やめるときも、すこやかなるときも

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 898
レビュー : 123
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087710526

作品紹介・あらすじ

大切な人の死を忘れられない男と、恋の仕方を知らない女。欠けた心を抱えたふたりが少しずつお互いを知り、日常の中で歩み寄っていく道のりを描く。他者と生きることの温かみに触れる長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • そうだ、忘れていた。
    窪美澄はこういう話書く人だった。
    琴線に触れて気付く。自分はこんな風に感じられるんだ…と。
    弱くて情けなくてみっともない。窪さんは人の小さな心の揺らぎを見逃さない。身近にいる人であるかのような、いや、むしろ自分の中の一部でもあるような。読んでいる間、どこか落ち着かない感じが止まらず、ずっとソワソワモゾモゾしていた。

    家具職人の壱晴。高校時代のある出来事を機に、毎年12月の決まった時期に声が出なくなる。女遊びはしても、彼女は作らない。
    小さな制作会社で働く桜子。会社が倒産してから、父親は酒に溺れて暴力を振るうようになった。家を出たいと思いながら叶わず、実家を支えるために働き詰めで、恋愛経験には乏しい。
    二人は友達の結婚式で出会う。桜子はお酒を飲み過ぎ、気がつけば壱晴のベッドで一緒に寝ていた。出会いは最悪だったのに、二人は仕事で再会する。

    普段は隠している心の傷。まだ傷口は塞がっていなくて時折痛み、血が流れる。でもそんな傷があることを誰にも言わず、何もないかのように振る舞っている。
    桜子は壱晴の心の傷に気付き、触れようとして手を引っ込め、やっぱり自分には手に負えないと目を逸らし、そして歩み寄り、傷口に柔らかく手を当てる。
    触れると壊れてしまいそうな二人の不器用な恋の行方。二人を心配する人たちに紛れて、私もハラハラしながら見守っていた。

    万人受けする話ではないだろうし、誰彼構わず薦められる本ではない。でもとても、しみじみとよかった。

  • 年に一度、声が出なくなってしまう家具職人・壱晴。
    その理由とは…───

    高校時代に亡くした大切な人を忘れられない壱晴。
    家族のために働き続けて、恋愛らしい恋愛の経験がない桜子。
    恋愛に奥手だった上に、好きになった彼の心の中には今も生き続ける女性がいる。
    この難しい恋愛に、くじけてしまいそうになる桜子を応援しながら読みました。

    純粋で、不器用な二人が少しずつ距離を縮めていく様子が、なんかくすぐったいような…
    こんな感じ、久しぶりに味わいました。

    そして何といっても、壱晴の師匠・哲の懐の深さと、後輩に席を譲る柳葉の潔さ、
    この師弟関係が感動的でした。
    特に、哲先生が壱晴の作品を褒めるシーンは涙がこぼれて…。

    また、あの日、ギャラリーを訪れた予備校生は真織の幻だったのでは…
    と思えたり。(想像しすぎかな?)

    木工品が好きで、ひとめぼれしてしまうことがよくあるので、(なかなか手が出ませんが)
    家具工房が舞台というのも嬉しかったです。
    彼らの作った椅子に座ってみたくなります。

    美味しそうな卵サンドも食べたくなりました♪

    タイトルと表紙の美しい桜とともに、
    なんとも美しい余韻が心に残った一冊でした。

    • koshoujiさん
      うさこさん、お久しぶりです。コメントありがとうございます。いつ返事が来るかなあ、と待っておりました。うれしいです。
      体調が優れないのですか...
      うさこさん、お久しぶりです。コメントありがとうございます。いつ返事が来るかなあ、と待っておりました。うれしいです。
      体調が優れないのですか。心配しております。
      先ほど、2019年の年が明けました。今年はラグビーワールドカップの年で、9,10月は毎週のように日本各地にラグビーを見に行くことになりそうです。
      また、明日1月2日は私たちの母校が久しぶりに準決勝で宿敵明治と戦いますのでお見逃しなく。NHKで放送があります。

      さて、昨年末12月30日に、昨年の出来事の中で最も嬉しいことがありました。前にお話ししたかもしれない、高校時代にランちゃんにラジオで名前を呼ばれたときのエピソード。

      昨年はキャンディーズ結成45周年という事で、午後10時から東京のFMラジオでキャンディーズ特番があり、43年前のそのエピソードが大きく紹介されたのです。(^O^)/
      私とそのパーソナリティの方が知り合いになった縁も紹介されています。

      今さらながら、高校時代の甘酸っぱい思い出を聞くのも気恥ずかしいですが、是非お聴きいただければありがたく。録音してyoutubeにアップしたので下記URLからどうぞ。
      https://www.youtube.com/watch?v=tMTj52tT2xs

      そのエピソードについてお話してなかったとしたら、その元になっている、ランちゃんが「仙台のアイザワマサヒデクン」と私の名前を呼んだ実際の音源は下記URLから聞けます。5分過ぎに出てきます。<(_ _)>
      https://www.youtube.com/watch?v=VRekh12HkK0

      歌は、最近がんがんアップしています。チャンネル登録者が1000人にならないとyoutubeからお金が入って来ないので……。
      では、取り急ぎ今年もよろしくお願いします。ちなみに学校は楽しいです(笑)。
      2019/01/01
  • テレビをあまり見ないので
    ドラマ原作と知らずに手にとりました。

    タイトル
    「やめるもきも、すこやかなるときも」
    という言葉のせいもありますが、
    読んでいる間中、
    星野源さんの「Pair Dancer」という曲が
    頭のなかでずっとリピートしていました。

    「Pair Dancer」の歌詞に
    「晴れの日にも 病める時も」という
    フレーズが出てくるのと、
    メロディが小説のイメージに
    合っていたからです。

    主人公は家具職人の壱晴(いちはる)と、
    小さな制作会社勤務の桜子の2人です。

    はじめは章ごとに語り手が
    壱晴、桜子と交代していき、

    同じ場面を2人の目線から見ている感じで、小説「冷静と情熱のあいだ」を
    思い出しました。

    後半は1つの章の中で、
    語り手が交互に交代します。

    けれど不思議と
    読んでいても混乱することがなく、
    むしろさらに物語のなかに
    入りこんでしまい、

    ずっと心うずきながらも、
    一気に読み終えてしまいました。

    恋愛下手で自分自身にコンプレックスをもつ
    桜子ですが、
    壱晴の話しぶりや動作から
    彼のおもっていることを推察する力が
    飛びぬけていて、驚きます。

    壱晴に恋しているせい?とも思いますが、
    それにしても推察が当たりすぎかな…と
    思いました。

    ですが343~344ページのくだりは
    もう涙腺崩壊でした。

    読み終えたあとも
    またこのページに戻ってきて読み返して、
    また涙を流していたくらいです。

    恋愛はきっと
    “すこやかなるとき”から始まることが
    多いでょう。

    しかし
    やめるときがない人間なんて
    この世にはいません。

    そして、
    2人が一緒にいられるかどうかは
    “すこやかなるとき”よりも
    “やめるとき”が来てはじめてわかるのだ、
    ということを、
    この物語は教えてくれます。

  • 良かった。読み終わった瞬間、良かったと素直に思えた。

    三十二年も生きていれば、人は皆それぞれの事情を抱えているし、脛に剥がせない瘡蓋の一つや二つ持っていたり、劣等感を抱えて自分を卑下したり、と色々あるはずだ。
    この人と一緒にいたら、抱えている暗い出来事に対して正面から向き合える。
    そんな特別な相手が側にいることこそが大事なことだと思う。

    物語の中で彼女はよく彼を「背負う」と言っていたけれど、そういう一方的なことではなく、共に寄り添い二人で手を繋いで歩んで行ってほしい。
    やめるときも、すこやかなるときも、その命ある限り、ね。

  • 恋愛小説を読んでも最近では感動することもなくなってる自分が、こんなにのめり込んで読んで共感して涙を流した本は珍しい。最高の作品。

  • 窪美澄さんの長編は読み応えがあって良いですね。少し重いくらいが窪美澄さんってカンジ。

    過去に大切な人を亡くした壱晴と
    まともに恋愛をしたことのない桜子の物語。

    壱晴の過去に迫って行くまでがいちばん引き込まれました。
    ただ、壱晴の桜子への想いの変化が少し唐突で、説得力に欠ける気がして、そこだけ少し残念でした。

    やめるときも、すこやかなる時も人生を共にするというのは、大変だけど素晴らしいことですね。

  • 4.0 初めての作者さんでしたが良かった。二人の微妙な距離感や心の揺れが丁寧に書かれています。高校時代の話しは涙無しでは読めなかった。

  • これまで生と性がテーマになることが多かった窪さんの作品とは違った色合いですが、私はこの路線かなり好きです。過去のうまくいかなかった恋愛を引きずっている家具職人の壱晴と、32歳で未だ処女の恋愛下手な桜子の2人が近付いていく描写は初々しくて、もどかしさもあり、遠い昔に忘れてしまった感情を思い出させてくれました。いつもの閉塞感もあまり感じず、人を好きになること、生きることの意味を伝える言葉が胸に沁みました。

  • 3日かけて読了、しみじみした気持ちで読了しました。窪美澄 著「やめるときも、すこやかなるときも」、2017.3発行。知り合いの結婚式の二次会で出会い、悪酔いしセックスなしで泥酔した二人、その後すぐに仕事で出会った二人。過去にトラウマのある32歳の家具職人、須藤壱晴と家庭に問題のある32歳で処女、文進堂で営業をしている本橋桜子、この二人の物語。几帳面な壱晴とまっすぐな桜子の純愛物語。久しぶりに読み応えのある純愛小説を読みました。読後感が爽やかです。窪美澄さん、大好きな作家になりましたw。

  • ありきたり、と言われればありきたりなストーリーなのかもしれないけれど
    やっぱり窪美澄さんはすごいなあ。
    心理描写がえぐい。上手い。
    話の進め方がめちゃくちゃ上手い。
    壱晴の抱えているものが何かが気になりすぎて
    ページめくりが止まらない、止まらない。
    ついでに涙も止まらない(笑)

    恋愛がうまくいかなくて、
    自分の生き方、考え方に悩んで
    その背景に、家族の問題が少し絡んでいるなと考えている今の自分に、めちゃくちゃクリーンヒットした作品でした。

    やめるときも、すこやかなるときも
    人を一つの断面からしか見ず
    ダメと思ったらばっさり関係を切って
    価値観違ったらないなと決め付けて。
    自分が傷つかないが最優先だったけれど
    やめるときも、すこやかなるときも
    心の生身を見せ合える人が現れたらいいなと
    そういう人を、ちゃんと探そうと思えました。

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著者プロフィール

窪美澄(くぼ・みすみ)
1965年東京都稲城市生まれ。カリタス女子高等学校卒業。短大中退後、広告制作会社勤務を経て、出産後フリーランスの編集ライターとして働く。2009年「ミクマリ」で第8回R-18文学賞大賞を受賞し小説家デビュー。2011年、受賞作収録の『ふがいない僕は空を見た』(新潮社)で第24回山本周五郎賞受賞、第8回本屋大賞第2位。同作はタナダユキ監督により映画化され、第37回トロント国際映画祭に出品。2012年、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞受賞。2018年『じっと手を見る』で直木賞初のノミネート。2019年『トリニティ』で第161回直木賞、二度目のノミネート。

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