あのころのパラオをさがして 日本統治下の南洋を生きた人々

  • 集英社 (2017年8月4日発売)
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  • 本 ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711172

作品紹介・あらすじ

日本統治時代のパラオや南洋を知るお年寄りを訪ねて、当時のエピソードを収集する歴史ルポルタージュ。植民地支配の歴史を、そこに暮らした日本人移民と現地島民の「日常」の視点から描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 2年前に「南洋と私」を読み、とても良かったので、今回この本を読むのはとても楽しみだった。

    "国境を越えて友情をはぐくまなければ、戦争の本当の愚かさなどわからないのかもしれない。味方が死んだ、家族が死んだ、あの国に攻撃された、そうした次元で戦争をとらえる限り、戦争は人によっては「必要悪」であり、あるいは二度と降りかかってほしくない天災のようなものにとどまってしまうのではないか。国籍や民族という違いを超えて人と人が信頼しあえたとき、初めて人は戦争について「私たちは何をしているのか」という、根本的な問いに辿り着けるのではないか。" 146ページ


    "他者との会話の中から、その感覚を共有していくこと、思考と感覚の両輪で事実を捉えていくこと。難しいけれど、私が戦争とそこに生きた人々を描くために論文ではなくノンフィクション・エッセイのような形を選んだのは、論文では表現しにくい感覚の部分を常に自分に引き寄せておきたいからかもしれない。" 160ページ


    なんかものすごく好きなのだ。この好きさは何なのか。
    対象との接し方、中島敦の絡ませ方、筆者の思い、文章そのもの…
    思考力も感覚もとても優れた人なのだと思うが、まるで一緒に取材して回ってるような気安さ、親近感が感じられて、共感しやすい。というかほぼ同意してしまう。
    よくぞこの2作を書いてくださったと感謝する。音楽活動の方は全然知らないが、お忙しいだろうけど、次の「ノンフィクション・エッセイ」楽しみだ。

  • 著者の芯にあるのは戦争の波に翻弄された個々の人々の人生を聞いて感じたい、残したいという意志。
    聞き取りが中心の「日本人が移民だったころ」よりはややエッセイ色が強く、また著者が大きく影響を受けた中島敦の足跡を辿るというサブテーマもあるので重くて暗いばかりにはならない。

  • 作者の人の感想。あまり自分には合わない。

  • 中島敦の「南洋通信」を読んで戦前戦中の南洋に興味を持ったという点は著者と私とで入り口が同じなのかもしれない。ただ、著者は、中島敦が帰国した後の戦時下のパラオについても現地を訪れ今も残る日本語話者に丹念に取材している。パラオではペリリュー島だけではなくアメリカ軍の侵攻で島民が避難しジャングルの中で飢えを経験したこと、爆撃などで島民も含めて犠牲者が出たこと、日本軍が島民虐殺を(本気度はともかく)計画したことなど、殆ど知らないかったことを知ることができた。それにもかかわらず、パラオの原住民と日本からの移民は農地を巡る争いがあまりなく比較的うまく共存できていたこと、日本統治前に発展した社会的制度がなかったために日本統治が公学校教育などを通じて受け入れられやすかったことが、現在まで続く親日的な心象や日本文化の残り香(現地にはパラオ語と日本語がまざった歌謡曲などもあるそうだ)がある。エッセイ風よりももう少しまとまった記述も読みたい気がしたが、それでも学ぶことの多い一冊だった

  • 第一次大戦から第二次大戦の間、日本が植民地支配していたパラオの状況を、中島敦らのテキストを手掛かりにしながら、現地での聞き取りの様子も交えて描き出していく。素朴な紀行文のような体裁を取っているのでとても読みやすいが、その一方で、様々な立場への目配りとそれを踏まえた下調べが周到に行われていることもうかがわせる文章になっている。現地のパラオ人、チャモロ人、内地からの移民、沖縄や朝鮮半島からやって来た人、軍人、役人、研究者、文人、労働者、慰安婦、それらの人々の様々な思いをできるだけそのまますくいあげようとする著者の姿勢に共感する。

  • 著者の主観入りルポルタージュ。
    主観が先に立ち、これによってルポルタージュを進めている感じを受ける。なので、どうしても著者の主張を読まされている感があった。

  • 東2法経図・開架 274A/Te58a//K 

  • 第二次世界大戦のパラオを今追いかける。誠実さがそのまましんどさになる。論文にもならずノンフィクションにもなにか中途半端なぎしぎしとした言葉と堂々巡り。ともかく読ませる力はある。

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著者プロフィール

音楽家。文筆家。1981年11月7日東京生まれ。大学時代に結成したバンドThousands Birdies' Legs でボーカル、作詞作曲を務める傍ら、弾き語りの活動を始める。2007年4月、ピアノ弾き語りによるメジャーデビューアルバム『御身』(ミディ)が各方面で話題になり、坂本龍一や大貫妙子らから賛辞が寄せられる。大林宣彦監督作品『転校生 さよならあなた』(2007年)、安藤桃子監督作品『0.5ミリ』(2014年/安藤サクラ主演)の主題歌を担当した他、CM、エッセイの分野でもなど活躍中。新聞、ウェブ、雑誌などで連載を多数持つ。2009 年よりビッグイシューサポートライブ「りんりんふぇす」を主催。坂口恭平バンドや、あだち麗三郎、伊賀航と組んだ3ピースバンド「冬にわかれて」でも活動中。2021年、「冬にわかれて」および自身の音楽レーベルとして「こほろぎ舎」を立ち上げる。

著書に『評伝 川島芳子』(2008年3月/文春新書)、『愛し、日々』(2014年2月/天然文庫)、『原発労働者』(2015年6月/講談社現代文庫)、『南洋と私』(2015年7月/リトルモア)、『あのころのパラオをさがして 日本統治下の南洋を生きた人々』(2017年8月/集英社)、『彗星の孤独』(2018年10月/スタンド・ブックス)、編著に『音楽のまわり』(2018年7月/音楽のまわり編集部)がある。

2006年3月 1st ミニアルバム『愛し、日々』(MS Entertainment)発表
2007年4月 2nd アルバム『御身onmi』(ミディ)発表
2007年6月 1st シングル『さよならの歌』(ミディ)発表
2008年5月 3rd アルバム『風はびゅうびゅう』(ミディ)発表
2009年4月 4th アルバム『愛の秘密』(ミディ)発表
2010年6月 5th アルバム『残照』、2nd シングル『「放送禁止歌」』(ミディ)発表
2012年6月 6th アルバム『青い夜のさよなら』(ミディ)発表
2015年3月 7th アルバム『楕円の夢』(P ヴァイン・レコード)発表
2016年8月 アルバム『私の好きなわらべうた』(P ヴァイン・レコード)発表
2017年6月 8th アルバム『たよりないもののために』(P ヴァイン・レコード)発表
2020年3月 9th アルバム『北へ向かう』(P ヴァイン・レコード)発表
2020年11月 アルバム『わたしの好きなわらべうた2』(P ヴァイン・レコード)発表

「2021年 『天使日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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