木もれ日を縫う

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087710151

作品紹介・あらすじ

行方不明だった母親が帰ってきた。けれど、久しぶりに対面する彼女は、どこかが以前と違っていて……。『思い出のとき修理します』の著者が描く、三姉妹と母との絆をめぐる切なく温かいミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 一年半前に地方の田舎で行方不明になった「母」が突然東京で暮らす三姉妹の前に現れた。どこか違和感のあるその「母」の出現をきっかけにそれぞれ悩みを抱えている姉妹の人生が動き出すストーリー。また姉妹の知らない母の過去や生き方がもうひとつの物語として読者に語られて、それも更なる衝撃でした。「山姥」という言葉を都会で暮らす姉妹に何度となく語る「母」。山姥は「山」に対する土着的な信仰と、太古から女性の生き方からきた女の母性と鬼性を象徴とした民俗的な言い伝え、妖怪、神、などと、人知を超えたものというような捉え方が目から鱗でした。文子と里美の友情が胸を締め付けられます。それにしても、複雑な家族関係だったとしても姑も夫もいない今、文子と娘達は会えなくなる前に関係を修復する術は本当になかったのかと娘をもつ私としては文子の言い分を理解しつつも納得できずモヤモヤしてます。ラストの広げられたパッチワークの敷物のシーン、花見のシーンに心を掴まれました。250ページほどのわりと短い小説でしたが心に残るお話でした。面白かったです。

  • 布や糸の名前を持つ三姉妹と、山姥になってしまった(と言う)母親の物語。

    キーワードは、「山姥」と「パッチワーク」

    家が嫌で故郷を出た、小峰家の三姉妹、絹代・麻弥・紬。
    しかし、同じ東京に暮らしながらほとんど交流を持っていなかった。
    一年半前、母が実家から行方不明になったと聞かされた時でさえ。
    その母が、突然、紬の前に現れた。
    母って、こんな人だった?違和感。

    母・小峰文子と、中里照美。
    少女時代に罪を共有する事により特別な繋がりが芽生えた。

    山姥になっていく自分の存在が、故郷を出て新しい生活をしている娘たちの邪魔にならないよう、山に入る。
    それは「セルフ姥捨(うばすて)」のようで哀しい。

    そして、娘たちには、自分のような山姥になってほしくない、それが母の最後の願い。
    なぜ、パッチワークがお守りになるのだろう?
    ひと針ひと針ぬう、という行為は「祈り」に通じるからだろうか。

    「大きな幸せはなかなか手に入らへんけど、小さな幸せをいっぱい集めたらええやん?」

    小さな幸せをいっぱい集めた、文子さんのパッチワークが出来上がった。

  • 失踪した母が突然訪ねてきた?その母の雰囲気は、なんだか前と違うような感じがして戸惑う三女の紬。三姉妹それぞれに実家と距離を置きたく、実家をでてそれぞれの暮らしをしていた。果たして彼女は母なのか。山姥にまつわるファンタジーなのかと思ったが、実は!
    柳川さんがいいアクセントだった。
    少し前に見た相棒でも山の中をさまよっていて、ちょっと重なった。

  • 1年以上も前に姿を消した母。
    生家を嫌い、母の生き方を嫌い、東京で暮らす、紬、姉の麻弥と絹代。
    母を記憶の外へと押しやっていた3人の前に、「山姥」になったと言う母が突然現れ…

    山姥って…?と、思いつつ読みすすめました。
    その謎が明らかになるとともに、暖かい気持ちに。

  • ある日、紬の元に「母」が来た。
    「母」は山姥になったのだと言う。
    そんな馬鹿な話があるか、そう思っていたが、「母」は紬の心を読んだ。
    それによって、紬は次第に母は本当に山姥になったのかもしれない、と思うようになる。
    そして「母」は、最先端でなければ、田舎臭さをなくさねば、そう意気込む紬の心も変えていく。

    麻弥はショートカットの似合う男勝りな女性。
    妹の紬に頼まれて、「母」に会う。
    そして彼女も同じように、いないものと考えて来た「自分」を取り戻す。

    最後は長姉絹代。
    彼女はセレブな奥様、のはずだった。
    彼女は人知れず夫との関係に悩んでいたが、やはり山姥の「母」に問題の根源に気付かされる。

    三姉妹はそれぞれ、自分の心を解き放ったが、さて、この「母」は本当にあの、母なのだろうか?

    母が大事にしていた古い布。
    それは母の愛のかたまりだった。
    小さい娘たちを思って、思い出を繋ぎ合わせて、残されたものたちが助け合えるように。
    自分を偽ることなく、のびのびと生きていけるように。

    人の過去は決して美しい布だけでできているわけではない。
    破れたもの、汚れたもの、失敗したもの……。
    しかしそれすらも愛と言う名の糸で縫い合わせられたならば。
    そこには、その人にしか作れない、生きた証が縫い上がるに違いない。

  • 装丁がかわいくて手にとった。
    生まれ育った田舎も家族も母も嫌いでそれぞれ上京した3姉妹。姉妹同士連絡を取り合ったりもしない。
    そんな中、一年半前に行方不明になった母が訪ねてくる。
    自分は山姥になったんだと言って、、
    お守りとして、パッチワークを渡したいと、、

    しかも、この母親、姿も過去の記憶も母親なんだけど、本当に母親なのか何かが引っかかる。

    わだかまりのある3姉妹が母親かどうかわからない母親と関わりながら、姉妹の絆を取り戻す。
    キーとしてパッチワークが物語を縫っていく。

  • 昔、読んだなぁと思いながらの再読。
    実家が嫌で都会に憧れて上京した3姉妹と母の話。
    3人も娘がいて誰も母に寄り添えなかったんだなぁと思うと母が不憫。

  • 田舎も母親も嫌いで実家を出てからは極力かかわらないようにしていた主人公(三姉妹の三女)の元に1年半前に行方不明になったはずの母親が突然訪ねてくる。
    しかも「山姥になった」と言って。
    確実に母しか知らないような話をする母の顔をしたその女(自称山姥)は、けれどどうも母とは違う気がする。
    それも山姥になってしまったからなのか・・・?

    三姉妹に渡したいものがあって山を下りてきた。
    という母は昔からの趣味で作っていた貧乏くさいキルトを渡してくる。

    母を自分の家まで連れてきた古本屋の店主(なんと山姥に詳しい)に山姥の生態を聞いたり、疎遠な姉と連絡を取ったりというお話。

    三女それぞれの想いの描写もあり。
    読み始めた時から色々布石が散りばめられていて
    「これは最後に盛大に回収にかかるタイプの小説だな」
    と思いつつ明らかになっていく事実になるほどなるほどと思いながら読み進めます。

    最初に感じた通り謎解きは進みますが、読み始める時間は選んだ方が良いかも。
    私は夜読み始めたため寝不足になるのを覚悟で一気に読んで、翌日眠かったです(笑)

    予定外に一気に読もうと勢いづく作品に出会えたのは楽しかったです。

  • <母>と<娘>というつながりのカタチ。ふわいえメンバーと、いつか感想会してみたいです。

  • どんな縁もその瞬間よりずっとずっと後になってからその大切さに気付くんだろうな。今置かれている自分の環境を、何十年後に自分がどう感じて何を思うのかなあ。記憶も感情も人との出会いも、それぞれをつなぐ縫い方は自分次第。怖いけど楽しみ。

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著者プロフィール

三重県出身。『パラダイスルネッサンス楽園再生』で一九九七年度ロマン大賞佳作に入選しデビュー。「伯爵と妖精」シリーズ、ベストセラーとなった「思い出のとき修理します」シリーズ、「異人館画廊」シリーズ、『がらくた屋と月の夜話』『まよなかの青空』『あかずの扉の鍵貸します』『ふれあいサンドイッチ』など著書多数。

「2023年 『神さまのいうとおり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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