない…。
4~5編作品が収録されていれば、間違いなくこの世界にはまりきっていました。 -
これはこれは極上のシノワ風味ファンタジー。転生したら後宮の悪役令嬢みたいな流行りのエセ中華とは違います。
2編の中編からなり、これがほぼデビュー作とちうから恐るべし。歴史伝承を記録する役割で各地を旅する年若い聖職者チーを中心に、愛と裏切りの逸話が語られていく。
世界観や道具立てもよいが、女性が徹底的に主役であるところがうれしい。時には女つーか雌虎と愛を交わしたりね(姿は人だが)。
これは漫画にするなら、諸星大二郎先生にオドロエロく描いてほしいわあ。
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少し流れに乗るまで慣れが必要だった(表題作の構造として、まず語られるエピソードにまつわる品物のリストが置かれるところで止まってしまう)が、支配者として奪う性を持つことを自覚自認している皇后の、語り手に対する宣言にはじんときた。
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アジアンなファンタジー
まさかの百合小説でした。 -
図書館で。
主人公がどういう人たちで、どこに行って何をしているのか、という事があまりわかってないままに老女の話が始まるので色々と?と思いながら読みました。そういう意味では世界観がまるで入ってこないので、お話に入り込むまでとっつきにくかったです。封鎖されていたってどういう事なんだろう。赤く光る池とか。
てっきりファンタジーなのかと思ったらそうでもない感じで、外国から嫁がれた皇后の処遇は人道的になってないの一言に尽きる気がする。でもその中でもしたたかに生き延び、機会を待つ姿はたくましいし強いなと思いました。
虎の話は面白かったです。死なないでヨカッタ。 -
ストーリーはつまらなくないのに、「アジアっぽい」「異国っぽい」を切り貼りしすぎという印象だった。剃髪の聖職者、賭け事は中華風、「匙座」という星座はあるのに粥を手で食べる、貴族は腹を切ることが敵に殺されるよりマシなような描写とか、世界観の土台がきちんと語られないまま唐突に挿入される「それっぽいもの」についていけなくて、途中で断念。
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短編が2篇収録されていて、どちらも同じ世界線の話。
異世界を描く場合、自由に世界を創造できる一方でそこに広がる臭いを感じさせるのは難しくなると思う。
その場所で生えている植物、気候、そこから導き出される食習慣や習俗。
展開される話の中でこれらがあやふやだとどうにもうすぼんやりとした世界になる訳で。
しかし、この短い中で直接語られないにも関わらず人々がきちんと歴史を持ってそこに生きていたと言う臭いを確実に感じさせる筆力に圧倒される。
風景に映り込む調度品から、言い回しから、仕草から。
それらが生み出され使われ、伝えられ続けてきた重みがこの掌編に濃縮されている事に、迷わず2022読了書フィクション部門の1位を捧げたい。 -
きっとこれから長く続くでしょう。
翻訳がチョット残念に感じる。
英語をカタカナで表記していることに意味があるのだろうか? -
話の流れが掴みづらく、難しかった。
独特の雰囲気と魅力が秘められてそうなので、刺さる人には刺さりそう。 -
【請求記号:933 ヴ】
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