- Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087710052
作品紹介・あらすじ
昭和36年、学校教育に不信を抱く千明から学習塾の立ち上げに誘われ、吾郎の波瀾の教育者人生が幕を開ける。昭和〜平成の塾業界を舞台に、三世代にわたり奮闘する大島家を描いた、著者渾身の大長編!
感想・レビュー・書評
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カラフルの森絵都さんの作品だぁって、まずもって内容わからないままジャケ借りしました分厚い本。この週末は雨だからどっぷり本の世界に漬かってましたww
教育産業に携わる創業者一族の3代に渡る物語、50年間の軌跡を辿りました。
月は満ちることがないから理想を追いもとめて満ち欠けを繰返す。
時代の波にもまれながら何度も危機を乗り越えて中堅どころの学習塾へと収まってゆく舵取りの難しさ。
新興の会社とか勢いに乗って大きくするのは簡単だけど維持していくのはつくづく難しく思います。
分派、対立、独立と、泡のように浮かんでは消えてゆくなか、右腕として経営に尽力した国分寺の存在がなければ破綻していたかと思います。ただただ野心を抱かず創業一族を支えるとか男気を感じました。
管理教育、詰込み教育、ゆとり教育に絶対評価と理想を求めて制度が猫の目のように変わってゆくなか、どんな時代でもエリートと落ちこぼれてはでてくる状態。
一定数の従順な納税者を確保したいのが社会システム上の課題。
今さらながら、
自主的に興味をもって物事に取り込むことができる能力が大事だとゆうことを痛切に感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルからは何のお話かわからないまま、読み始めましたが、戦後に塾を創設した一家の半世紀にわたる物語です。450ページを超える大作で、ワクワクする前半からキューっと胸が苦しくなる中盤、そして再びワクワクから希望の光に満ちるエンディングまで楽しく読ませていただきました。
最終盤に吾郎がスピーチで語った言葉
「どんな時代の教育者も、当世の教育事情を悲観しているが、それでいいのかもしれない。常に何かが欠けている三日月。欠けている自覚があればこそ、人は満ちようと研鑽を積むのかもしれない」という言葉にとても共感しました。
私も日頃教育担当として若手スタッフの育成に懊悩していますが、それでいいのだと教え導いてもらった気がします。
私にはとても大切な本になりました!オススメ! -
著者、森絵都さん、ウィキペディアには次のように書かれています。
---引用開始
森 絵都(もり えと、本名:雅美、1968年〈昭和43年〉4月2日 - )は、日本の東京都出身の小説家。日本ペンクラブ常務理事。
児童文学『リズム』(1991年)でデビュー。繊細な心理描写で幅広い読者層を獲得し、『風に舞い上がるビニールシート』(2006年)で直木賞受賞。作品に『カラフル』(1998年)、『永遠の出口』(2003年)、『みかづき』(2016年)など。
---引用終了
で、BOOKデータベースによると、本作の内容は、次のとおり。
---引用開始
昭和36年。小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲いー。山あり谷あり涙あり。昭和~平成の塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編!
---引用終了
本作は、中央公論文芸賞の受賞作品になります。
参考までに、本作の前後の受賞作は、次のとおり。
第11回(2016年)『罪の終わり』 東山彰良
第12回(2017年)『みかづき』 森絵都
第13回(2018年)『雲上雲下』 朝井まかて
第14回(2019年)『国宝』 吉田修一
第15回(2020年)『家族じまい』 桜木紫乃
この中で、私がブクログに登録しているのは、『国宝』と『家族じまい』になります。 -
学校教育が太陽なら、塾は月。
子どもたちを優しく照らす‥
塾の始まりから親子三代にわたる物語。力作です。
昭和36年、小学校の用務員をしていた大島吾郎。
勉強がわからない子に教えてあげていて、教員免許を持っていない吾郎の教え方がわかりやすいと評判になっていました。
通ってくる生徒の一人の蕗子は、教える必要もなさそうな成績の良い女の子。
蕗子の母親の千明が吾郎のもとを訪れ、教える才能を見込んで、塾を立ち上げようと誘います。
千明は、半ば強引に、結婚まで持ち込み(笑)
教育の話、塾の話というと、真面目で説教臭いかもしれない気がしますが。
気が強く個性的な千明と、大らかで人望があるがいささか女にだらしがない吾郎というコンビで、いたって人間的に、躍動するように話は進みます。
当初は勉強についていけない子どもたちに補習していたのが、しだいに進学指導がメインに。
方針を巡っての対立から、夫婦仲にも影響が出ます。
二人の子どもたちの性格の違い、それぞれの進路も時代を映して。
文部省は、長らく塾を白眼視していたのが、年月を経て学校を補完するものとして認めるようになります。
しかし、「ゆとり教育」の真相というのは、ちょっと衝撃的でした。
優秀な子がもっと上へ行けるよう、そうでない子は放っておくということだったとは‥?
そればかりではないような気もしますが、時代の風潮として一面の真実かと。
孫の世代の一郎がフリーターだったり、そんな子がまた教育の場を設けるようになったり。
戦後の激動期を経て数十年、こんな時代が来たと。
ある意味、教育には終わりがない‥
いい締めくくりでした。 -
広瀬淡窓の私塾・咸宜園の話しを読んだ後だったので、その勢いでこの作品を読んでみた。同じ私塾の話ではあるが、時代こそ違うが、いつの時代にも私(私塾)に対する公(国)の圧力よるがあり、公私間の教育に対する考え方の歪みによる経営の課題があるのだと知った。
小学校用務員・大島吾郎は、用務員室で児童に勉強を教えていたが、赤坂蕗子の母・千明の策略により結婚、学習塾を立ち上げる。経済成長と、文科省の圧力を背景に波瀾に立ち向かう話し。終戦後から平成の塾業界を舞台に、吾郎と千明からその子、孫に渡って奮闘を綴った物語。
解らない、解っていないことをするのは辛いし、集中できない(瞳の法則が適用)。辛いとますます好きにはなれないの悪のスパイラルが作られる。当たり前のことを。「知識のつめこみよりも知的好奇心を引きだすほうに重きを置いている。」と言う吾郎の教育方針は、誰もが理解している普通のことだ。学校の授業は、限られた時間、決められたスケジュールの中でしなければならない。しかも大人数の生徒に対して行われる。ある程度理解していると教師が判断したら、先に進まなければ、決められた時間でカリキュラムをこなすことができない。そのため理解したがどうかは、テストで確認するしかなく、教師によっては、テストで悪い成績をとった生徒に対し、補講をするかもしれない。しかし、今の世の「学校教育」においては、教師に特定の生徒のみに時間を割くことは、問題であると学校あるいは保護者が判断する可能性もあるかもしれない。考えるほどに、難しいことであると思う。
学校で週5日制が導入された背景は、労働時間短縮をめぐる政治上の理由であって、学校週5日制論は、実は教育上の理由ではなかったと言うのを、聞いたことがある。それが本当かどうかはわからないが、学ぶボリュームが同じで、休みが増えると、平日の授業時間を増やすしかない。それが難しいと判断され、学習ボリュームを減らす。その結果が学力低下である。学校と塾が連携する話しがあったことを本書で知ったが、学力低下の防波堤として、塾を利用する、学校の教えることができないところを塾で補完することになると、子供の学力の格差がさらに広がり、塾に通える家庭の子供を対象とした教育が実現しそうだと、素人の私なら考えてしまう。
「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです。」の言葉はタイトルの「つき」を連想させ、一郎の「みかづき」が、落ちこぼれの救済よりもエリート育成を優先させてきた教育社会の現状を私たちに知らせるメッセージのように思える。
この作品を読んでいる時間は、この家族が、世代を超えて取り組んだ教育現場の現状をしばし真剣に考えた。 -
いやぁ~、面白かった!
教育という堅苦しい題材から、難しく退屈な話なんじゃないかと敬遠する人がいるかもしれないけど、
そんな心配は無用です。
ある塾の50年にも及ぶ戦いを描いているのだけど、
教育とか関係なくとにかく物語が単純に面白い。
森絵都さんの物語る腕力(筆力)がすんごいので、どんどん引き込まれていく。
(これを読むと森さんが作る物語の面白さと見事なストーリーテラーぷりに誰もが気付くハズ)
学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在だ。
太陽の光を十分に吸収できない子供たちを、暗がりの中で静かに照らす月。
今はまだ儚げな三日月にすぎないけれど、必ず満ちていく。
そう信じて塾を立ち上げた吾郎と千明の夫婦。
永遠に続く塾と文部省の不毛の対立。
先頭を走る子だけではなく、転んだ子供に寄り添うことこそが塾の在りかただと説く心優しい吾郎。
しかし気が強く現実的な性格の妻の千明は
塾の未来を見据え、補修塾から進学塾への趣旨がえを吾郎に提案する。
千明が進める、教育を商売化していく流れに吾郎は反発し、
やがて二人は別々の途を辿ることに…。
聡明で心優しく、母・千明とは別の道で教育に携わっていくこととなる長女・蕗子(ふきこ)。
勝ち気で成績優秀、空恐ろしいほど胆が座った次女の蘭。
人懐っこく明るいが勉強嫌いの三女・菜々美。
不器用でおっとりした性格だが、いつしか教育の世界に惹かれ、学校でも塾でもない新しい学びの場を作っていくこととなる蕗子の息子の一郎。
そして優しく子供思いだが、女にはだらしのない(笑)吾郎を筆頭に
登場人物たちの人間臭さが本当に魅力的で…。
だからこそ、最後のページを閉じた後も、胸にストーリーが広がり続け、登場人物たちのその後に思いを馳せてしまう。
子供たちに真の知力を授けるための授業、テストや受験のためだけじゃない教育とはいったいどういうものなのだろう。
落ちこぼれを作らず、環境や貧富の差を越えて
誰もが平等に学べる場所を作り維持していくことは果たして可能なのか?
吾郎や千明やその娘たちのそれぞれの生き様に一喜一憂しながら、
『学ぶ』こと、『教える』ことの本当の意味や意義を
深く考えさせられた至福の読書時間だった。
『みかづき』とは満月たりえない途上の月。
このタイトルに込められた真の意味を知ったとき、
なぜこの家族が50年もの長い年月を
教育に捧げたのかが解った気がした。
クロニクルが好きな人や物語の醍醐味を堪能したい人、
読みごたえのある家族ドラマに飢えてる人、
子供のいる人、今学生の人、教職に就いてる人、夢を諦めたくない人などに
特にオススメします。
https://youtu.be/-u2kE_KlSL8
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集英社のみかづき紹介ビデオ -
フォローさせていただいている方々の本棚を見て表紙がかわいいなと思い、図書館へ借りに行きました。
森絵都さんの著作を読んだことがなかった私は、表紙と著者のお名前からふわっとしたお話かと思っていました。しかし実際本を手に取ると、がっつり4センチ幅の厚さ。中身もがっつり塾経営に関する内容でした。ふわっとしたのは最後の最後ぐらいでしょうか。
昭和36年。小学校の用務員、吾郎が用務員室で勉強を教えたところ好評になった。学校を辞めることになり、勉強を教えていた女児の母親と結婚して塾を経営することに。当時はまだ塾は嫌われる存在で…。親から子、孫へ繋がる教育と絆のものがたりです。
吾郎の妻、千明の圧が強く、終始圧を感じながら読みました。
塾からみた目線で、昭和から平成の教育制度と教育の在り方が書かれています。生徒側からの目線は、ほぼありません。
吾郎、妻、子、孫。それぞれ欠点があり、個性があります。それぞれの考えで、熱く教育に従事しています。
それぞれの理想的な教育を実現するためにぶつかり合い、見守って許し合う家族たち。
挫折を乗り越えて人生を歩んでいく吾郎ファミリー。人生の命題があるっていいな、と思いました。 -
この一冊に人生の一歴史が詰まっている。
塾には自分も多少通っていたがこんな歴史が合ったんだなぁ。
この本はとても好きです、また忘れた頃に読み返したい。 -
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しのさん、こんにちは~♪
読まれたんですね~。
年末から心配事が重なって体調を崩してからなかなかスッキリしなくて。
やっとお邪魔し...しのさん、こんにちは~♪
読まれたんですね~。
年末から心配事が重なって体調を崩してからなかなかスッキリしなくて。
やっとお邪魔してレビューを読むことができました。
「常に何かが欠けている三日月。
教育も自分と同様、そのようなものであるのかもしれない。
欠けている時間があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むものかもしれない」
私もこの言葉が特に胸にしみました。
この本のすべてが、この一文にあるように思えました。
そうですよね、生きている間はずっと学んでいきたいですよね。
昨日より今日、今日より明日、
少しずつでも何かを得られたらいいなぁ。
もっと早くそれに気づいて実行していたら良かったのに、今さらな私?(笑)2017/04/01 -
こんにちは~お久し振りです( *´艸`)
沢山のイイネとコメントありがとうございます(#^^#)
うんうん、読みました~本屋大賞のノミネ...こんにちは~お久し振りです( *´艸`)
沢山のイイネとコメントありがとうございます(#^^#)
うんうん、読みました~本屋大賞のノミネート作を沢山読みましたが、この本とっても素晴らしかったです(*'▽')
一緒です~どうして学べる時にもっともっと真剣に学ばなかったんだろうって今更ながらに後悔しました(笑)
大人になって、資格試験取得の為の勉強って楽しかったり燃えたりします。
本当に、生きてる間ずっと学びなのでしょうね。
体調を崩されてたとの事ですが、まだまだ寒暖差が激しいです。どうぞ、ご自愛くださいね( *´艸`)2017/04/02
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600ページを超える大作。読み応えあります。昭和30年代から平成にかけての教育業界の問題点、文部省とのせめぎ合い。同業他社との争い。ビジネス小説の側面。家族三代にわたる確執、心のすれ違い、雪解け。面白い。太陽と月、陰と陽。読み飽きさせない筆者の文章力とストーリーを作る力に感服しました。ドラマ化されたDVDもあるようなので、観たいと思います。