草花たちの静かな誓い

著者 :
  • 集英社
3.72
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本棚登録 : 317
レビュー : 51
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087710205

作品紹介・あらすじ

ロス在住の叔母の訃報。甥の弦矢が駆けつけると、27年前に死んだという叔母の娘が、実は当時からずっと行方不明なのだと知らされる。生き別れた母子の運命を追い、人間の「幸福」を問う傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 「花にも草にも木にも心がある。
    嘘だと思うなら本気で話しかけてごらん。」

    主人公・弦矢。
    LA在住の叔母・キクエが日本への旅行中に突然亡くなってしまう。
    彼女の遺産を相続することになった弦矢は、
    27年前から行方がわからないキクエの娘の消息を調べ始める───
    著者には珍しいミステリー調の作品でした。

    ランチョ・パロス・ベルデス。
    舌を噛みそうな、この超高級住宅街。
    そこの大邸宅、美しい庭園、
    美味しそうなスープ、いかにもアメリカっぽい探偵のニコ、
    心やさしい登場人物たち。
    物柔らかな空気がとても心地良い。
    ただ、事件の真相がどうにもやるせなくて…

    静かに咲く花々。
    娘の齢と同じ数のガーベラの鉢。
    娘の幸せを願い慈しむように育てたのでしょう。
    キクエの心の叫びが聞こえるようでした。

  • 主人公は求職中の男性。
    そんな彼のもとに、アメリカで暮らす叔母が亡くなり、その資産の受取人に彼がなっているという知らせが入る。
    叔母は莫大な資産を遺していたが、その資産を受け取るはずの人は実はもう一人いた。
    それは27年前に行方不明になった叔母の娘ーつまり、彼にとっては従妹。
    その行方不明の女性に遺産の70パーセントを残したいという意思が亡くなった伯父、叔母にあったと知った主人公は従妹の行方を追う事を決心する。
    その困難な仕事を依頼したのは、ひょんな事で知り合った探偵。
    優秀な彼は事件の真相にたどりつくが、それは思いがけないものでー。

    人の心の美しさや醜さを描いた話だと思った。
    まず、この話、主人公が故人の意思を無視し、遺産を独り占めしようとする人なら最初からなりたたない。
    彼が誠実な人であるという事が前提でなりたった話。
    だけど、そんな彼が有能で実直な仕事をする探偵の事を疑う。
    事件の真相を知った時、それをもとに彼が自分を脅迫し続けるのではないかと。
    そんな考えは自分の中に全くなかったので、「そういう考え方もあるんだ・・・」と思った。
    そんな人を信じ切れない心、邪な心、嫉妬心・・・そんな人の心も描かれている。
    それと対比して描かれている草花。
    静かに沈黙を守り、約束を果たしている。
    ただ、そこにあるだけ。
    風に揺れながら・・・。

    物語の最後の結びが静かな余韻を残してとても良かった。

  • 2017年6月西宮図書館

  • 少女を守るためにはここまでしなければいけなかったことに驚く。ジャンルとしてはミステリーなんだけど、それよりもスープの美味しそうなこととか、庭の草花の美しさの方が印象に残る。草花たちのひそやかなささやきに耳を澄ませるって素敵だな。

  • 叔母の莫大な遺産を相続することになった弦矢。その叔母には行方不明になった娘、レイラがいた。レイラの行方不明の謎解き自体は予想がつく範囲内で、驚く程の真相ではないが、そこに至る母親の心情を慮ると切ない。ただ、弦矢の境遇は、大金持ちの叔母など持たない庶民には羨ましすぎて、素敵な庭付き豪邸の描写にうっとりとした印象の方が強いです。宮本作品にはよく美味しそうな料理が出てきますが、今回は読後スープが飲みたくなりました。それにしても、宮本先生は主人公に起業させるのが好きだなあ……かなりの確率ではないでしょうか。

  • 宮本輝さんらしい小説
    とてつもない遺産を残されても
    人として、死んだ叔母の気持ちに寄り添い
    正しいことをするために努力する
    信じて良い人は必ずいて
    でも、人には裏の顔も理解できない習性もある
    人間を描いた物語なのかな

  • 突然亡くなった叔母の家、財産処理のため渡米。舞台が日本でないところからくる雰囲気が爽やかに感じさせるのか、せかせかした感じがない。整理していく中で知り合う人もなかなか印象的。
    出会った人たちのおかげで謎も解けた。
    会うべき人にはちゃんと会えるのだよ。関わったために嫌な気分になったとしても、それも会う必要のあった人なのかもしれない。
    そう考えておくと腹の立つことも少なくなりそう。

  • ミステリー調だからと言うわけでもなく、何となくいつもの宮本輝っぽくない気がした。

  • 72久しぶりの輝さん。生命の力強さについての描写がちょっと曖昧になったかな。みんな幸せだといいな

  • ※かなりネタバレの内容を書いています。

    宮本輝さんのいつもの作風とは違った、どこかミステリーっぽい作品でした。
    謎解きの様に物語が進んでいくのでとても読みやすかったけど、私はスッキリしない気持ちで読み終えました。
    どこまでいっても、どう考えても、レイラは完全に被害者でしかない。どうしても、イアンのした事はゾットするほど許せないし、「誘拐」という形でしか解決に導けなかった事も、誰にとっても不幸でしかないと思う。誰も幸せになれないなんて、何て悲しい結末なんだろう。キクエは、なぜ弦矢に伝えようとしたのだろう。このまま、そっとしておくのが最後の善行だったのではないか。イアンの最期に寄り添った時、キクエは女だったのだろうか、それとも母だったのだろうか。
    そんな事をグルグルと考えながら、レイラが「親」に絶望せずに幸せに生きていってほしいとどうしても願わずにはいられませんでした。

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著者プロフィール

宮本 輝(みやもと てる)
1947年、兵庫県神戸市生まれ。1977年『泥の河』で、第13回太宰治賞を受賞してデビュー。1978年『螢川』で第78回芥川賞を受賞。『優駿』で吉川英治文学賞、1987年初代JRA賞馬事文化賞、2009年『骸骨ビルの庭』で第12回司馬遼太郎賞を受賞。2010年、紫綬褒章受章。
主な代表作として、2018年に完結した自伝的小説『流転の海』シリーズ作のほか、『蛍川』、『優駿』、『彗星物語』がある。

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