新訳決定版 ファウスト 第二部 (集英社文庫 ヘリテージシリーズ G 1-2)

著者 :
  • 集英社
3.31
  • (12)
  • (36)
  • (76)
  • (13)
  • (2)
本棚登録 : 419
感想 : 32
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087610093

作品紹介・あらすじ

雄大な自然のなかで自責の念から蘇ったファウストは、皇帝の城、古代ワルプルギスの夜、ヘレナとの家庭生活、皇帝軍と反乱軍の合戦、海辺の領地での干拓等、大宇宙の生命の諸相を体験する。やがて人生の"夜ふけ"を迎えたファウストは見えない目で自分の大事業を見とどけようとしながら、思わず「時よ、とどまれ」と口にする。死んだファウストの魂が、天使たちと"かつてグレートヒェンと呼ばれた女"の導きで聖母マリアの許に救済される。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 残念だけど面白くなかった。話の筋書きが薄いし、ファウストは主人公なのに能動的になにかすることもほとんどない。何かやるのはいつも悪魔のメフィストフェレスで、ファウストはただ彼の操り人形みたいだった。あと大事なところにかぎって描写が薄くて、なにが起こっているのか把握できないこともしばしば。後で解説を読んでそうだったのかと腑に落ちた。

    二部では一部とはうって変わって、神聖ローマ皇帝やギリシャ神話の人物たちが登場する。舞台がドイツからギリシャへ移り、グリプス、スフィンクス、ケンタウロス、セイレーン、ネレウスなども出てきて、壮大ではある。だけどただ話を膨らますためにとってつけた内容のようにも感じた。あとは、ホムンクルスも登場する。錬金術がひとつの大きなテーマになっていて、当時の人々の関心が反映されていた。

    これが韻文詩だったら星4、星5になったかもしれない。だが散文詩で伝えうる何かを持ち合わせた物語だとは感じなかった。

  • 途中はキリスト教、ギリシャ世界の神々を皮肉りながらも、最終的には、人生を意味あらしめるためには、宗教性、女性性が必要と説く。資本主義、国家主義への痛烈な皮肉も見られた。

    附属の多和田葉子の文章が秀逸。☆5つだ。第2部は音読してこそ、世界が浮上する。

  • 第二部は一部とスケールが違う。神々(ギリシャ)世界、古代ローマ、聖書、舞踏会、洞窟…場面が変わるごとに世界も一転してゆく。その分、かなり読みにくく、ストーリーがわからなくなる。

    だが、第一部よりも断片的な記憶が残り、場面場面が印象深い。通読した後から、パッと開いた箇所を読み直すような楽しみ方ができる。

    二部があることによって、一部は壮大な序章に思えてくる。だが、一部が無ければ二部の目まぐるしく変わる舞台にはついていけないし、二部だけでは決して確立しない。

    残念なのは、二部は一部よりも原文で読むのが望ましいのだろうと思えること。詩句も多く、原文が読めれば楽しめるだろう技巧が多々あるように思えた。

    ストーリーを読み取ることよりも、言葉の響きややりとりが重視されていると思えたことから、私は一部よりも二部の方が好きだった。

    第一部も含めて、機会があれば意味はわからなくてもドイツ語で読まれるゲーテのファウストを聞いてみたい。

  • 4

  • 鬼門の第二部・・・
    まだこの面白さはわからなかった・・・
    ---
    「終わったとは笑わせる。どうして終わるのだ?終わるのも、何もなかったのも、二つながらに一つのこと。永遠の創造がどうしたというのだ、創られたものを無のかなたへとひっさらう、それが終わりだ。つまりは、どういうことだ?なかったも同然、それがあるかのように堂々巡りをくり返す。永遠の空っぽのほうがずっとましよ。」

  • ギリシャ神話の登場人物が頻繁に多数登場するのは最初はパロディかと思ったけれど、最後まで読んで「ファウスト」もまた新たな神話だからだと気付いた。読了後に当時のヨーロッパ世相を調べ、照らし合わせて見るとまた新しい発見がある。


  • 富んでいるのになお不足を感じるが、最も厳しい責め苦。共同の意思こそ人知の至つくところであって、日ごとに努める者は自由に生きる資格がある。どのように危険にとり巻かれているても、子供も大人も老人も、意味深い歳月を生きる。そんな人々の群れつどう姿を見たい。自由な土地を自由な人々とともに踏みしめたい。そのときこそ、例の言葉を。
    ゲーテは若いうちに骨子をかけ上げる一方で生涯をかけて改稿を重ねていったらしい。若年から老年まで一貫して、欲や生きることについて考えてきた結果、行き着いたもの。ギリシア神話や夢幻的な話が多くなりよくわからない部分も多い。時間がたった後に再読すると印象も違うかも。

  • ホムンクルスまで出てくることは記憶になかった。最後がもっと複雑なような気がしたが単純であった。

  • いきなり話がわからなくなった。登場人物が多すぎてついていけない、区別がつかない。5年かかってようやく読みきったという安堵感。プルートス、皇帝、メフィスト、ワーグナー、ホムンクルス、ヘレナ、魔女ラミア、憂い。時よ、とどまれ、おまえはじつに美しい。グレートヒェン出てきた。

  • ファウストの神髄は2部だったようだ。通読した今振り返れば、1部は分かりやすい恋愛小説、2部は・・・これが何なのか、説明のしようがない幻想劇。
    ストリーはないに等しい。時間と場所を自在に行き来する豊饒なイメージの中を言葉が横溢する。面白いが、わからない。ギリシャ神話の登場人物が多い。簡明な散文の池内訳でなくては読み通せなかっただろう。的を射た注釈もgood。池内氏の解説で「読者は投げだしゲーテ学者による解説が更に難解になる」と書いていたが、さもありなん。天才ゲーテの思想を読み解くのは無理だ。一部がすらっと読めたので鴎外訳でも手を出してみるかと思っていたが、やはりやめておこう。
    しかし所々の鮮やかなイメージ、妙なる美しい表現を求めて、再度読んでみたいと思わせる。・・・きっと7年後くらいに(笑)

全32件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ゲーテ

Johann Wolfgang Goethe 一七四九―一八三二年。ドイツのフランクフルト・アム・マインに生まれる。ドイツを代表する詩人、劇作家、小説家。また、色彩論、動植物形態学、鉱物学などの自然研究にも従事、さらにワイマール公国の宮廷と政治、行政に深く関わる。小説の代表作に『若きウェルテルの悩み』『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』など。

「2019年 『ファウスト 悲劇第二部』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ゲーテの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ドストエフスキー
ヘルマン ヘッセ
ダンテ・アリギエ...
三島由紀夫
フランツ・カフカ
ダンテ・アリギエ...
ヘミングウェイ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×