みかづき

著者 :
  • 集英社
4.17
  • (446)
  • (444)
  • (189)
  • (20)
  • (8)
本棚登録 : 3283
レビュー : 488
  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087710052

作品紹介・あらすじ

昭和36年、学校教育に不信を抱く千明から学習塾の立ち上げに誘われ、吾郎の波瀾の教育者人生が幕を開ける。昭和〜平成の塾業界を舞台に、三世代にわたり奮闘する大島家を描いた、著者渾身の大長編!

感想・レビュー・書評

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  • いやぁ~、面白かった!
    教育という堅苦しい題材から、難しく退屈な話なんじゃないかと敬遠する人がいるかもしれないけど、
    そんな心配は無用です。

    ある塾の50年にも及ぶ戦いを描いているのだけど、
    教育とか関係なくとにかく物語が単純に面白い。
    森絵都さんの物語る腕力(筆力)がすんごいので、どんどん引き込まれていく。
    (これを読むと森さんが作る物語の面白さと見事なストーリーテラーぷりに誰もが気付くハズ)

    学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在だ。
    太陽の光を十分に吸収できない子供たちを、暗がりの中で静かに照らす月。
    今はまだ儚げな三日月にすぎないけれど、必ず満ちていく。
    そう信じて塾を立ち上げた吾郎と千明の夫婦。

    永遠に続く塾と文部省の不毛の対立。

    先頭を走る子だけではなく、転んだ子供に寄り添うことこそが塾の在りかただと説く心優しい吾郎。
    しかし気が強く現実的な性格の妻の千明は
    塾の未来を見据え、補修塾から進学塾への趣旨がえを吾郎に提案する。

    千明が進める、教育を商売化していく流れに吾郎は反発し、
    やがて二人は別々の途を辿ることに…。


    聡明で心優しく、母・千明とは別の道で教育に携わっていくこととなる長女・蕗子(ふきこ)。
    勝ち気で成績優秀、空恐ろしいほど胆が座った次女の蘭。
    人懐っこく明るいが勉強嫌いの三女・菜々美。
    不器用でおっとりした性格だが、いつしか教育の世界に惹かれ、学校でも塾でもない新しい学びの場を作っていくこととなる蕗子の息子の一郎。
    そして優しく子供思いだが、女にはだらしのない(笑)吾郎を筆頭に
    登場人物たちの人間臭さが本当に魅力的で…。
    だからこそ、最後のページを閉じた後も、胸にストーリーが広がり続け、登場人物たちのその後に思いを馳せてしまう。


    子供たちに真の知力を授けるための授業、テストや受験のためだけじゃない教育とはいったいどういうものなのだろう。

    落ちこぼれを作らず、環境や貧富の差を越えて
    誰もが平等に学べる場所を作り維持していくことは果たして可能なのか?

    吾郎や千明やその娘たちのそれぞれの生き様に一喜一憂しながら、
    『学ぶ』こと、『教える』ことの本当の意味や意義を
    深く考えさせられた至福の読書時間だった。


    『みかづき』とは満月たりえない途上の月。
    このタイトルに込められた真の意味を知ったとき、
    なぜこの家族が50年もの長い年月を
    教育に捧げたのかが解った気がした。


    クロニクルが好きな人や物語の醍醐味を堪能したい人、
    読みごたえのある家族ドラマに飢えてる人、
    子供のいる人、今学生の人、教職に就いてる人、夢を諦めたくない人などに
    特にオススメします。


    https://youtu.be/-u2kE_KlSL8

    集英社のみかづき紹介ビデオ

  • 学校教育が太陽なら、塾は月。
    子どもたちを優しく照らす‥
    塾の始まりから親子三代にわたる物語。力作です。

    昭和36年、小学校の用務員をしていた大島吾郎。
    勉強がわからない子に教えてあげていて、教員免許を持っていない吾郎の教え方がわかりやすいと評判になっていました。
    通ってくる生徒の一人の蕗子は、教える必要もなさそうな成績の良い女の子。
    蕗子の母親の千明が吾郎のもとを訪れ、教える才能を見込んで、塾を立ち上げようと誘います。
    千明は、半ば強引に、結婚まで持ち込み(笑)

    教育の話、塾の話というと、真面目で説教臭いかもしれない気がしますが。
    気が強く個性的な千明と、大らかで人望があるがいささか女にだらしがない吾郎というコンビで、いたって人間的に、躍動するように話は進みます。

    当初は勉強についていけない子どもたちに補習していたのが、しだいに進学指導がメインに。
    方針を巡っての対立から、夫婦仲にも影響が出ます。
    二人の子どもたちの性格の違い、それぞれの進路も時代を映して。

    文部省は、長らく塾を白眼視していたのが、年月を経て学校を補完するものとして認めるようになります。
    しかし、「ゆとり教育」の真相というのは、ちょっと衝撃的でした。
    優秀な子がもっと上へ行けるよう、そうでない子は放っておくということだったとは‥?
    そればかりではないような気もしますが、時代の風潮として一面の真実かと。

    孫の世代の一郎がフリーターだったり、そんな子がまた教育の場を設けるようになったり。
    戦後の激動期を経て数十年、こんな時代が来たと。
    ある意味、教育には終わりがない‥
    いい締めくくりでした。

  • 昭和36年、千葉県習志野市にある小学校。
    そこの用務員である大島吾郎が児童の勉強を見てやっているところから物語は始まります。
    昭和から平成へ、塾を舞台にした三世代にわたる教育者たちの物語。

    終戦後、いち早く六・三・三制を取り入れた日本。
    めまぐるしく変わる国の政策と、それに振り回される教育現場。
    それでも理想を追い求める姿に、真の教育とは?と強く考えさせられました。

    最終章の#新月が良かった。
    不器用な人が、遠回りでも少しずつ前進して、いつか自分の生きる場所にたどり着く、そういう話が好き。

    学ぶことか…、
    塾に通って勉強していたころより、人生の折り返し地点を過ぎた今の方が、学ぶことへの欲が強いです。
    そういえば、勉強したくなくて遊んでばかりいると、よく父に言われました。
    「好きなだけ勉強ができるということが、どれほどありがたいことなのか、いつかわかる日が来る。
    その時になって後悔しても遅いんだから」と。
    しっかり後悔しました。はい。


    <常に何かが欠けている三日月
    欠けている自覚があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むのかもしれない。>
    この言葉がとても心に残っています。

    表紙に茶々丸がいる。可愛い。

    • 杜のうさこさん
      しのさん、こんばんは~♪

      おぉ、そうなんですか!
      しのさんとは本のチョイスがとても似ているって、いつも嬉しく思ってます。

      でも...
      しのさん、こんばんは~♪

      おぉ、そうなんですか!
      しのさんとは本のチョイスがとても似ているって、いつも嬉しく思ってます。

      でもその反面、ネタバレのレビューを読めないことが残念で…
      読みたい!でも積読だし…と、いつも葛藤してます(>_<)
      最近では、辻村深月さんの『クローバーナイト』と、村山早紀さんの『桜風堂ものがたり』とかね。

      『みかづき』長かったです。
      体調を崩していたせいもあるんですが、かなり体力使いました。

      レビュー楽しみにしてますね!
      これは葛藤しないですみます(笑)。
      2017/02/22
    • けいたんさん
      こんにちは〜♪

      みかづき、長いよね。
      評価がとても高いし森絵都さんだし読んでみたいけど、やっぱり長い(笑)
      うさちゃんはすごいなぁ...
      こんにちは〜♪

      みかづき、長いよね。
      評価がとても高いし森絵都さんだし読んでみたいけど、やっぱり長い(笑)
      うさちゃんはすごいなぁ。
      2017/03/08
    • 杜のうさこさん
      というわけで(笑)
      けいちゃん、あらためてこんばんは~♪

      うん。長い、長い。長かった~。
      なんか感想がそればっかりになってしまって...
      というわけで(笑)
      けいちゃん、あらためてこんばんは~♪

      うん。長い、長い。長かった~。
      なんか感想がそればっかりになってしまってもうしわけないんだけど…
      体調が落ち始めた時に読んだからよけいそう感じるのかも…
      ちょうど図書館の配本があって、正直あの分厚さに「うっ」ってなった(笑)
      でも、どうしても読みたくてがんばったの!

      他の方のレビューあまり読めていないんだけど、やっぱり評価高いんだ~。
      またいつか読み返せたらいいなと思ってます。

      では、またね~^^
      2017/03/15
  • 厚みのある本はやっぱり面白い。

    そんな感じで吾郎と千明が夫婦になる!?って、突拍子もない始まり。

    憎まれ役の鉄の女千明は、あんな形でしか吾郎を自由にさせてあげれなかったのかと・・・でも酷。

    でも「嬉しくないわけないじゃない」の言葉にはウルッときました。やっぱり吾郎を必要としてたと。
    影の立役者は国分寺さんだと思いました。

    登場人物すべてがとても愛しい人たちでした。
    塾の歴史も綴られてるし。いい本でした。

  • おしきせ教育制度に抵抗して公平公正な教育をすべく自ら塾を興し平等な教育をする夫婦の大河小説。皆さんの評判が良いので期待して読んだけど一気に読んでしまった。塾の浮沈の流れも分かり教育制度の欠陥も突いていて面白かった。

  • 「学校教育が太陽だとしたら、塾は月のようなぞんざいになる…。」

    昭和36年。小学校の用務員の大島吾郎は、仕事場兼住居の用務員室で、
    一部の授業についていけないって言う子や、宿題が出来ない子に勉強を教えていた。
    吾郎さんに教わると良くわかると慕われ「大島教室」と呼ばれていた。
    教員免許はないが、抜群に教える「才」をもっていたのだ。
    勉強を教えていた一人の児童・蕗子の母親千明に誘われて、学習塾を立ち上げる。
    女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族となった吾郎。
    ベビーブームと経済成長を背景に、塾も順調に成長してゆくが、
    予期せぬ波乱がふたりを襲いーー。

    子供の学習能力を引き出すのに天才的な能力を持つ温厚な人柄の吾郎と、
    文部省の指導要領に激しく反発しながら、塾を発展させていく向上心の強い千明。
    対照的な夫婦の姿を描きながらその時代背景や夫婦の子供や孫を
    教育に関わらせるという描き方で、昭和三十年代から平成の現代まで
    一家族三世代にわたって、六十年間にわたる壮大な物語でした。
    壮大なのに飽きさせない、著者の筆力と思いの強さが素晴らしかった。

    敗戦後の日本の教育制度の迷走…塾って何?悪しきものかの様に言われていた時代。
    誰もが当たり前の様に通っている時代。少子化によって通う子が減ってる時代。
    また貧困化によって通えない子が多く存在する時代。
    時代によって、塾の在り方や真の教育とはと深く考えさせられました。
    私自身小学一年生から塾に通い、色んな習い事にも通わせてもらい。
    遊びの延長の様に過ごしていましたが、今思えば何と有難かった事なんだろう。
    もっと、もっと真剣に学んでおけば良かったって大人になって凄く感じてる。
    そして、大人になって資格取得の為に学ぶと凄く楽しい♪

    最終章の〝新月〟が良かった~何度も涙が零れました。
    吾郎と千明の孫の一郎。
    生まれながらにして不器用な性分。
    何事にも時間がかかるのんびり屋で、いつも人よりワンテンポ遅れる。
    ものを考える速度も遅く、急に言葉をふられてもすぐには応えられない。
    うわ~私みたいだって激しく共感した~( ˶´⚰︎`˵ )
    そんな彼が遠回りしながらも、葛藤しながらも自分の進む道を見付けて進んでゆく姿良かった。
    彼の優しさ、子供を想う心…本当に何度も何度も涙が零れた。

    「常に何かが欠けている三日月。
    教育も自分と同様、そのようなものであるのかもしれない。
    欠けている時間があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むものかもしれない」
    とっても素晴らしくって素敵な言葉です。心に染み入りました。
    人間生きている間ずっと学んでいるのだと思う。

    • 杜のうさこさん
      しのさん、こんにちは~♪

      読まれたんですね~。
      年末から心配事が重なって体調を崩してからなかなかスッキリしなくて。
      やっとお邪魔し...
      しのさん、こんにちは~♪

      読まれたんですね~。
      年末から心配事が重なって体調を崩してからなかなかスッキリしなくて。
      やっとお邪魔してレビューを読むことができました。

      「常に何かが欠けている三日月。
      教育も自分と同様、そのようなものであるのかもしれない。
      欠けている時間があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むものかもしれない」
      私もこの言葉が特に胸にしみました。
      この本のすべてが、この一文にあるように思えました。

      そうですよね、生きている間はずっと学んでいきたいですよね。
      昨日より今日、今日より明日、
      少しずつでも何かを得られたらいいなぁ。

      もっと早くそれに気づいて実行していたら良かったのに、今さらな私?(笑)
      2017/04/01
    • しのさん
      こんにちは~お久し振りです( *´艸`)
      沢山のイイネとコメントありがとうございます(#^^#)
      うんうん、読みました~本屋大賞のノミネ...
      こんにちは~お久し振りです( *´艸`)
      沢山のイイネとコメントありがとうございます(#^^#)
      うんうん、読みました~本屋大賞のノミネート作を沢山読みましたが、この本とっても素晴らしかったです(*'▽')

      一緒です~どうして学べる時にもっともっと真剣に学ばなかったんだろうって今更ながらに後悔しました(笑)
      大人になって、資格試験取得の為の勉強って楽しかったり燃えたりします。
      本当に、生きてる間ずっと学びなのでしょうね。

      体調を崩されてたとの事ですが、まだまだ寒暖差が激しいです。どうぞ、ご自愛くださいね( *´艸`)
      2017/04/02
  • 戦後の日本における塾の歴史と、教育界に身を投じ続けた一家の物語。
    最初から最後まで引き込まれる。ボリュームはあるが、一気読み。
    選んだ道は違っても、それぞれがもつ教育への思いは熱く、読んでいてぐっとくる。後半は、じーんときた。
    塾業界の変遷、文部省に振り回される教育界についても、読み応えがある。

  • とてもいいお話。
    昭和の頃、用務員室で授業についていけない子の勉強を見てあげる21才の吾郎。この不思議な魅力のある青年が「教育」に嵌まっていく人生。
    吾郎の教える才能を見抜いて強引に伴侶にした千明。
    ふたりが塾を立ち上げた頃、まだ日本では私塾に対する風は厳しかった。

    「教育は、子どもをコントロールするためにあるんじゃない。」
    「すべての子どもに等しく勉強を教えられない現実に、絶えずある種の鬱屈を抱いている」

    貧しくて塾に通えない、勉強についていけない子どもが吾郎の孫の一郎が立ち上げたボランティア勉強会で受験に臨むエピソードには涙腺が緩みました。
    感動です。
    そして終わり方がまた良かった。

  • 戦中から現在に至るまでの学校教育や塾について改めて知る事が多くありました。
    私の子ども達はゆとり世代の為、自分が育った環境との違いに戸惑いを感じながらの子育でした。主人公達の様な強い信念で子育てをしていたならば、“ゆとり世代”と言われる子どもにはならなかったのだろうかと今更考えても仕方のない事を思いながら読み進みました。中でも印象に残ったのはゆとりについてのインタビューで教育審議会元会長がこれからの日本について『できん者はできんままで結構、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける。…ゆとり教育とはエリート教育と言いにくい時代だから回りくどく言っただけの話だ。』

    教育に情熱を注いだ親子三代の物語は孫の一郎の活動を通してようやく教育とはこうあるべきだと結ばれた様に感じました。
    自分の子育てに重なりラストに感動しました。

  • 子どもに何かを教えるということ。
    例えば教育勅語を子どもに暗記させ愛国精神を育てること。
    よりよい人生を送れるようにと、少しでもテストで良い点数をとれるよう知識を詰め込むこと。
    何が良くて何がいけないのか、誰にも決めることなんてできない。
    世の中は変わり、文部省が変わり、親だって変わっていく。
    それより何より教育を受ける子どもひとりひとりが皆個性の違う人間なのだ。
    100人の子どもがいれば、100通りの教育方法が必要になるのだから。
    この本の主人公たちは、そんな形のない教育というものに手探りで挑んでいく。
    何が変わっても、一番大切なのは
    『自分の頭で考え不条理に抗う力、
    他者からコントロールされないための力を養うこと』
    この物語は、その理想に少しでも近づくために
    決して聖人君子ではない主人公たちが流した涙と費やしてきた膨大な時間の物語です。
    これからどんなに教育の迷走が続こうと
    この教育の真髄が見失われないことを
    心から祈ります。

  • 熱い。
    ひさびさに、教育のもつ可能性、というか以前携わった仕事で感じた「想い」を思い出せた。
    奇しくも、最後に登場する吾郎の孫、一郎が勤めるのが高齢者向け弁当屋さん。何か、この本に惹かれた赤い糸を感じる。

  • 教育に人生を捧げた人々の物語。
    教育といっても、舞台は学校ではなく学習塾。
    塾が邪道と批判された時代から塾通いが当たり前となった現代までを描いた作品。
    塾を経営する大島家の面々を通して、当時の教育観や問題点など教育の歴史も垣間見れる。

    かなり綿密な取材をして苦労して書き上げたんだろうなぁという印象。
    森絵都さんらしく、柔らかく読みやすい文章でスイスイ進む。
    親子3世代に渡る長い物語の中では亡くなる人もいて、過去を見ているだけになんだか寂しい気持ちに…
    人生ってきっとそういうものなんだろうなぁとしみじみ思ったりして。

    印象に残っているのが、どの時代のどの教育論もその当時の教育のあり方に悲観している、これではダメだと声を上げている、という部分。
    教育ってきっとどんなに正解に近づこうと頑張ってもモアベターにしかなり得ない。
    完璧な正解は存在しない。
    だからこそ悲観して声を上げる人がいて議論を重ねてどんどん変化していくんだろうね。
    もちろん、時代時代で理想的な教育のあり方も変わるし、政治的要素もガンガン入ってくるし、純粋に教育だけを考えるのは難しいわけだけど…
    だからはまる人はどっぷりはまる面白い世界なんだろうな。

    タイトルの「みかづき」。
    終盤で回収されるけど、ストンと納得できる素敵なタイトルだと思いました。

  • 教育に携わる家族3世代の壮大な物語。

    戦後の教育理念から現代までの長い歴史と、ある家族の人生と、本当に読むだけで時間かかりましたけど、読後感は良かったです。

    読み終わって、国が教育制度を変更する本当の理由がこの本の通りだとうすら寒いなと思い、「自分で考える力」を得るための教育という考え方に共感しました。

  • 昭和36年、塾がまだ一般的でもなく世間から批判的な目で見られていた時代。国民学校の経験から文部省の教育政策に批判的な千明と、教員免許は持っていないが子供の教育に素晴らしい才能を持つ吾郎の大島夫婦は塾を立ち上げた。それから現代までの教育をめぐる大島家三代の物語です。

    最初はアララ!という感じだったのです。如何にも「作られた」ストーリー。文章もどこか説明的でちょっと粗い感じがする。
    ところが中盤から熱量が上がり一気に勢いが増してグングンと良くなってきました。そして最後は「ヤラレタ」という感じです。
    ちょっと極端すぎるけど、様々な個性を配置することで分厚い長編を楽しませてくれるエンターテインメントとしてだけでなく、改めて教育とは何かを考えさせてくれる物語でした。

  • 今では当たり前の存在になっている塾。その塾ができたときからの、ある塾と、塾を取り巻く人々、教育をテーマに描かれた話。

    学校が太陽なら、塾は月。
    立場は違えど教育に対する想い、子どもたちへの想いはいつの時代も皆同じなのだ。

    塾ができたての頃は塾に通う子どもたちは後ろめたさを感じていた。しかし、塾が当たり前の時代になると今度は貧困によって塾に通えない子も出てくる。時代の流れに沿って、教育を取り巻く問題も変化していく。

    私は教育はいくら少子化になろうともなくならないと考えている。その理由を、この本のタイトルの意味が物語っていて、「ああ、そうだ。私が言いたかったことはこれなんだ」と、とても腑に落ちた。

    教育の移り変わりが、著者のなめらかなストーリーで彩られ、どの世代にも響く素晴らしい一冊だった。

  • 用務員室に勤務する吾郎は、赤坂千明の誘いで塾の講師として働くこととなる。学校が太陽ならば塾は月のような存在。塾を通うことが当たり前出なかった時代の中、学校教育とは別の立場から子供達を支える立場で吾郎たちは奮闘して行く。


    吾郎、千明、頼子、ふきこの代で完結型かと思っていたら、ふきこ、蘭、ななみ達の人生、さらには一郎、一郎からみた千明、吾郎、と3世代にわたり続く物語
    その代に合わせて変化して行く教育のあり方、問題、また時代の流行や町並みが自然と変化して行く様がとても面白かった!
    つめこみ、ゆとり、格差と今ある教育問題は過去で試行錯誤した上にできたもの
    そしてみかづきみたいな教育、完全はなく常に問題を抱え高めて行く必要のある教育、問題にばかり注目されがちだけど、時代ごとに変えていこうという姿勢が常にあるのが教育なのだなと実感できた

    生きる力を育てる、千葉進塾のモットーは自分が子育てして行く上でも大切にしていきたい

  • 教育現場に携わる家族の成長物語。
    時代の変遷と家族の成長と変化描写が秀逸。460Pの長編だが中盤からは一気読み必至。

  • どんな子であれ、親がすべきは一つよ。人生は生きる価値があるってことを、自分の人生をもって教えるだけ

    教育は、子どもをコントロールするためにあるんじゃない。不条理に抗う力、たやすくコントロールされないための力を授けるためにあるんだーーー。

  • 2017年5月28日読了。テーマは教育だったんですが、戦後すぐから現代まで駆け上がって作品になってました。怒涛の話だったなと思いました。その時代時代の「教育」への在り方は考えさせられることばかりで、人間もそれぞれ変わってきたと思えば、それは教育も変わっていくことで。ただいつも教育は子どもの頭脳と心と体の成長のためにあるものでなければならない、それを必死で大人たちは考えてました、どの時代も。子どものことを社会が守るのはいつの時代も同じなのですね。あと、大島家の家族模様も素晴らしかった。千明がやはり一番強烈キャラでしたね。最初この話の終着点が見えなかった。でも終わってみれば素晴らしい教育論と教育の形があって、そして家族があって、昭和から平成に向けて駆け抜けた人たちの「生き抜く力」を感じました。

  • 主に3人の視点から見たその時代時代の教育が描かれていた。その時々の流行がちょいちょい出てきて、あーあの頃か〜とわかりやすかった。
    時代毎にいろんな問題を抱えているが、特にここ最近の問題が深刻で複雑だと思う。400ページ超えは、なかなかの読み応えだった。

  • 家族の壮大な物語。飽きる事無く、最後まで一気読み。読み応えがあった。題名の意味を知り、ジワリときた。

  • いやー、面白かった!!まるで朝ドラを見てるようだった。教育に関する理解や情報が特にあったわけではないけれど、わかりやすく状況説明があったのでイメージしやすく、大島家を取り巻く環境や登場人物たちの人間性と人生に入り込みやすくて、とても物語に引き込まれました。遠回りのようで、彼ららしい家族愛にすごく心が温かくなります。1つの思いが引き継がれて、いろんな人にその場にあった形で変わっていきながらも、本質は変わらないような物語。いいですねぇ!

  • 森絵都さんのみかづき。

    森絵都さんの本は『カラフル』を始めとして何冊か読んでいた。
    だから、この小説を読みながら何度も、この本が森絵都さんの本だということを僕は忘れた。
    子供も楽しめる軽めなタッチで、子供を中心とした登場人物の心情を描くのが上手な作家さん。
    良い部分も残しつつ、そんなイメージの覆る読み応えのある一冊だった。

    舞台は高度経済成長期の日本。
    家庭の事情で教師になれず、学校の用務員室で放課後授業をやっていた五郎。ある日とある生徒蕗子の母親千明から目をつけられ2人で「塾」を開くことに。

    この小説が面白いのはいくつか理由がある。

    1つは3世代に渡る一家の様子を描いている点だ。
    五郎と千明、そして千明の連れ子である蕗子。最初は3人で始まる物語が子供世代、孫世代と広がり、やがてはその家族や友人たちにまで。物語を読み進めるうちに人間関係がどんどん奥行きが出ていく感じが何とも心地よい。
    加えて家族間の微妙な葛藤など、それぞれの心情やキャラクターも色濃く描かれているため思わず感情移入してしまう。

    2つ目は「塾」が舞台であるということ。
    本書のタイトルである「みかづき」にも由来をするが、世間から認められて存在する太陽=学校に対して塾は相対するみかづきのような存在。
    学校の授業についていけなかった学生の補助的な役割から始まり、次第に塾に行くのが当たり前の塾乱立時代へと。教育指導法など文科省からの圧力や学校との共存など様々な問題をはらみつつも成熟していく塾のあり方が克明に描かれている。

    塾ならではで面白いなと思ったのは学校とは違い経営な問題もつきまとうこと。
    存在し続けること前提で教育が考えられている学校とは違った塾の立場から考えられた教育というものを新しい視点で考えさせられる。

  •  朝ドラのような大河小説。こういうボリュームのある話は読んでいて楽しい。もっともっと読みたくなる。実際、時間がとんでいて描かれていない部分も、読みたいと思ってしまった。
     しかし、千明の「熱さ」は、「熱い」をこえてエキセントリックというか狂信的というか、読んでいて気持ち悪くなるほど。友人にはなりたくないなぁ(笑)その対極にいる吾郎は、人間臭いところとスーパーマン的なところ、そして青臭さが混ざりあっているが、やっぱり、友達にはなりたくない(笑) 出てくる登場人物は、みんな屈折していて少し変な奴ばかりなんだけど、そんな人たちが教育業界に生きているところが逆に面白い。そのうえ、舞台は学校ではなく、塾であるところなど上手い。
     だれもが、欠けた部分を持っており、そこを満たそうともがいているところが、読む者を引き付ける。単行本で467ページもあるが、一気読みしてしまう面白さであった。

  • 子どもの力を引き出すことに優れた夫と、国が教育を主導しようということに徹底して反発する妻が作った塾。
    三世代が教育という太い絆で紡ぐ、家族の物語。
    これがめっぽう面白かった。

    補習のための塾なのか、進学のための塾なのか。
    昔ながらの寺子屋方式がいいのか、モニターからカリスマ講師が指導する最新式がいいのか。
    一口に塾と言っても、目的も形式も違う。

    うちは、長男に頼んで中三の冬期講習に通ってもらったことと、娘が中三の時一年間通いたいと言って進学塾に通ったくらいで、ほとんど塾とは無縁だったので(そういえば私も塾に通ったことはないなあ)、それぞれの塾にかける思いや、システムなど、興味深く読んだ。

    吾郎と千明、3人の娘と、千明の母、そして孫の一郎。
    ちょっとずつ極端な性格付けをされた彼らは、時代の落とし子だ。
    高度経済成長、バブル好景気、そのあとの長引く不景気、ゆとり世代。

    どの時代も、教育に対する不満があった。
    だから教育に対する情熱があり、夢があるのかもしれない。

    ”教育は、子どもをコントロールするためにあるんじゃない。
    不条理に抗う力、たやすくコントロールされないための力を授けるためにあるんだー。”
    ちょっと日本語的にどうでしょうな文章だけど。

    一族の業のように絡まりあう彼らの教育観に、巻き込まれ流されるように一気に読んだ。

  • んーっ。本屋大賞2位ですか?
    個人的にはそれほど引き込まれることなく、読み進めた感じ。普通面白いと、ページをめくる速度がどんどん上がっていくんだけど、これはなかったなぁ。親子3代、スケールは大きいんだけど、テンポも自分には合わなかったかな。

  • 最初はキツイなーと、なかなか読み進められなかったが、読んでいくうちにどんどん引き込まれ、最後は涙まででてきたので、カフェに居られず車で読んだほどでした。
    塾の在り方は自分や子供に関わる時代のことしか分からず、しかも自分も息子たちもほとんど塾には関わらなかったので、知らないことが多く、遍歴が丁寧に描かれていたので、なるほどと色々思い出すこともありました。
    また、時代の流れが施設も人も実名で出てくるので、自分が生きてきた歴史も感じることができました。
    ドラマ化されるようで、それも楽しみです。

  • 戦後の日本の学校教育の変遷と塾。
    複雑だけれどどうなんだろう。
    教育は豊かな社会のためだった。
    教育が個人のものになった時から大きく変わったように思う。
    が、もう、教育ママでもないし、
    揺るぎない教育への思いもないので
    語れませんな。

    学校と教育と塾と、難しい問題がたくさん。
    私は塾にも予備校にも行ったことがないので
    比較ができない。
    確かに、中学生の頃には塾に行ってないのは
    クラスに一人、二人と少数派だった。
    後半はもう、意地で行かない!みたいになっていた。
    なんの意地なんだ。

    ひとつ言えることは、
    塾も予備校も高い!!!ものすごく高い。
    中学生から高校生になると
    すごーく高くなって、高校生に至っては
    学年上がるごとに天井知らずで値が上がっていく。
    高すぎる!と私は思います。

    そして、小説ですが、
    貧困家庭の子どものための
    無料塾を始める孫の一郎の登場で
    ようやく私はこの話に心が許せた。
    私が劣等生だからでしょうか。

    しかし、この物語の本筋は家族というものだと思う。
    離れても近くても、許すも許さないもない、
    血が繋がっていてもいなくても家族とは摩訶不思議。
    夫婦も子どももみんな。

    家族の話だと思った。朝ドラみたいだね。

  • みかづきのタイトルが持つ意味を語る千明に唸った。

  • 森絵都さんは流れるように文を書く。
    他の人にとってどうかは分からないけど、私にはとても合っていて 読むのが止まらなくなる。

    人間ドラマのようでありながら、教育 そして’塾’の悩みの多い変遷も追えて面白い。

    ちょいちょい時間が飛んだり 語り手が変わるから、たまに混乱するけど。

    “どんな子であれ、親がすべきは一つよ。人生は生きる価値があるってことを、自分の人生をもって教えるだけ。”

    “教育は、子どもをコントロールするためにあるんじゃない。不条理に抗う力、たやすくコントロールされないための力を授けるためにあるんだ。”

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著者プロフィール

森 絵都(もり えと)
1968年、東京都生まれの小説家、翻訳家。早稲田大学第二文学部文学言語系専修卒業。
1990年、『リズム』で第31回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞を受賞し、同作は2008年に映画化もされた。2006年、短編集『風に舞いあがるビニールシート』で、第135回直木賞を受賞。
その後も活躍を続けており、2017年『みかづき』で第12回中央公論文芸賞を受賞、2017年本屋大賞2位。同作は2019年にNHKでドラマ化された。それ以外にも、多数の文学賞を受賞している。

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