綴られる愛人

  • 集英社 (2016年10月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784087710120

作品紹介・あらすじ

作家であり人の妻でもある女。地方に住む男子大学生。二人は立場を偽り、秘密の文通を始める。熱を帯びる手紙は、彼らを危険すぎる関係へいざない……。著者新境地、衝撃の長編恋愛サスペンス。

みんなの感想まとめ

手紙を通じて織りなされる二人の関係は、愛と狂気の微妙なバランスを描き出しています。地方に住む男子大学生と作家である女性の秘密の文通は、年齢や立場の違いから生まれる執着や探り合いを通じて、彼らの内面に潜...

感想・レビュー・書評

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  • 読後感がいいとは言えないけれど 井上荒野さんならアリだ!と納得。不穏な感じが漂うのは 手紙の持つ独自性みたいなやつかなぁ と。誰でもない誰かになれちゃうよなー、手書き文字が持つ なんとも言えない パワーというか ダークな部分というか 傲慢さというか。作中の男性陣が いかにも的で そこが井上荒野さんだ!でいいのか!いい。

  • あちらにいる鬼で作者に興味を持ち手に取った作品。2人の手紙の内容が次第に狂気を帯びていく様子が本当にグラデーションで、すごいなと思った。結末も突飛すぎず収まりも良かった。私はどうしてもクモオが好きになれなかった。何だか読んでいて恥ずかしくなるので、バッドエンドを望んでしまって、そんな自分の残酷な部分にヒヤッとした。

  • ふむ

  • 面白かった。まず最初に。
    井上さんの小説って読んでて楽しいけれど、ぐいぐい引き込むタイプではなかった気がしたのですが、これは凄かったです。

    手紙を交わし合っていただけの二人(年齢や環境の違い過ぎる二人、秘密はお互いの腹の探り合いや執着に拍車をかけていくことに)だったはずが、自身の作品を書かせてもらえない児童作家は支配者たる夫を愛しているのか、これは愛なのか、愛はそもあったのかを、送られてくる手紙の男を通じて思考する。
    男はまた、ミステリアスで儚げな彼女の手紙に自分自身の何ももっていないことを塞ぐ役割を与えだし、それは愛のような飢餓感を生み出していく。
    そして共通認識としてお互いを自由にするものとしてやり玉にあがる夫の真意。
    そこに落とし込むまでの彼女の包み込むような、蝕むような愛が読んでいて気持ちが良かった、私は性格が悪いのだと思った。

  •  ずっと前にこの本気になるなって思った記憶があった。

     柚と夫のこじれた関係がちょっとなに言ってるかわからない状態だった。愛?契約?結局、柚はどっちなのか。死んで欲しいと感じているときと、そうでもなさそうなときとの感情の起伏が大きすぎて、どれが本心なのか最後までわからなかった。あ、むしろ作者はそういうことを書きたかったのかな?人間の感情って難しいのよ、移ろいゆくものなのよ、的な。だとしたら、確かに大学生くらいだと真に受けちゃうよね。さらに恋とかしちゃってたらもうね。自分に向けて発された言葉は全部その人の紛れもない本心で、その人そのもので、それが明日にはひっくり返ってる可能性なんか微塵も考えないで全部受け止めようとしちゃうクモオの未熟さとか若さは、身に覚えがある。
     全体を通じて抱いた微かな違和感の正体は、クモオにあんまり同情というか感情移入できなかったこと。なんだかよくわからないけどとにかくムカムカしてイライラして、だから凛子さんの手紙に溺れていつのまにかわけがわからなくなって思わず事件を起こしちゃったわけだけど、そこまでいく過程にもっと鬱屈エピソードがあったらよかったな。彼女とうまくいかない、友達がいない、くらいで会ったこともない相手にそんなにのめり込むかな。もっと底の底まで落ちないと文通相手の夫をわざわざ殺しには行かないんじゃないかな。なんて思ったのでした。

  • 読んだことを忘れてしまっていて、再読。手紙だけで殺人教唆をしてしまう女性作家の技。就職活動もしないでいる大学生がどんどん罠にはまる様がサスペンス。落ち着いて考えてみれば、そんな馬鹿なと思えることが起きてしまう。ネットだともっと多いんだろうね。荒野さん、こわいわ~。

  • 「言うべきことではなくて、言えることしかひとは言わない。」
    「いったいこの中に誰が、本当に本当のことを喋っているというのだろう」

  • 手紙だけでやり取りされる狂気
    すぐに連絡がとれて顔を見て通話することもできて、な現代だからこそ、妄想だけで膨らんでいく思いは加速するんだろうな

  • この時代にLINEでもメールでもなく、文通。
    手書き、選ばれた便箋、かすかな香り(多分)などから相手の存在を生々しく感じる。
    だから余計に引き込まれてしまうのかも……。
    でも、こんなお願いされたら文通やめるな。「あ、利用される」ってわかったら冷めてしまいそう。

  • 面白かった、し、そう来るか、って思った。けど、私は手紙が中心になる本には日本語遊びみたいなものを求めてしまう、なにその言い回し聞いたことない!みたいなの求めちゃう、だから、面白いけど星3くらい

  • 井上荒野ワールド全開
    「誰よりも美しい妻」「だりや荘」などにも共通する狂気の世界。一気に読み進んだ。
    大学生と作家である主婦の手紙の書き方をうまく書き分けているのはさすが。
    いるいるこんな大学生と何度も思わせられる。たかが文通が恐ろしいまでにされど文通であることを思い知らされる展開。

    二人が会ったときの航大の凛子に対する感情の表現が秀逸。もはやあれほど恋い焦がれた凛子にも、正体である絵本作家である唯にも見えず、ただの女にしか見えないと。なるほどそう来たかと思いつつ妙に納得。

    旦那さんの復讐が展開されることを予測させる終わり方かと思いきや、むしろその逆に…

    なるほどねぇ、荒野さん、まだまだ読み続けますよ〜〜。

  • 「切羽へ」タイプの作品、面白い〜。描写が良い〜。

  • 個人情報を明かさずに文通ができる「綴り人の会」。

    手紙は、書いてから相手に届き返事がくるまでに時間がかかる。その間、相手に対し様々に思いをめぐらせる。
    本当の日常と、手紙の中に創り上げた自分。でもそこには、日常に埋もれた自分の一片が現れてくる。
    面白かった。

    本当の中の偽り、偽りの中の本当。
    真実というのはある意味創造物なんだなと思う。事実がどうであれ、自分がそうだと思ったことがいつでも真実になる。

  • 登場人物に魅力がなく読みすすめづらかった。

  • 文通で繋がった凛子とクモオ。
    凛子は自分をじわじわと拘束する夫を殺してほしいと、クモオに願うようになる。

    不気味な雰囲気が漂うストーリー。
    柚と柚の夫の関係性がそれを象徴している感じ。

    やる気のないハッキリしないクモオが嫌。
    クモオというペンネームにも違和感と、気持ち悪さを感じました。
    手紙の中で、架空の自分を作り、凛子にハマっていくのは気味が悪かった。
    昔からある文通、メル友など、ここまでの事はなくても、こういう世界はいつの時代にもあり、その盛り上がり方は想像は出来る気がします。

    設定からはもっと綺麗でハッピーな話も出来るのでしょうが(ハリウッド映画 ユーガットメールは大好きです)、著者ならではの展開と納得。
    先が気になり一気読みでしたが、後味はイマイチ良くない話でした。

  • 読んでてなんだか桐野夏生さんの本の気がしちゃって、なんかもっと凄いことが起きる‼って期待しちゃった。井上さんだもんね(^^;緩やかな破壊って感じでした。

  • 恋愛要素も入れたサスペンスで、出だしから物語に吸い込まれ没頭してしまいます。
    現にこの本読みながら目的地では無い駅で降りてしまったり、読みふけってる所携帯のバイブ音で心臓跳ね上がったりと、常に耽ってしまった。

    作家の天谷柚は編集者である夫に束縛されている。肉体的暴力はないが精神的にじわりじわりと追い詰めていく感じが厭な夫だ。そんな柚は、趣味で小説を書いており事情があって外に出られない28歳の専業主婦・凛子と名乗り、見知らぬ人と文通ができる会『綴り人の会』で自称・金沢住まいの35歳のエリートサラリーマンのクモオに出会った。実際クモオは21歳の三流大学三回生で就活もろくにせず彼女ともうまくいっていない魚津住まいの航大。
    はじめは普通の文通であった(や、はじめから何かまとってはいたか)が次第にそれは恋文となり、やがて殺人計画となる。狂気そのもの。
    クモオの気持ちはわかりやすい。背伸びしてエリートサラリーマンを名乗り妄想の自分を偽りながらも、まだ見ぬ凛子に素直に思いを馳せ、凛子に会いたくて会いたくて、就活はやる気はでないし恋人や同級生には嗤われるしで凛子しかいない世界になってしまった。そんなクモオの気持ちはまっすぐ過ぎて純、言い方は悪いがバカすぎて痛々しい。
    凛子の気持ちもわかる。それは私が女だからだろう。世間から見れば幸せで成功していて身なりも悪くないし、旦那との仲も良く何もかも手に入れている女。それを旦那に酷い暴力を振るわれている私を助けてほしいと偽る凛子の気持ちわかってしまう私もメンヘラなのかも笑。
    そう、メンヘラすぎるのだこの話は。どっちもどっち。
    凛子の変わらない日常、契約的な不安定な関係、歪んだ愛情なラストと、クモオに少しだけ明るい未来が待っていそうなラストだったのがまたよかった。
    井上荒野さんの作品の中でお気に入りの一冊になりました。

  • いまどき、匿名の相手とメッセージをやりとりするというのはよくあるシチュエーションだが、それをわざわざ「手紙」という前時代のメディアで試みたところは着眼点としては面白い。しかし、その手紙の持つ特性(書くまでの時間、届くまでの時間など)を必ずしも活かせているかというとそうではなく(ただし、「物理的な存在」としての特性は活かされていて面白い描写が多い)、これなら e-mail でやった方が良かったんじゃないのという感じ。というか、著者が e-mail 文化を抜け出せていないせいで、個々の手紙の内容が拙く、全体として興醒めになっている。いくつかあるサスペンス・シーンは、流石のストーリー・テラーぶりが発揮されていて、楽しめる。

  • 途中から、結末はどうなるか気になり読み進めたけれど、登場人物がどうも幼稚というかなんというか。意外性もなく、特に惹かれるものもなくがっかり。次の作品に期待。

  • 読んでる間は面白かったが、特に心に残ったり、読んで良かった!と思うほどではなく。

    文通していていかにも擬似恋愛に陥りやすいのは想像できる。特にこのクモオのような人。だんだん現実との見境がつかなくなっていく描写は良かった。空手の辺りの、完全にクモオが現実と理想を混同している所は薄気味悪くて印象的。ずっと薄気味悪いトーンが続いているような本。

    それにしても、凛子は良く分かりませんでした。題材自体は面白いんだけど、凛子にもクモオにも共感したり感情移入したりできなかった所が、自分としては評価高くなかった原因か。

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著者プロフィール

1961年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。1989年「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞、2004年『潤一』で島清恋愛文学賞、2008年『切羽へ』で直木賞、2011年『そこへ行くな』で中央公論文芸賞、2016年『赤へ』で柴田錬三郎賞、2018年『その話は今日はやめておきましょう』で織田作之助賞を受賞。他の作品に『もう切るわ』『ひどい感じ 父・井上光晴』『夜を着る』『リストランテ アモーレ』『あちらにいる鬼』『あたしたち、海へ』『そこにはいない男たちについて』『百合中毒』『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』『小説家の一日』『僕の女を探しているんだ』『照子と瑠衣』『猛獣ども』『しずかなパレード』などがある。

「2025年 『私たちが轢かなかった鹿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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